きょうのできごと a day on the planet
（2003年 日本）（上映時間１時間50分）
監督・脚本：行定勲
出演：田中麗奈、妻夫木聡、伊藤歩、柏原収史、三浦誠己、石野敦士、松尾敏
伸、池脇千鶴、山本太郎、椎名英姫、北村一輝、派谷恵美、佐藤仁美、大倉孝
二、津田寛治
＊テアトル新宿、渋谷シネ・アミューズほかにて全国公開
ホームページ http://www.kyodeki.jp/
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＜ストーリー＞
大学生の中沢（妻夫木聡）と恋人の真紀（田中麗奈）、同級生のけいと（伊藤
歩）の３人は、京都の大学院に進学する正道（柏原収史）の引越祝いに参加す
る。そこには、西山（三浦誠己）、坂本（石野敦士）、かわち（松尾敏伸）が
集まっていた。かわちは恋人ちよ（池脇千鶴）とのデートを切り上げて駆けつ
けていた。そんな中、テレビでは、浜にクジラが打ち上げられたニュースや、
ビルとビルの間に挟まり動けなくなってしまった男のニュースが流れていた…
…。
＜レビュー＞
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若者たちの何気ない日常を描写。伝わってくるものはあまりないけれど…
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大作からインディーズっぽいものまで、幅広く手がける行定勲監督の映画。
この人が特にうまいのは、若者たちの描写ですねぇ〜。別に奇をてらった演出
をするわけではないけれど、表面に表われない微妙な心理まで、うまいことフ
ィルムに映し取っていきます。
さて、そこでこの映画。これまた若者たちを描いた映画ですが、かなりユニー
クな映画です。なにしろほとんど大きな出来事は起こらないんですから。
大学生の中沢クンと、彼女の恋人真紀、そして幼なじみのけいとの３人が、大
学院に進学する正道の入学＆引越祝いに参加。
そこで、正道をはじめ西山、坂本、かわちたちと、楽しく飲んで語り合ったり、
ケンカしたりと、ごく普通の宴会を繰り広げる。
一方、テレビではクジラが浜に上がったニュースと、ビルとビルの間にはさま
った男のニュースが放送される。
一見、接点がなさそうで、微妙に関係するこの３つのエピソードが並行して描
かれます。
ただし、時間通りに描かれるわけではなく、たとえば、オープニングは中沢ク
ンたち３人が車に乗っているシーンですが、実はこれは、この後に出てくる入
学＆引っ越し祝いから帰るところ。というように、ときどき時間が錯綜するの
もこの映画の特徴。
とにかく何も起こりません。 (―＿―）
中心になるのは、若者たちの宴会シーンですが、ここでも大したことは起きま
せん。
途中で「デカい事故発生か！？」と思わせるシーンもあるのですが、それもま
た元通りの日常に戻っていく。
事件と言えないこともない"クジラ上陸"と"ビルはさまり男"のエピソードにし
ても、そんなに大それたことではないし、しかも、若者たちはそれをテレビを
通して見るので、ますます日常に埋没した出来事と化していく……。
こうやって何気ない日常をそのまま描いた映画はたまに見受けられますが、そ
の中には工夫がなくて退屈するものが多い気がします。でも、この映画はけっ
こう観客が楽しめるように工夫されています。
たとえば若者たちの宴会では、酔った真紀が床屋さんよろしく男たちの髪を切
ってヘンな髪型にしたり、けいとがカワイらしい男のコに色目を使ったり、彼
女が前の彼氏にフラれたのがゲームの「三国志」が原因だったと告白したり…
…と、クスクス笑えるユーモラスな場面が連続。関西弁も効果的だし、若者た
ちの生き生きとした言動が微笑ましくて、少しも飽きることがありませんでし
た。 (*^_^*)
残りの２つのエピソードも、テレビに乗せられてハシャグ人たちなどを描いて、
なかなかおもしろく見せています。
この映画で行定監督が言いたかったのは、「この地球の上では毎日いろんなこ
とが起きている。そして、日常の何気ない出来事の中にも、ケンカしたり、仲
直りしたりと、その人にとって意味のあることがたくさん詰まっている」とい
うことではないでしょうか。
そんなこと当たり前じゃ！ と言ってしまえばそれまでですが……。
また、テレビを通したニュースのあやふやさや、メディアに乗せられる人たち
の滑稽な姿なども提示しています。
ただし、個人的にはそんなに伝わってくるものはなかったですね。「何気ない
日常の中にこそある種の真実があるはず」という監督の考えはよくわかるんだ
けど。ボクの持つ感性とちょっとズレがあって、最初から最後まで違和感を感
じながら観ていました。 (~ヘ~)
これはボクの個人的な好みの問題なんだけど、いくら何気ない日常を描くにし
ても、せめて一ヶ所ぐらいは登場人物同士のぶつかり合いとか、ドラマに波風
が立つ場面があったほうが好きですね。
別にビルを爆破しろとか、大津波を起こせなんてハリウッド映画みたいなことは
言いませんけど。（笑）
でも、まあ「金返せ！」と言いたくなるほどではなく、むしろ楽しめたのも事
実。若者たちの描写が秀逸で、特に中沢クンと真紀とけいととの微妙なトライ
アングルの関係は、すごく印象的でした。あれ、わかるよなぁ〜。全てを知っ
ている幼なじみの存在って、気になるもんなぁ〜。中沢クンとけいとを見る真
紀の複雑な目がなんとも言えません。
若い俳優たちがみんな輝いていたのも、さすがに行定監督の演出だと思いまし
た。特にけいと役の伊藤歩の自然な感じが印象的。
ただ田中麗奈と池脇千鶴がまったく絡まないのは残念でしたね。今が旬の２人
だけに。
てことで、若者たちの生き生きとした描写によって、観ている間はかなり楽しめた
映画。行定監督らしさも発揮されていたけれど、残念ながら、あとに残るものは
そんなにありませんでした。そういうつくりが味といえば味なんだけどサ……。
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆（+1／2★）【ちょっとだけオススメ。おヒマでしたらどうぞ】
（若者の日常を描いたドラマとしてはかなりよくできているが、それを通して
何かが伝わってくるかどうかは疑問。行定監督への期待が大きいだけに、
ちょっとキビシめに点をつけました。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年４月６日（火）テアトル新宿にて。午後２時の回。