羊たちの沈黙 (THE SILENCE OF THE LAMBS)


(1991年 アメリカ)
監督:ジョナサン・デミ
出演:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン、
テッド・レビン、アンソニー・ヒールド

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<ストーリー>
若い女性ばかりを狙い、殺したあとに皮をはぐという猟奇的な連続殺人事件が
発生。女性FBI訓練生クラリスは、犯人像割り出しのため、監禁中の元天才的精
神科医で殺人鬼のレクター博士を訪ねる。レクターは、クラリスが自分の過去
を話すという条件で、事件究明に協力するが……。

<レビュー>
トム・ハリスのベストセラー小説を映画化したサイコ・スリラーの傑作。
その後もたくさんのサイコ・スリラー作品が登場しているが、残念ながらこれ
を超える作品は出ていない気がする。

大げさに騒ぎ立てたり、残虐なシーンばかりを出さずに、心理的に少しずつ恐
さを積み上げていく手法が素晴らしい。ジョナサン・デミの抑制のきいた演出
が見事だ。

だが、この映画を成功に導いた最大の要因は、何といってもクラリス役のジョ
ディ・フォスターとレクター役のアンソニー・ホプキンスの緊迫感あふれるや
りとりだろう。
異常な殺人者でありながら、鋭い推理で真相を解き明かしていくレクター。彼
に翻弄されつつも、執念で真相に迫っていくクラリス。
単なる捜査官と協力者という関係では説明できない2人の心理状態が、観てい
る者にヒシヒシと伝わってくる。

特に、アンソニー・ホプキンスの演技には戦慄さえおぼえる。オリの中という
限られた空間の中で、あれだけの名演を見せることができるのだからタイシタ
もの。舞台劇で培った演技力が十分に発揮されている。さすがに現代の名優と
いわれるだけのことはあるゾ。

そういえば、『日の名残り』(1993年 ジェームス・アイボリー監督)では、
まったく異質な執事の役をこなしていましたっけ。殺人者から執事まで、いや
いや、それどころかオリヴァー・ストーン監督の『ニクソン』(1995年)では、
ニクソン大統領まで演じちゃうんだからスゴイ俳優です。

それに立ち向かったジョディ・フォスターもこれまたエライ!

それにしても、ジョナサン・デミは1993年の『フィラデルフィア』でも、トム
・ハンクスとデンゼル・ワシンシンの名演を引き出している。これもまた監督
としてのひとつの才能かもしれませんネ。

《ぽちのおすすめ度》
★★★★
                             <ぽち>

《もものコメント》
アンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターの出会いのシーン(監獄の格
子越しの)が強烈。彼女の服装とか靴を見ただけで、どこの出身とか、どんな
生活をしてるのかピタリと当てちゃうんだもん。

2人はけっして恋に落ちるわけじゃないけど、一緒に犯人を分析していくとこ
ろには、ちょっとドキドキ。女には、自分が隠している領域にドンドン踏み込
まれていく恐怖と快感みたいなものがあるのよねぇ。特にああいう一見冷たそ
うなタイプのエリートは……。

ただし、ちょっと「できすぎている」のが気に入らない。作品のレベルは高い
し、脚本にもムダはないし、映像もいい。でも、どのシーンが印象的かってい
うと、すぐには出てこない。きっと、あんまり「できすぎている」から、かえ
って引っかかるものがないんだと思う。
ほら、優等生よりも不良のほうに、かえって魅力を感じちゃったりするじゃな
い?


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