モンスター（MONSTER）
（2003年 アメリカ）（上映時間１時間49分）
監督・脚本：パティ・ジェンキンス
出演：シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ、ブルース・ダーン、
スコット・ウィルソン、プルイット・テイラー・ヴィンス
＊シネマライズほかにて公開
ホームページ http://www.gaga.ne.jp/monster/
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＜ストーリー＞
1986年、売春婦のアイリーン（シャーリーズ・セロン）は、全てに絶望し自殺
を考えていた。そんなとき、彼女は同性愛の女性セルビー（クリスティーナ・リ
ッチ）とバーで出会い、意気投合する。２人は町を抜け出そうとするが金はない。
そこでアイリーンは売春で稼ごうとするが、相手の男に乱暴されて銃で彼を撃ち
殺してしまう。その後セルビーとともに町を出たアイリーンだが、前科者の彼女
に職はなく再び売春を始める……。
＜レビュー＞
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“殺人鬼”シャーリーズ・セロンの渾身の演技で描く哀しすぎる愛の物語
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2002年に処刑された“米国初の女性連続殺人犯”を描いた映画。主演は世界に
冠たる美女シャーリーズ・セロン。
て、どこにおるんだ？ 出てないじゃん。 (・_・？)
なに？ このマユ毛ナシの太っちょのブサイクな女がシャーリーズだと？ ウ
ッソ〜〜〜！ 信じらんな〜い！ Ｗ（゜Ｏ゜）Ｗ
いやぁ〜、そのぐらいスゴイ変身ぶり。美女台無しです。13キロも大増量して、
マユ毛を抜いて、歯も義歯を入れたらしいです。変身のスゴサといえばロバート・
デ・ニーロが有名ですが、完全に超えましたね。まさに渾身の演技。サクレツす
る女優魂。「ワタシ、女優よ。オーッホッホッホッ」。 (＾0＾)
この映画は、売春婦の主人公が同性愛の女性と知り合い、ふとしたことから殺
人を犯し、それをきっかけにどんどん転落して連続殺人犯になっていく姿を追っ
たもの。
どんな極悪人にもそれなりのドラマがあるわけで、その犯罪に至る経緯や心理
を描いていくわけです。
そこで中心的に描かれるのは、アイリーンと同性愛の女性セルビーとの関係。
このテのドラマによくある幼少時の悲惨な体験や、屈折した心理などはセリフで
チラチラ出てくるぐらいで、そんなに前面には出てきません。親戚に乱暴され続
けたとか、聞くも涙のヒドイ話があるんだけどね。
そのへんをあまり描かないことが「犯罪者の内面を暴くドラマとしては弱いん
じゃないかなぁ〜」と最初は思ったのです。 (~ヘ~;)
しかしですねぇ、そのうちにわかったのですが、これは犯罪者の内面を暴いた
ドラマであると同時に、哀しい愛の物語でもあるのですヨ。
不幸な生い立ちを経験し、破滅的な人生の中で愛を知らずに生きてきた主人公。
それがたまたま出会った同性愛の女性に、真の愛を見い出す。だけど、不器用で
社会に適応できない自分と、生活力ゼロの相手が暮していけるはずもなく、２人
の関係はドンドンから回りしていく。そして、ついに悲劇が……。
という愛の悲劇を描いた映画でもあったのです。
しかも、それをベタベタに描くのではなく抑えたタッチで描いていく。犯罪者
に同情的に描くわけでもなく、完全に突き放すわけでもない。その内面に入り込
みつつ、常に一定の距離を保って描いていくんです。もちろん、「この極悪人が！」
と断罪するのでも、「社会が悪いんだぁ〜」と何もかもを社会のせいにする視点
に立つのでもない。
この姿勢はとてもよかったですねぇ〜。観ているこちら側が自分で考えたり、
感情を動かす余白が残る描き方で、ベタベタに描くよりも、もっともっと深い哀
しみが漂ってくるんです。 (T^T)
脚本、監督は、これがデビュー作となるパティ・ジェンキンス（女性）。うー
む、こんなビミョーなバランスの描写ができるのは、よほどの才能の持ち主では
ないでしょうか。たいてい、どっかで感情をぶつけちゃうもんだけどね。
主人公を演じたシャーリーズ・セロンと堂々と渡り合ったクリスティーナ・リ
ッチも見事。コワイ主人公とカワイイ彼女との対比が絶妙なんだよね。しかも、
実は彼女も、主人公を翻弄した分、ある意味主人公よりもコワかったりして……。
それにしても、『アダムス・ファミリー』の小娘が、よくぞまあここまで成長
したものだ。でも、ちょっと太ってないかい？ そこまでシャーリーズと張り合
って増量したのかしらん？ (＾0＾)
犯罪者の内面を描きつつも、「モンスターにも人間の心はあるのよ！」という
ありがちな描き方を超えた、重くて深いものが伝わってくる映画です。シャーリ
ーズ・セロンの演技だけでもモトは取れるはず。
重く、暗く、哀しいラストに続いてエンドタイトルに流れるジャーニーの明る
い曲が、いつまでも耳に残ってしまいました。
“♪ドンストップ ビリービィング〜”（コラコラ、歌うな！）
《ぽちのオススメ度》
★★★★☆【絶対にオススメ！ みんな観てねぇ〜】
（連続殺人犯の悲哀を見事に描ききった映画。シャーリーズ・セロンの演技だ
けでも観る価値アリ）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年９月25日（土）ワーナー・マイカル・シネマズ板橋にて。午後２時40分の回。