レディ・ジョーカー
（2004年 日本）（上映時間２時間１分）
監督：平山秀幸
出演：渡哲也、徳重聡、吉川晃司、國村隼、大杉漣、吹越満、加藤晴彦、菅野
美穂、岸部一徳、長塚京三
＊東映系にて全国公開中
ホームページ http://www.ladyjoker.jp/
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＜ストーリー＞
昭和22年。物井清二は、日乃出麦酒神奈川工場を解雇され、会社宛に不当解雇
を非難する文章を送りつける。それから五十数年後、清二の弟清三（渡哲也）は
薬局を経営しながら、寝たきりの身となった兄の世話をしていた。清三は休みに
なると競馬場へ出かけていたが、そこでトラック運転手の布川（大杉漣）、信用
金庫職員の高（吹越満）、町工場の旋盤工・松戸（加藤晴彦）、刑事・半田（吉
川晃司）の４人と親しくなる。やがて、清三たちはビール会社社長の誘拐事件を
計画するが……。
＜レビュー＞
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映画化不可能といわれた小説の映画化。原作を読んでいないとちょっとツライ
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高村薫が「グリコ・森永事件」にヒントを得て、1997年に発表したベストセラ
ー小説「レディ・ジョーカー」の映画化。
ボクは原作を読んでいないのだが、かなりの長編で、複雑なストーリーのよう
で、おまけに実際の事件にヒントを得た作品ということで、映画化は無理といわ
れていたらしい。
それを映画化したのは、監督：平山秀幸＆脚本：鄭義信のコンビ。原田美枝子
主演の『愛を乞うひと』などでもおなじみのコンビで、どちらもスゴイ実力の持
ち主。このコンビなら、かなりの困難もクリアしちゃうよなぁ〜。 (*^_^*)
いわゆる社会派サスペンスってやつなんですけどね。戦後すぐに起きたビール
会社による不当解雇事件を発端に、それから五十数年後の今の時代に、５人の男
たちがビール会社の社長を誘拐する。しかし、社長誘拐はきっかけでしかなく、
犯人たちの真の狙いはビールを人質にした20億円の裏取引だった……というお話。
もちろんサスペンスではあるのだが、犯人は最初からバレちゃっているわけで、
描かれるのは犯人探しではなく、その動機や背景。そこには、部落差別、民族差
別などの社会的なテーマが横たわっているのだ。
ドラマは事件の経緯を追うと同時に、そこに関わった人々の心の内も描き出し
ていく。犯人たちそれぞれの思い、被害者の社長一族の哀しいドラマ、会社を守
るためにあらゆることをする企業の論理、事件を捜査する警察の複雑な内部事情
などが、力強いタッチで描写されていく。
特に重点を置いて描かれるのは、世の中から落ちこぼれ、弱者として、あるい
はアウトローとしてしか生きられない犯人たちの鬱屈した思い。社長誘拐に始ま
る一連の事件は、そんな彼らが、大企業という権力に向かって放った渾身の一矢
だったのだ。 （−o−））―――→◎
そうやって、登場人物の内面をキッチリ描いていくあたり、いかにも平山＆鄭
コンビの作品らしいですねぇ〜。
サスペンスにふさわしいスリリングな場面も、ちゃ〜んと用意されています。
なかでも、身代金をめぐる犯人、企業、警察が三つどもえになった争いはかなり
の緊迫度。 ｏ（＾ｏ＾）ｏドキドキ
そういえばこういう社会派のサスペンス映画って、昔はもっとあったような気
がするなぁ〜。松本清張原作の『砂の器』とかサ。最近はなんか少なくない？
そういう時代なんでしょうか。
というわけで見応えタップリの社会派サスペンスではあるのだが、さすがに大
作を映画化しただけに、ツッコミ不足のところもかなり目につく。
まず犯人が５人もいるので、それぞれの背景はどうしても描写不足のところが
出てきてしまう。特に「虐げられた者たちの反逆」というところをもっとクッキ
リ見せないと、映画全体のテーマが曖昧になってしまう気がするのだが。
事件の構図そのものもかなり複雑だから、観ていてついていけないところがあ
りますね。原作を読んでいないボクのような人間には、かなりわかりづらい感じ
です。 (~ヘ~;)
役者は渡哲也をはじめ実力派が揃っているだけに、さすがにみんなよかったで
す。「第二の石原裕次郎」コンテスト出身の徳重聡が映画初出演していますが、
それなりの雰囲気は持っているものの、裕次郎と言われてもピンとこないよなぁ
〜。
ボクがいちばんスゴイと思ったのが、犯人の１人である刑事役の吉川晃司。そ
のワルぶりには、背筋がゾクゾクさせられちゃいましたぜ。 （∋_∈）
骨太な社会派サスペンスとして良くできた映画です。ただし、大作の映画化だ
けに原作を読んでいないとちょっとツライ感じ。事前に原作を読んでおくか、こ
の映画を入門編として原作を読んでみるといいのではないでしょうか。
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆（＋1／2★）【ちょっとだけオススメ。おヒマでしたらどうぞ】
（小説と連動して観るとかなり楽しめる映画だと思うが、映画単体だとさすが
に苦しいところがある。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年12月16日（木）池袋シネマサンシャインにて。午後４時20分の回。