壬生義士伝
（2002年 日本）（上映時間２時間17分）
監督：滝田洋二郎
出演：中井貴一、三宅裕司、夏川結衣、村田雄浩、中谷美紀、佐藤浩市
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＜ストーリー＞
盛岡南部藩を脱藩して新撰組に入隊した吉村貫一郎（中井貴一）。家族と故郷
を自慢し金に意地汚い彼に、新撰組のはぐれ者、斎藤一（佐藤浩市）は激しく
敵意を燃やすが、やがて共感も感じ始める。そんな中、討幕派が勢いを増し、
新撰組内部に不穏な空気が流れるようになる……。
＜レビュー＞
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胸に迫る貧乏侍の家族愛。これって今の流行なのか！？
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「新撰組」って人気がありますよねぇ〜。彼らの"滅びの美学"のようなものに
惹かれるんでしょうか。
ボク自身は、残念ながらそんなに思い入れがないのですが（実は、彼らととも
に官軍と戦った会津出身なんですけどね）、それでも本やドラマなどでそれな
りには知っている。
ただし、浅田次郎の同名小説が原作のこの映画は、近藤勇、土方歳三、沖田総
司といったおなじみのヒーローではなく、吉村貫一郎という無名の隊士が主人
公です。
この吉村っつうのがねぇ、ヘンなヤツなんですよ。南部藩出身の純朴な男で、
家族や故郷の自慢話ばかりする。その反面、金に異常な執着を見せる。おまけ
に、剣の腕はバツグンで、とにかく強い強い。 Ｗ（゜Ｏ゜）Ｗ
物語は、この男がどうして藩を脱藩して新撰組に加わったのか、どうして金に
執着するのかを少しずつ明らかにしながら、彼の家族に対するあまりにもスト
レートな、切々たる思いを盛り上げていきます。
同時に、「死にたくないから人を斬る」という吉村に対して、「人間なんか大
嫌い！ だから人を斬るんだッ！！」という新撰組のはぐれ者、斎藤一との関
係も描いていきます。最初は吉村に敵意を燃やしていた斎藤が、やがてそこに
本物の武士の姿を見出し、共感を覚えていくんです。この対立と共感のドラマ
も大きなポイント。
観終わって思ったのは、山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』に似たテーマだな
ぁ〜、ということ。家族愛をまっすぐに描いて涙を誘うところが、どちらも共
通しています。
ただ家族を幸せにしたいだけなのに、そのためには過酷な運命に身をさらさな
ければならない貧乏侍のツラサも共通しています。
ちょっと前なら、クサ〜く思われたこういう映画も、今の時代にはピッタリな
んでしょうね。 (~ヘ~；)
ただし、『たそがれ〜』ほどの清々しさや感動があるかといえば、ちょっと疑
問。
前半は家族愛よりも、吉村と斎藤の対立と共感のドラマが中心だし、新撰組の
ようすも描かなければならない。話がけっこうあっちこっちと広がるし、人間
関係も入り組んでいる。明治になって、年老いた斎藤と、吉村に縁のある男が
それぞれ昔を回想するというスタイルも、ちょっとわかりにくいよねぇ〜。登
場するいろんなエピソードがとっちらかったままで、うまく流れていかない感
じがしちゃったんです。おかげでズズーッとスリーンに引きずり込まれるまで
はいきませんでした。
あ、別に悪い出来だと言うわけじゃないんですヨ。 (
;^^)ヘ..
いくつもの要素を過不足なく描き、登場人物の心理もキッチリ描く。殺陣や戦
闘アクションなども盛り込んで観客を楽しませる。全体を貫くダイナミックな
タッチも印象的。
滝田洋二郎監督は前作『陰陽師』が大ヒットしましたが、深いドラマの中にき
ちんと娯楽性を取り入れるところはさすがに手慣れた演出。この人もそうだけ
ど、成人映画出身の監督って、厳しい制約の中で映画をつくってきているから
、ホント、ソツがないし、うまいんですよ。
特に後半のたたみかけるような演出は見事。
ラスト近くの中井貴一の一人芝居あたりからは、家族愛がドドドーン！と胸に
迫って、さすがのボクも涙ぐんでしまいました。うう。 (T^T)
あざといのを自覚しながら、それでもわざとこうして泣かせるテクニックは素
晴らしい！
役者はみんなウマイです。ただなぁ、塩見三省の近藤、野村祐人の土方、堺雅
人の沖田あたりは人によっては違和感があるかも。でも、まあ、この映画では
彼らは脇役だから……。
主役クラスでは、純朴男と守銭奴、剣の達人という多面的な顔を演じ分けた主
役の中井貴一もよかったけれど、斎藤役の佐藤浩市の殺気には身震いしました
ぜ。陰のある役が似合うなぁ、この人。
結論。
時代劇ファンや新撰組ファンもちゃんと満足させる映画にしながら、家族愛や
男の友情を感動的に描いていく。そういう面でかなりよくできた映画だと思い
ます。話の流れにやや無理があるものの、泣けるのは確実に泣けるはず。
それにしても、あそこまで家族のためだけに生きられるとは。
全国のお父さん達も自分の胸に手を当てて考えましょうネ。
（もちろんボクにはマネできませ〜ん。妻子もいないから気楽だいッ！）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観て損はナシ】
（絶対に泣ける感動作。泣きたい方は観にいきましょう。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2003年１月23日（木）池袋シネマ・ロサにて。午後４時15分の回。