マラソン(MARATHON)


(2005年 韓国)(上映時間1時間57分)
監督:チョン・ユンチョル
出演:チョ・スンウ、キム・ミスク、イ・ギヨン、ペク・ソンヒョン、アン・
ネサン
* 丸の内ルーブルほか松竹・東急系にて全国公開
ホームページ http://www.marathon-movie.com/
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<ストーリー>
自閉症という障害を抱える20歳のチョウォン(チョ・スンウ)。母のキョンス
ク(キム・ミスク)は、彼の能力を伸ばすためにマラソンに挑戦させる。その
ために、かつてボストンマラソンで優勝した経歴を持つチョンウク(イ・ギヨ
ン)にコーチを依頼するが、彼はほとんどやる気がなく、チョウォンがグラン
ドを走っている間、ベンチで寝そべっているありさまだった……。

<レビュー>
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泣かせの演出をとらずコメディータッチで描いた感動物語。あと味さわやか!
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自閉症の青年がフルマラソンに挑む物語。しかも、実話がベース。
とくれば、涙ウルウルの感動物語を想像してしまったのだが、あらあら、とん
でもありません。これってコメディー映画ですか??? (・_・?)

と思うぐらい全編が笑いに満ちあふれているのです。主人公の天真爛漫でユ
ニークな言動を中心に、爆笑ネタの連続。 (^∇^)

こうしてありがちな泣かせの演出をとらず、ユーモラスで、ポカポカ温かいタ
ッチで描いたことが大成功。そんじょそこらの陳腐な感動物語にならず、さわ
やかなそよ風のような余韻を残してくれる映画に仕上がっています。

中心となるのは主人公チョウォンと母キョンスクの物語。息子のために一日で
も長く生きたいと願う母は、息子の才能を伸ばすためにマラソンに挑戦させる。
そこで元有名選手にコーチを依頼するが、彼はまったくやる気がない。
一方、家庭では、チョウォンの弟が母にかまってもらえず、寂しさと不満を抱
えている。また、父親は仕事を理由にあまり家にいない。

全編笑いの連続とはいえ、そこには当然マジな話がたくさん転がっています。
障害を持つ息子に対する母親の深い愛と不安。彼女が息子を縛り付けているだ
けだと非難するコーチ。バラバラの家族。

そういうマジな話が、笑いの中に散らばったことで、よりクッキリと際立ち、
観客の心を刺激します。ウソくささはまったくナシ。母の葛藤を中心に、登場
人物の思いがリアルに伝わってくるのです。

展開はあくまでもありがちなもの。
クライマックスのマラソン大会の盛り上げ方も、このテの物語の定番。
でも、そこに至るまでに感動を押し付けたり、ムリに泣かせようとしていない
から、観客は自然に引き込まれてしまいます。素直に感動して、自分も伴走者
となって、チョウォンを応援したくなってしまうのです。ガンバレ〜〜〜!!

おまけに、ラストには大胆な仕掛けが用意されています。
チョウォンが好きなシマウマを効果的に使うことで、彼が走るのは、母親から
強制されたからでも、ご褒美のジャージャー麺やチョコパイが欲しいからでも
なく、走る行為に喜びを見つけたからだということが、はっきりと理解できる
美しいシーンです。

そしてその後で見られるチョウォンの笑顔が絶品なんだなぁ〜〜〜。(^0^)

チョン・ユンチョル監督はこれが長編デビューだそうですが、とてもそうは見
えない巧みな演出。登場人物の生き生きとした描写が見事です。

主人公チョウォンを演じるのは『ラブストーリー』(2003)のチョ・スンウ。
不自然でない障害者の演技に努力のあとが感じられます。

母親役のキム・ミスクの存在感のある演技も印象的。あの深みのある演技は、
それなりのキャリアがないと出せませんよねぇ〜。コーチ役のイ・ギヨン
(『黒水仙』)もいい味を出していました。

もしも、この映画をありがちな泣かせの映画にしていたら、その場では感動し
ても、あとは何も残らない薄っぺらな映画になったのではないでしょうか。

しかし、感動物語にありがちなウェットさや、重さ、暗さを一切排除して、
ユーモラスで温かなタッチで描いたことにより、かえって深みのある本当の感
動物語になったのです。あと味はさわやか。いつまでも心に残るはず。

ストレートな泣かせの映画が流行する今日この頃。こういう押し付けでない感
動を伝えてくれる映画って貴重だと思いますヨ。泣かせりゃいいってもんじゃ
ないんだからサ。

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
(ユーモラスな中にムリのない感動が込められた映画。さわやかな感動を味わ
いたい方にぜひオススメ。)
                                   <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2005年7月6日(水)池袋東急にて。午後1時30分の回。

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