ロング・エンゲージメント(A VERY LONG ENGAGEMENＴ)
| （2004年 フランス）（上映時間 ２時間13分） 監督：ジャン＝ピエール・ジュネ 出演：オドレイ・トトゥ、ギャスパー・ウリエル、ジャン＝ピエール・ベッケ ル、ドミニク・ベテンフェルド、クロヴィス・コルニヤック ＊ 丸の内ピカデリー１ほか東急・松竹系にて全国公開 ホームページ http://www.long-eng.jp ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 第一次大戦下のフランス。兵役を逃れるため、自らの身体を傷つけた罪で死刑 を宣告された５人のフランス兵たちが、「ビンゴ・クレピュスキュル」と呼ばれ る前線の塹壕に連行される。その後、５人は敵陣との中間地点に置き去りにされ、 死亡した。だが、兵士の１人マネクの婚約者マチルド（オドレイ・トトゥ）は、 マネクが生きていると信じ、戦場で彼に会ったという元伍長から預かった兵士た ちの遺品を手がかりに、捜索を始める……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 『アメリ』的世界で描く不思議な愛のミステリー 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 大ヒットした『アメリ』のジャン＝ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥ 主演による映画。 簡単にまとめちゃえば、戦場で死んだ兵士の婚約者が、「彼は生きている！」 と信じて、あれこれと手がかりを追及して、執念でその真実に迫るという物語。 いったい戦場で何が起きたのかという真相に迫るミステリーを軸にした、切な くも美しい愛の物語なのです。 これって、どう考えても真正面から描きたくなる正統派のドラマですよねぇ〜。 でも、そこはあの『エイリアン４』を監督し、人肉ネタの『デリカテッセン』 を共同監督し、『アメリ』でも不思議世界を炸裂させたジャン＝ピエール・ジュ ネ監督ですもの。まともなドラマなんか描くもんですか。 とにかくヘンなところだらけなのです。この映画。 （*￣0￣*） 何がヘンかといえば、まずその登場人物。主人公のマチルドは幼くして両親を 亡くし、小児マヒを患い、内向的な性格。「両親は灰」とブツブツつぶやいたり、 「食事の前に愛犬が部屋に入ってきたら彼は生きている……」と願掛け（？）す る変わった女の子。そうです、『アメリ』とかなり共通するところがある人物な のです。 演じるオドレイ・トトゥって、不思議な魅力を持った女優さんです。ジュネ監 督の映画にピッタリ。 彼女を親代わりになって育てた叔父夫婦もヘンだし、彼女が捜査を依頼する“ イタチ”探偵も奇妙な人物。やたらに砂利に突っ込みたがる郵便配達人など、出 てくる人物のほとんどが不思議な人物たちです。 そうした人々が生み出すエピソードは、これまた不思議。「これってコメディ ー映画なのか？」と思うほどに、コミカルだったり、シニカルだったり、ブラッ クだったりするシーンが次々に登場するワケ。ひねりを加えた『アメリ』的メル ヘン世界の再現です。 もちろん、愛を背景にしたミステリーという物語の軸は、きちんと展開してい くんですヨ。 「ビンゴ・クレピュスキュル」で何が起きたのかを突き止めるために、マチル ドがいろんな人と出会い、そのたびに、希望を持ったり落胆したりするドラマ。 でも、それもマチルドの直感がカギになったりして、普通のミステリーとはひ と味もふた味も違う感じ。 映像もジュネ監督の真骨頂。戦場の暗い映像と、マチルドの住む田舎のとびっ きり明るい映像の対比をはじめ、独特の雰囲気を持った映像が全編にあふれてい ます。『アメリ』のときもそうだったけど、なんだか妖しい魅力があるんだよね ぇ〜。この人の映像って。 今回は『アメリ』のヒットのおかげが、かなり予算もあったらしく、迫力のＣ Ｇ映像も全開です。 さて、もしも、このドラマを真正面から描いていたなら、ボクのような人間は 途中で飽きていたかもしれません。しかし、ジュネ監督の不思議ワールドのおか けで、どんどん引き込まれて、飽きることはありませんでした。 直感がカギになったりするだけに、乱暴な展開や都合よすぎのところもたくさ んあるのに、そんなに気にはなりませんでした。 щ(￣∀￣)ш ただし、最近の直球一本やりの純愛ドラマなどから見れば、かなり異質な変化 球の映画なので、人によっては拒否反応を起こすかもしれません。 『アメリ』の世界についてこれた人なら、楽しめる映画だと思いますが、『ア メリ』を観ていない人はぶっ飛ぶかもね。 変化球のドラマといいましたが、それでもラストには素敵な感動が用意されて います。まるで絵画のようなシーンで、とっても美しい終わり方です。 欠点は、拘束された兵士が５人もいて、それぞれにいろいろなエピソードが飛 び出すので、よく観ていないと混乱しちゃうところでしょうか。フランス人の名 前って覚えにくいしサ。 (^o^) 本筋のサスペンスの話も、なんだかちょっと、とっちらかっちゃて、イマイチ よくわかんないところがあるかなぁ〜。 途中で「どっかで見たことある女優さんだなぁ〜」と思ったら、ジュディー・ フォスターがカメオ出演してました。彼女もまた、妖しいジュネ監督ワールドの 住人になってしまったのですね。 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】 （『アメリ』とテーマやストーリーは違えどタッチは同じ。なので、『アメリ』 が好きだった人にはオススメ。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年３月16日（水）池袋シネマサンシャインにて。午後１時40分の回 |