ミスティック・リバー(MYSTIC RIVER)
（2003年 アメリカ）（上映時間２時間18分）
監督：クリント・イーストウッド
出演：ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、ローレンス・
フィッシュバーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローラ・リニー
＊丸の内プラゼールほか松竹・東急系にて全国公開
ホームページ http://www.warnerbros.co.jp/mysticriver/index.html
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＜ストーリー＞
幼なじみのジミー（ショーン・ペン）、デイブ（ティム・ロビンス）、ショー
ン（ケビン・ベーコン）の３人は、11歳のある日、悲劇に遭遇する。道路に落
書きしているところを警官らしき男に叱られ、デイブだけが車に乗せられ連れ
去られたのだ。男たちは４日間デイブを監禁しもてあそんだ。それから、25年
後、殺人事件が起きる。殺されたのは19歳になるジミーの娘。捜査にあたるの
は今は刑事となったショーン。そして、その捜査線上にデイブが容疑者として
浮かび上がってくる……。
＜レビュー＞
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ミステリーと人間ドラマの見事な融合。イーストウッドのシブい演出に拍手！
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『ダーティハリー』で44マグナムを構えたクリント・イーストウッドは、とて
つもなくカッコ良かったです。そして、この映画のイーストウッド監督も実に
カッコいい！！
抑制的で、登場人物の内面をジリジリとあぶり出すような演出は、まさに職人
芸といってもよいほどのシブさ。これは彼の監督としての最高傑作でしょう。
この映画、基本はサスペンスです。
ある殺人事件が起きて、その被害者の父親、刑事、そして被疑者という３人が
交差する。実はこの３人、かつての幼なじみで、しかも悲劇的な事件に巻き込
まれた経験を持つ。そして、25年後に再び訪れる悲劇……。
てことで、殺人事件の謎解きが全体の中心線。フツーのサスペンスとしても、
スサマジイ緊迫感を持つ一級の映画ですが、そこに３人の男たちの人間ドラマ
を巧みに融合させてダブルで見応えある映画に仕上げています。 (*^_^*)
まず、サスペンスとしては、謎解きに至る過程がしっかりと組み立てられてい
ます。伏線をキッチリ張りながら捜査の進展を描き、いったい誰が真犯人なの
か混乱させていく。被害者による復讐劇も盛り込みつつ、ズンズンズンと緊迫
感が高まる。特に後半の緊迫感はケタはずれ。一瞬たりともスクリーンから目
が離せませんでした。多少の都合良すぎの展開も、ほとんど気になりません。
「悪役以外にありえない！」という感じのケビン・ベーコンを刑事に起用する
異色の配役も、サスペンスとしての魅力を高めています。どーでもいいような
話でも、この人がすると「なんかあるんじゃないか？」って思っちゃうのね。
でもって、相棒の刑事が『マトリックス』のモーフィアス（ローレンス・フィ
ッシュバーン）でしょ。こんなにアクの強いコンビはありません。そのまま犯
人コンビにしても違和感ナシ（笑）。
この一級品のサスペンスに組み込まれた人間ドラマが、これまた超魅力的。
少年時代の悪夢の出来事を境に３人の少年達の人生は大きく狂う。直接の被害
者デイブは平凡な家庭人のように見えるものの、胸中には暗い影が漂っている。
また、ジミーには前科があり裏の世界とつながっている。刑事のショーンも
妻に家出され、時折かかる無言電話で消息を知るだけ。
そんな３人が新たな悲劇的事件をきっかけに再び接近し、かつての傷口がうず
き出す。悔恨、迷い、怒り。そうした暗く、重たい登場人物の心理がリアルす
ぎるほどリアルに伝わってきます。 Ｗ（゜Ｏ゜）Ｗ
なんたって役者がいいですからねぇ。前述のケビン・ベーコンに加え、ショー
ン・ペンでしょ。ティム・ロビンスでしょ。よくもまあこんなスゴイ演技派ば
かり揃えたもの。こんな豪華な顔合わせは二度と観られないかも。
特にショーン・ペンの抑え切れない激情を抱えた込んだ演技は、映画史に残る
ほどの名演技。今も心のキズを癒すことができず、深い森をさまようように迷
い続けているティム・ロビンスの演技も見事すぎます。
彼らの妻を演じたマーシャ・ゲイ・ハーデンとローラ・リニーも、地味ながら
存在感のある演技。
「これだけ役者が揃って、脚本も素晴らしい（『ＬＡコンフィデシャル』でア
カデミー脚色賞を受賞したブライアン・ヘルゲランド）とくれば、よけいなこ
とをしないで正攻法の演出で行こう！」と考えたのかどうかは知らないけれど、
イーストウッドの演出は実にオーソドックス。ビックリするようなテクはほ
とんど使っていません。
その代わり、役者や脚本の良さを引き出す演出が見事。その抑制した感じがた
まらんのですなぁ〜。光を上手く使った映像も印象的。オヤジ、シブいぜ！！
単純な勧善懲悪でないラストもいいです。ただし、あまりにもシビアで戸惑っ
てしまう人もいるかも。不条理といえばあまりに不条理ですもの……。
でもねぇ〜、そのあとの後日談でケビン・ベーコンにあるポーズをさせるんで
すよ。これがねぇ、その後の彼らを暗示させるとともに、不条理さに戸惑う観
客をホッとさせる効果も発揮しているんですよねぇ〜。こういうところも好き
だなぁ〜。
この映画のＰＲコピーに「もうひとつの『スタンド・バイ・ミー』」とあるよ
うに、少年時代の心の傷というテーマは共通。でも、こっちの方がもっと重た
くて、暗くて、悲劇的です。
しかし、その分心にグググと迫ってくる。大人になるということは、子供だっ
た頃に持っていた色々なものを失くしていくことなのかもしれないなぁ〜、と
溜め息をつくボクなのであった。 (´ヘ｀;)
脚本、演出、役者とすべてが揃った良い作品。ミステリーと人間ドラマが見事
に融合しています。
おすぎさんに賛同するのはちと悔しいが、ボクもこの映画は間違いなく名作だ
と思うゾ！ (＾o＾)／
《ぽちのオススメ度》
★★★★☆【絶対にオススメ！ みんな観てねぇ〜】
（必見の作品。ただし、大ワクはあくまでミステリーなので、ミステリーが苦
手な人はやめておいたほうがいいかも。それに暗くて重たい映画なので、そこ
んとこも注意してね。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年１月10日（土）シネマ・ロサにて。午後１時45分の回。