息子のまなざし(LE FILS)
| (2002年 ベルギー・フランス)（上映時間１時間43分） 監督・脚本：ジャン＝ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ 出演：オリヴィエ・グルメ、モルガン・マリンヌ、イザベラ・スパール、ナッ シム・ハッサイーニ ＊ 2003年12月劇場公開 ホームページ http://www.bitters.co.jp/musuko/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 職業訓練所で木工を教えるオリヴィエ（オリヴィエ・グルメ）。ある日、彼の クラスを希望して、フランシス（モルガン・マリンヌ）という少年が入所して くる。オリヴィエは手一杯だという理由で断ってしまうが、なぜかフランシス が気になる様子。結局、後日彼を自分のクラスに受け入れる。実はフランシス はオリヴィエの息子を殺して少年院に入っていたのだった……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 主人公の複雑な感情を見事に写し取った人間ドラマ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 うわぁ〜、これはシビアすぎる話ですねぇ〜。 自分の息子を殺した相手が目の前に現れてしまうのだから。 当然ながら、そこには主人公の複雑な心の葛藤があるわけで、それを淡々と写 し取ったのがこの映画。 全編が手持ちカメラのドキュメンタリータッチで、セリフも必要最小限。 オープニングなんか、職業訓練校のドキュメンタリーかと思ったぐらいだもの。 息子を殺した男と対峙した主人公の心には、怒り、悲しみ、無力感、復讐心な どさまざまな感情が浮かんでは消えていきます。その揺れ動く心を淡々と、そ してあますところなく、スクリーンに刻みつけていくのです。 その感情はスクリーンのこちら側にもヒシヒシと伝わってきて、主人公と同じ 心境になってしまいます。 特にたまらないのが、いつでも復讐できるシチュエーションにありながら、そ れをしない、というかできないというか、そのあたりの微妙な心理が何とも言 えず切ないのです。 もうホントにうますぎなんですヨ。 ただ車に乗っている主人公の横顔を映しているだけで、心理変化をキッチリ見 せていくんですから。 主人公の別れた妻の変化なども、効果的に描写されています。 監督と脚本は、『ロゼッタ』『イゴールの約束』のダルデンヌ兄弟。いわゆる エンタメ映画とはまったく違う映画をつくる人たちですが、それでも後半で主 人公と少年をドライブさせて、「もしかしたら復讐があるのでは？」と思わせ るあたり、観客を飽きさせない工夫もちゃ〜んとしています。 ２人の今後の関係について、観客にアレコレ考えさせるラストも見事。 そして、何よりスゴイのが主役のオリヴィエ・グルメ。 だって、感情を表現するセリフがほとんどないから、顔の表情としぐさだけで すべてを表現しなくちゃならないんだもの。ある意味、神業に近い演技で、感 服してしまいました。なんなんだろう？ この役者さん。（ちなみに2003年の カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞。） 少年役のモルガン・マリンヌも存在感があってよかったです。 ハデさはまったくないものの、深いテーマを追った優れた映画です。微妙な感 情表現がたまりません。もしも、自分が主人公の立場だったら……と考えさせ られてしまいました。 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆（＋1／2★） （全編同じタッチで、さすがに単調な場面が続くところではやや飽きてしまい ましたが、それ以外は文句ナシに見応えある人間ドラマでした。） ＜ぽち＞ 2005年６月ＤＶＤにて鑑賞 |