ライアー (LIAR)
(1997年 アメリカ)(上映時間１時間42分)
監督・脚本：ジョナス・ペイト、ジョシュ・ペイト
出演：ティム・ロス、クリス・ペン、マイケル・ルーカー、レニー・ゼルウィガー、
エレン・バースティン、ロザンナ・アークエット、マーク・デイモン
＜ストーリー＞
娼婦惨殺事件の重要参考人として、ウェイランドという富豪の御曹司が警察の取調べ
を受ける。担当の刑事は、ベテランのケネソウと経験の浅いブラクストン。ふたりはポリ
グラフ(嘘発見器)を使って真相を探ろうとするが、IQ151のウェイランドは逆に彼らを混乱
させていく。そして、やがて意外な事実が浮かび上がる……。
＜レビュー＞
被疑者と刑事の嘘つき合戦、いったい勝者はどっちでしょう？
そういう映画デス。（笑）
タイトルもズバリ「ライアー（嘘つき）」。
ポリグラフを小道具に、IQ151の知能を誇るお金持ちの息子と、見るからにクセのありそ
うな刑事が対決する。
なんといっても、被疑者のお金持ちの息子を演じるのが個性派ティム・ロスだから、観て
いる人は最初、「絶対にコイツ犯人だな」と思うはず。
ところが、さすがにIQ151の頭脳の持ち主。巧みな話術とレトリックを駆使して、ホントか
ウソかわからないことをあれこれと持ち出してくる。そして、２人の刑事はもちろん、映画
を観ている観客さえも混乱させていく。
前半は、ほとんどが取調室だけのシーン。まるで舞台劇のようだ。
被疑者と刑事たちが対決する会話はおもしろいけれど、なにしろあまりにも動きがなさす
ぎる。そこに耐えられなくて退屈してしまう観客もいると思う。
それに、登場人物の描き方が直線的で、それほど魅力が感じられないのも欠点。
ただし、これは中盤以降、それぞれの真の姿が暴かれていく伏線として、わざとそういう
描き方をしているのかもしれない。
そのうちに、少しずつ取調室以外のシーンが加わってくる。
それにつれて被疑者と２人の刑事の秘密が暴かれていく。
被疑者ウェイランドを奇怪な行動に走らせるある病気の秘密。複雑な家庭環境。殺された
娼婦との関係。
ギャンブル好きが災いして借金で身動きが取れなくなったブラクストン刑事。
そして、ベテランのケネソウ刑事と娼婦との意外な接点。
こうした秘密をいかにも意味ありげな映像で描いていく。
いったい何が真実で、何が嘘なのか。本当の犯人は誰なのか。観客を深いスモークの
中に誘い込んで、混乱させる。
そして、結末は……。
まあ、あの結末についちゃ、賛否両論あるでしょうね。
僕は「否」のほうです。あまりにも唐突で、とってつけたみたいだもん。
いったん死んだことにした人間を再登場させるなら、それなりに納得できる伏線を張って
おいてくれなくちゃ。あれ、やっぱり強引ですよ。
もしかして、あんまり観客を混乱させたのに責任を感じて、無理やり真相らしきものを提
示したの？
それとも、「実はあいつは生きていたァ！」ってことで、続編でもつくろうとした。 (＾0＾)
まさかネ。
被疑者だけでなく、刑事にまつわる秘密と嘘も暴かれていって、何が何だかわからなく
なるという設定はおもしろい。
それに、被疑者と刑事の対決も見応え充分。ティム・ロスがうまいのはもちろん、クリス・
ペンとマイケル・ルーカーという２人の刑事役もかなりの存在感を発揮している。
独特の雰囲気を放つ映像もいい。
すご〜く地味だけど、それなりに楽しめる映画だと思う。
ただねぇ、あまりにも都合がよすぎるところや唐突なところが多くて、僕はちょっと不満
でした。まあ説明をつけようとすれば、それなりに説明できる不自然さだとは思うんだけ
ど、それでもスクリーンに入り込むのをジャマしちゃう。
反則とまではいかないけど、イエローカードぐらいは提示したい気持ち。
製作者や出演者をはじめインディーズ映画っぽい匂いがプンプンするこの映画。
結局、そこから抜け出せなかったのかな〜？
《ぽちのおススメ度》
★★＋1／2★
（嘘つき合戦で真相不明。と思ったら唐突なラスト。うーん、問題作には違いないけど……）
＜ぽち＞