ラヴソング (COMRADES,ALMOST A LOVE STORY／甜蜜蜜)
(1996年 香港)
製作・監督：ピーター・チャン
出演：レオン・ライ、マギー・チャン、エリック・ツァン、クリストファー・
ドイル、クリスティ・ヤン、アイリーン・ツー
【ＶＩＤＥＯ】日本コロムビアより発売
＜ストーリー＞
大陸に恋人を残して、成功を夢見て香港に来たシウクワン。広東語も英語も話
せない彼は、初めて入ったマクドナルドで店員のレイキウと運命的な出会いを
する。そのうちに２人は深い関係になるが、レイキウは投資に失敗してマッサ
ージ嬢に転身。そこでヤクザのパウと知り合う。一方、シウクワンは故郷に残
した恋人を呼び寄せて結婚。だが、かつてレイキウと関係したことを妻に告白
したことから……。
＜レビュー＞
香港アカデミー賞ではグランプリを含む９部門を独占したというこの作品。
だが、はっきり言ってしまおう。いったいどこが傑作だッつーの！
ただのありふれた恋愛ドラマです。（＾０＾）
日本の昼メロ（なんてもう死語か？）でも、こんな素材はやらんだろう。
でも、でも、でも（３回も言うことないんだけどサ）おもしろかったんだなぁ、
これが。
なぜでしょう？
まず第１に、香港の社会事情を背景に描いているから。
『玻瑠＜ガラス＞の城』でも、香港返還という社会事情が背景になっていたけ
れど、この映画ではそれに加えて、大陸から夢を抱えて香港にやって来る人々
の挫折や苦悩が背景になっている。
印象的なのは、レオン・ライ扮するシウクワンが、初めて入ったマックの店員
レイキウ（マギー・チャン）を純粋の香港人だと思ってしまうところ。本当は
同じ大陸出身者なのに、それを知られたくなくてめいっぱいスマートな雰囲気
を振りまく彼女に、すっかりダマされてしまう。
そんな２人のやりとりが、とってもおかしくて、ちょっと哀しい。
(・・,)グスン
ささやかな夢を抱きながら、まるで根無し草のような生活を送る大陸出身者。
この映画をただの恋愛映画としてだけでなく、そうした人々の行き様を描いた
映画として見ると、また違った味わいが出てくるんじゃないだろうか。
そして、この映画をおもしろくしている第２のポイントは、音楽をはじめいろ
んな泣かせる要素を効果的に散りばめているところ。
たとえば、『玻瑠＜ガラス＞の城』でブラザース・フォアの曲が効果的に使わ
れていたように、この映画ではテレサ・テンの曲がうまく使われている。
いや、曲だけじゃない。なんと実際にテレサが出てくるのだ。（
゜＿゜；）
（もちろん演じているのは本人じゃないけど……）
テレサの歌う「グッバイ・マイ・ラブ」が流れる中、背中にテレサのサインを
もらったシウクワンが、レイキウの乗った車の前を去っていく。テレサのサイ
ンを見てグッと来た彼女が、思わず顔を伏せると、頭がぶつかってクラクショ
ンが鳴る。それを聞いたレイキウが振り返る……。
なんて、ニクイ場面のオンパレードなのよ。ホント。
次々といろんな仕掛けを用意して、「さあ、泣け！ さあ感動しろ！」と観客
にスゴイ迫力で迫ってくるんだワ。まったく！ (｀へ´)
だいたいこの物語。バカバカしいにもほどがある。
２人が最初に深い関係になる場面から、「何でそうなるの！？」って感じ。
その後、10年に渡って離れたりくっついたりした２人が、マンハッタンで「大
スレ違い大会」を演じたり、最後のドンデン返しで再会するところまで、「そ
んなバカなことあるわけないだろ！」と突っ込みたくなる展開ばっかり。
そんなトンデモな話なのに、何となく最後まで引っ張られてしまうのは、音楽
をはじめとした泣かせる要素を巧みに使った演出のせい。
『玻瑠＜ガラス＞の城』でも感じたことだけど、何で香港の監督はこの手の演
出がこんなにうまいんだろう。
この際、香港の監督さんたちに、「不倫スレ違い映画」の王様！ チャンピオ
ン！ 大統領！ カリスマ！と、ありとあらゆる賛辞を贈っちゃおうかしら。
でもねぇ、ちょっと時間がたつと、「何であんな映画にハマったんだろ？」っ
て思っちゃうんだよね。こういう映画って……。
ところで、この映画では『恋する惑星』なんかでおなじみのカメラマン、クリ
ストファー・ドイルが、英会話学校の教師役でいい味出してます。チョイ役と
かじゃなくて、本格的に演技していて、けっこう感動させたりする。何者なん
だ？ このオジサン。
《ぽちのおすすめ度》
★★★
（最初にハマんないと、最後まで苦痛を感じちゃうと思います。）