マップ・オブ・ザ・ワールド(A MAP OF THE WORLD)


(1999年 アメリカ)(上映時間2時間6分)
監督:スコット・エリオット
出演:シガニー・ウィーバー、ジュリアン・ムーア、デヴィッド・ストラザー
ン、アーリス・ハワード、クロエ・セヴィニー、ルイーズ・フレッチャー
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<ストーリー>
アメリカの田舎町に住む主婦アリス(シガニー・ウィーバー)は、ちょっと目
を離した隙に親友テレサ(ジュリアン・ムーア)の娘を事故で死なせてしまう
。そのことで悩み苦しむ彼女に対して、世間の目は冷たい。さらに、彼女には
児童虐待の罪まで着せられてしまい……。

<レビュー>
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巧みな心理描写と充実の役者陣が光る見応えある人間ドラマ
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お金儲けなんかに関係なく、つくり手の良心を感じさせる映画があります。
この映画はまさにそんな作品。1人の女性の波乱の運命を通して、人間にとっ
て何が本当に大切なのかを伝えてくれる人間ドラマです。観終わったあとの充
実感は、とてもお金なんかじゃ買えませんッ!! (*^.^*)

アメリカの田舎町に住む主婦アリス。牧場を営む夫と2人の娘とともに幸せに
暮らしている。同じ年頃の娘を持つ近所に住む主婦テレサとは、家族ぐるみの
付き合い。
そんなある日、テレサの娘を預かったアリスは彼女を事故死させてしまう。ふ
と目を離した隙に池にはまってしまったのだ。
罪の意識に苛まれるアリス。わが子を失ったテレサの落胆ぶりは激しく、それ
がさらにアリスの苦しみを大きくする。

だが、苦しみはそれだけで終わらなかった。アリスは学校の保健室の先生とし
て勤務していたのだが、問題児とその母親が「児童虐待を受けた」と彼女を告
訴。アリスは逮捕されて拘置所に入れられてしまったのだ。
気丈に振る舞うものの、家族と離れ離れになったツラさが日ごとに増すアリス
。そして、アリスが消えて混乱する夫や子供たち……。

この映画の監督は舞台畑のスコット・エリオット。なんだかとってもキマジメ
な演出ですが、人間心理の捉え方がバツグンにうまい!
前半では、事故で子供を死なせたアリスの混乱ぶりや、子供を失ったテレサの
落胆ぶりをリアルに描き出します。
その丹念な描写ときたら、ボクなんか、まるで自分自身の出来事みたいにググ
ッときちゃいましたヨ〜。せつなくて、せつなくて。ああ……。 (T^T)

感心したのが、事件が起きる前の前フリ。フツーの母親のアリスに、「ときど
きキレそうになっちゃうわ!」てな意味のことを言わせてるんです。
ほら、どんなに優しい人だってサ、傍若無人、やりたい放題の子供たちを見て
いると、「このガキどもがッ! いっぺん痛い目にあわせたろか」な〜んて思
うことがあるでしょ?(もちろん実行はしませんけど)
そういう心理を前もって出しておくから、その後のアリスの悩みや苦しみが観
客によりリアルに伝わってくるんですねぇ〜。

後半は、児童虐待の疑いで拘置所に入れられたアリスと残された家族の気持ち
が、これまたリアルに描かれていきます。
その中でギクッとしたのが、アリスが拘置所に入ったことで「解放された」と
言うところ。それまでの彼女はそれほど苦しみ、もがいていたワケ。こういう
微妙な心理描写が実に巧みなんです。 (*^_^*)

拘置所暮らしが長引くうちに、アリスと家族の思いがどんどんすれ違うところ
も、哀しくて、せつなくて、たまりませんでした。
そりゃあ、そうだよねぇ〜。あんなに過酷な運命に巻き込まれたら、みんなボ
ロボロになっちゃうよねぇ〜。 (~ヘ~;)

アリスが逮捕されたらいきなり周囲の人間が敵だらけになっちゃうところは、
ちょっとやり過ぎにも思えたんですけどね。でも、最近のアメリカの風潮なん
か見ていると、けっして大ゲサとは言い切れないですもんね。日本の犯罪報道
を見てても、かなり危ないよなぁ〜。

さて、お客さん、充実の演技陣も必見だよッ! この映画って、実はセリフ以
外のところで感情を表す部分が多いんです。それだけ役者の力量が試されるん
ですが、みんな見事でしたねぇ〜。 (^-^)

特にシガニー・ウィーバーは圧巻。悩んで苦しんで、キレそうになりながらギ
リギリふんばる。気丈な面を見せながら、同時に弱さも秘めている。アリスの
そんな複雑な感情を見事に表現していました。
最近の彼女の演技の充実ぶりは、スゴイものがあります。『エイリアン』での
彼女しか知らない人は、その底力を再認識してもらいたいデス!
(それでもハダカを見せたところは、肉体派女優の名残りか!? (^0^) )

子供を失った母親を演じたジュリアン・ムーア(『シッピング・ニュース』と
違ってお化粧つきネ)も重みのある演技。その他の脇役陣もよかったなぁ。

あらあら、良い映画なのはわかるけど、なんだかツラそうですって? 確かに
「哀しい」とか「せつない」とかばっかり言ってたから、引いちゃった人もい
るかもしれませんね。

でも、安心してください。最後までずーっとツライわけじゃありません。観終
わったら、きっとホッとできるはず。
ラストはやや甘めですが、けっしてウソっぽい感じはしません。「どんなに傷
ついても前向きに生きていこう」。「苦しみの中でこそ真実が見えてくるんだ
」。そんな思いが伝わってきました。 (^。^/)

日本ではほとんど話題にならないインディペンデント系の作品ですが、そのへ
んの超大作なんか足下にも及ばない見応えある映画でした。
超大作ばかりがアメリカ映画じゃありません。こういうマイナーな作品にこそ
アメリカ映画の奥深さが表われているんですねぇ〜。

音楽を名ギタリストのパット・メセニーが担当しているのも注目ヨ。(^_-)-☆

《ぽちのオススメ度》
★★★★☆
(深みのある人間ドラマが好きな人にオススメ。ただし、ド派手なところは全
然ないので、映画でストレスを解消したい人にはオススメできません。)
                            <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2002年3月28日(木)新宿武蔵野館にて。午後11時20分の回。


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