レイクサイド・マーダーケース
（2004年 日本）（上映時間1時間58分）
監督：青山真治
出演：役所広司、薬師丸ひろ子、柄本明、鶴見辰吾、杉田かおる、黒田福美、
眞野裕子、豊川悦司
＊日比谷スカラ座2ほかにて全国公開
ホームページ http://www.lakeside-mc.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
並木俊介（役所広司）と妻の美菜子（薬師丸ひろ子）は、他の3組の夫婦とと
もに、中学受験を控えた子供の勉強合宿に参加する。そこに彼の不倫相手の英里
子がやってくるが、俊介の不在中に何者かに殺害されてしまう。美菜子は「自分
が殺した」と告白。事件が公になると子供の受験に影響すると主張する親たちは、
警察に通報しようとする俊介を制止し、事件のもみ消しを図るのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
親子の心の闇を浮き上がらせた緊迫のサスペンス
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2000年に、『EUREKA』でカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞し、世界中
の注目を集めた青山真治監督。芸能ニュース的に言えば、女優とよた真帆のダン
ナとしても有名な人。その青山監督が初めてミステリーに挑んだのがこの映画。
人気ミステリー作家、東野圭吾のベストセラー小説「レイクサイド」の映画化で
す。
日本映画には欠かせない存在の役所広司が、不倫男・並木の役で登場。薬師丸
ひろ子演じる妻・美菜子とは別居中だが、娘の中学受験の勉強合宿に参加するた
め、湖畔の別荘に駆けつける。
他の参加者は、合宿会場の別荘のオーナーでもある藤間夫婦（柄本明＆黒田福
美）と、美菜子の学生時代の友人の関谷夫婦（鶴見辰吾＆杉田かおる）の２組。
これに、豊川悦司演じる塾の講師が加わり、子供たちを指導。
そんな中、突如別荘に並木の不倫相手・英里子が現れる。並木の困惑をよそに、
夕食まで別荘に居続ける英里子。夜にはホテルに帰ったはずの彼女だが、何者か
によって別荘で殺害されてしまう……。
このへんまで観たら、典型的なサスペンスものだと思うのは当然でしょう。ボ
クも「ははぁーん、いったい誰が彼女を殺害したかをめぐって、犯人探しのドラ
マが展開するのね」と思ったのでした。
ところが、あらまぁ、薬師丸ひろ子がすぐに「私が殺した！」と名乗り出ちゃ
うんです。まだタップリ時間があるのに、あっさり犯人をバラしちゃって、どー
すんだよぉ〜〜〜〜〜！！ (>_<)
これで警察に通報したら、ドラマはジ・エンド。しかし、もちろんそんなこと
にはなりません。事件が公になれば、並木夫婦はもちろん、他の夫婦の子供たち
の受験にも影響するというので、全員が共犯関係を結んで事件をもみ消すのだ。
昔なら「いくら子供の受験のためったって、そんなことねぇだろ！」とツッコ
ミのひとつも入れたくなるんですが、何が起きても不思議でない今の世の中だけ
に、「もしかして……」と思わせるリアルさがありますねぇ〜。
しかも、湖畔の別荘でのお受験合宿という限定された舞台も、バッチリ効果的。
そこで犯罪行為に足を踏み入れていく親たちの心の闇が映し出されて、ゾクゾク
する緊張感を感じてしまいました。 {{ (>_<)
}}
青山監督の演出もさすがに光っていて、オープニングの象徴的な女性の映像を
はじめ、印象深いシーンがたくさん詰まっています。
こういう限定された場所でのドラマは、役者の技量がダイレクトに反映されま
すが、その点も抜かりナシ。なんたって、役所広司、薬師丸ひろ子、柄本明、黒
田福美、鶴見辰吾、杉田かおると演技派ばかりですからねぇ〜。舞台劇のような
濃密でスリリングなドラマを生み出しています。特に、薬師丸ひろ子の底知れぬ
コワさ、柄本明の飄々とした残虐さがスゴイです。
かつての「金八カップル」鶴見辰吾と杉田かおるが夫婦役というのも、何だか
楽しい。ちなみに、杉田かおるは、今回の共演で過去を吹っ切って結婚した……
というのはウソ。 (＾0＾)
さらにラスト近くになって待ち受ける驚愕の事実。トヨエツ演じる塾講師を巻
き込んで、信じられない事件の真相が浮かびあがります。この事実によって、そ
れまでの登場人物の行動が別の意味を帯びてくるユニークな展開。
そして、それを通して、親や子供たちの心の闇、その背景にある競争社会の異
常さなどの深いテーマも、クライマックスでドッカーンと浮かび上がらせていま
す。ただのサスペンスで終わらせないところに、ドラマに「深み」を求める青山
監督のこだわりを感じてしまいました。
ただ、ちょっとそのあたりは、バタバタと詰め込みすぎて、やや忙しすぎる感
じもしましたけどね。
それに、テレビの２時間サスペンスのようなわかりやすい決着ではないので、
とまどう人もいるかもしれません。
ラストに映る卒業証書を持った並木の娘がコワいです。いったいあの子は、ど
んな人間になるのでしょうか。そして、並木夫婦のその後は？ みなさん、不倫
にはご注意を。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
（原作は知らないけれど、サスペンスとしてはなかなかのもの。登場人物の心
の闇もクッキリ描かれています。親もコワけりゃ子もコワい。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2005年２月１日（火）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前10時45分の回。