ネフュー (ＴＨＥ ＮＥＰＨＥＷ)
(1998年 アイルランド)(上映時間１時間45分)
監督：ユージーン・ブレンディ
出演：ヒル・ハーバー、ドナル・マッカン、ピアーズ・ブロスナン
＜ストーリー＞
アイルランドの小さな島イニシュダラ島。トニー（ドナル・マッカン）は、あ
る出来事から島を出てアメリカヘ移住した妹カレンから20年ぶりの手紙を受け
取る。そこには、彼女が余命わずかで、自分の遺骨を故郷の島に戻してくれる
よう息子に頼んだことが書かれていた。やがて、その遺言通りに甥チャド（ヒ
ル・ハーパー）が島にやってくる。彼はカレンと黒人の夫との間にできた子供
だった。トニーはショックを受け、島の人々もチャドを好奇の眼で見る。そん
な中、チャドは母カレンがなぜこの島を出て行くことになったのか知ろうとす
るが……。
＜レビュー＞
『００７シリーズ』のピアーズ・ブロスナンがプロデュースを手がけ、自ら出
演した作品。おまけに、「あるナゾを探りに１人の男がやって来た」みたいな
（正確じゃないけど）キャッチコピーがついていたもんだから、すっかりサス
ペンス劇だと思い込んじゃいました。 ｏ（＾−＾）ｏワクワク
でも、でも、そうじゃなかったんですぅ〜。地味で暗い人間ドラマだったんで
すぅ〜。 (・・,)グスン
皆さん、ダマされないようにしましょうネ！
でもまあ、いいんだけどサ。それなりにおもしろかったし……。
まず、小さな片田舎の島に、黒人との混血の少年がやってくるという設定がお
もしろい。
ガンコがそのまま服を着たみたいなトニー叔父さんが、突然の来訪者に戸惑う
姿がうまく描かれている。
おまけに、この少年の母親（つまり、トニーの妹）とトニーとの間には、かな
りのわだかまりがあるらしい。それがまた、トニーの少年に対する態度を屈折
させる。
そして、もう１人、ピアーズ・プロスナン演じるパブの店主ジョーの存在があ
る。
彼はかつてカレンと恋仲だったらしい。そのせいかトニーととても仲が悪い。
いったい彼らの間にどんな出来事が起きたのか……。
こうした人間関係を背景に、物語はトニーの甥チャドが島での生活を始め、そ
こでジョーの娘アイシュリンと恋をして、やがて20年前の事件の真相を知るま
でを描き出す。
チャドとアイシュリンとの恋はとってもインスタントで、なんだか行きずりの
恋みたいな感じもするが、ドラマのうえでは実に効果的だ。
アイシュリンの父ジョーは、かつてトニーの母カレンと恋に落ち、トニーに猛
反対された過去がある。ところが、今度は娘がカレンの息子と恋仲になったこ
とに怒り（もちろんそこには黒人との混血だからという差別的な意味もある）、
昔とは逆の立場になってしまう。この立場の逆転がうまい。
一方、ガンコ一徹で、バカまじめに見えるトニーにも、実はかつてある女性と
のロマンスがあった。それは彼の性格そのままに、かなり屈折した関係なのだ
が、これもまた20年前に起きた出来事とうまく結びついている。
いやぁ、なかなかよくできた脚本です。
登場人物の関係が巧みに組み立てられていて、全体の構成がとてもうまい。
派手な場面やこれといった盛り上がりはないけれど、ジワーッと染み渡るよう
な感動が味わえますヨ。
ただ残念なのは、物語の中心に据えられた20年前の秘密がつまらないこと。別
にどうってことのない話だし、映画の初めのほうでだいたい予想できちゃう。
あとになって種明かしされても、「ああやっぱりネ」としか思えない。そこが
とっても弱いのだ。
サスペンス劇じゃないとはいえ、もう少しヒネリのある秘密を用意したほうが
よかったんじゃないの？ 途中から飽きてきちゃったもん。
それに、あんまりうまくまとまり過ぎていて、なんか物足りないんだよなぁ。
これといって個性的な人物もいないし、意外な行動もない。
特に主人公のチャドは外見はドレッドヘアーでキメているけど、内面はごく普
通の少年。強烈なパワーもないし、少しも魅力が感じられない。
だいいち彼が何を期待してこの島に来て、何に失望して島を出ようとするのか
全然伝わってこないのだ。やれやれ ┐（´−｀）┌
この映画は、「アイルランド」という要素がなければ、成り立たなかった映画
だと思う。
１人の異邦人の登場によって、周囲の人々の過去が明らかになり、新たな関係
が築かれていく……。そんなよくある話も、アイルランドの自然を舞台にする
と、また違った味わいが出てくる。
ネタのつまらなさや、まとまり過ぎて物足りない脚本を、アイルランドの自然
がかろうじて救っている感じだ。
やっぱり『００７』のイメージが強くて（その前は探偵レミントン・スティー
ルだったしサ）、こういう暗い雰囲気の役はかなり違和感があるピアーズ・ブ
ロスナン。でも、故郷アイルランドに対する熱い思いだけは感じられました。
《ぽちのおススメ度》
★★+1／2★
（こじんまりとまとまった映画だし、ド派手なアクションなんかに飽きた時に
はいいかもネ。）
＜ぽち＞