ミリオンダラー・ホテル (ＴＨＥ ＭＩＬＬＩＯＮ ＤＯＬＬＡＲ ＨＯＴＥＬ)
（2000年 ドイツ・アメリカ）（上映時間２時間２分）
監督：ヴィム・ヴェンダース
出演：ジェレミー・デイビス、メル・ギブソン、ミラ・ジョヴォヴィッチ、
ジミー・スミッツ、ピーター・ストーメア、アマンダ・プラマー
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＜ストーリー＞
ロサンゼルスのダウンタウンにあるミリオンダラー・ホテルには、トムトム（
ジェレミー・デイビス）をはじめ、社会からはじき出された人々が住みついて
いた。トムトムは、親友イジーの死に傷ついていた。そんな時、イジーの死に
疑問を抱いた彼の父親がＦＢＩ捜査官スキナー（メル・ギブソン）を派遣する。
これがきっかけとなり、トムトムはずっと恋心を抱いていたエロイーズ（ミ
ラ・ジョヴォビッチ）と急接近するが……。
＜レビュー＞
独特の作風で、映画監督というよりは「映画作家」という呼び名の方がふさわ
しい感じのヴィム・ヴェンダース監督。
彼の新作は、ゴメ溜めのようなホテルを舞台にしたラヴ・ストーリーだ。
(* ^)(*^-^*)ゞ
「ミリオンダラー・ホテル」に住むトムトムは、ちょっと頭のニブイ青年。住
人の雑用係をこなしている。
ある日、親友のイジーが死に、ＦＢＩ捜査官スキナーが捜査を開始。トムトム
にも疑惑の目が向けられる。
そんな中、トムトムは以前から憧れていた娼婦エロイーズと言葉を交わすよう
になるが……。
ま、簡単にいえば、若い男女が、殺人事件をきっかけに心を通わせていく様子
を描いた映画。
とはいえ、なんたってヴェンダース作品ですからねぇ。けっこう凝った構成に
なってるんですヨ。
まず、舞台となるホテルがクセモノ。名前は「ミリオンダラー」とゴージャス
だけど、中身はガラクタ。住人も社会からはみ出した人たちばっかりだ。
なかでも、「自分はビートルズのメンバーだった！」と主張して、ジョン・レ
ノンそっくりの歌を歌うディキシーというオジサンは大傑作！ レコードジャ
ケットを手に、「どうしてオレが写ってないんだ！ 訴えてやるッ!!」と鼻息
を荒くする。ええ、完全にイッちゃってますネ、この人。 (＾0＾)
その他にも、タールを塗りたくった絵画を得意とする自称画家のジェローニモ
や、かつては上流社会で暮らしていたという心優しい老婆ジェシカなど、ユニ
ークな人物がゾロゾロ。
こういう人たちがホテルのロビーに集合して、殺人事件をめぐってあれやこれ
やと話し合い、謀議をめぐらしていく。それを観てるだけでも十分に楽しいん
ですねぇ〜。 (^-^)
おまけに、そこに捜査に訪れるメル・ギブソン演じるスキナー捜査官が、これ
またワケのわからん人物なんだわ。一応、名捜査官ということになってるんだ
けど、やってることは強引なのを通り越してもうムチャクチャでごじゃります
るぅ〜。 (＾。^/)
しかも、彼ったら、首にコルセットを巻いている。何となくアヤシイ雰囲気の
人物なのだ。
彼のムチャな捜査と、それにシタタカに抵抗する住人たちの対決も、これまた
なかなか見応えがある。
そして、ヴェンダース作品の特徴である美しい映像は今回も健在だ。ホテルの
屋上から地上への落下シーンなど、幻想的なシーンが次々に登場。あんまり美
しいもんだから、観終わってからもいつまでも映像が残っちゃってサ。寝覚め
が悪いッス。誰か僕の頭の中から、ミリオンダラー・ホテルの映像を追い出し
てくれぇ〜!! (＾o＾)／
そんな映像と、人気ロックバンド「Ｕ２」などの音楽がうまくマッチング！
（ちなみに、この映画の原案を考えたのは「Ｕ２」のボーカルのボノ。彼がや
や強引にヴェンダース監督を口説いたとか。）
主人公トムトムの独白をはじめ、セリフがみんな詩的で、哲学的で、含蓄を含
んでいるのも面白いですねぇ〜。
ただねぇ、トムトムとエロイーズのロマンスという観点からは、殺人事件があ
んまり効果的に使われているとは思えなかったなぁ〜。ただのバックグラウン
ドに過ぎない、って感じなんだもん。
ヘンな捜査官と被疑者が引っかき回しあっているだけで、謎解きの面白さもな
いしさぁ。 (｀ヘ´)
ハリウッドのエンターティメント作品じゃないんだから、ハラハラドキドキの
サスペンスの面白さなんか期待しないけど、それでもそのあたりをもう少し工
夫して、２人のロマンスとうま〜く結びつけて欲しかったゾ。そうしたら、ト
ムトムとエロイーズの恋がもっと深くて、余韻の残るものになった気がするん
だよね。
それでもラスト近くになると、二転三転の展開でグッと面白くなってくる。
美しいけど、ちょっぴり悲しいラストもいい感じ。
ただし、ここで明らかになった事件の犯人と、その動機がつまんないんだよな
ぁ〜。ズーッと引っ張った割には「オイオイ、あれで終わりかヨ!?」ってガッ
クシきちゃった……。 (´ヘ｀;)
はっきり言って、ストーリー的にはどうってことのない映画デス。ストーリー
を追っかけてると、途中で飽きちゃう。
それよりも全体のイメージや映像を楽しむ映画だと思いますね。
それにしても、今回のヴェンダース監督、なんかミョーに明るくない？
トータルに振り返ると、この映画って、カンペキな悲劇なんだよね。描き方に
よっては、「青春の暴走。悩み、傷つき、そして取り返しのつかない結末へ！
」てな感じのドロドロした暗〜い映画になりかねない。
ところが、なぜかそれをユーモアたっぷりに、明るいノリで撮っちゃってる。
これまでのヴェンダース作品とはかなり雰囲気が違うゾ。いったいどうしちゃ
ったの？
まさか、これを機にジム・キャリー主演のコメディ映画をつくったりはせんで
しょうな!? (＾0＾)
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆（+1／2★）
（ヴェンダースにしては並の作品だと思うけど、映像を中心に彼らしさは出て
いる。ヴェンダース・ファンは必見でしょう。それ以外の方は……どうかなぁ〜？）
＜ぽち＞