ネバーランド(J.M.BARRIE'S NEVERLAND)
（2004年 アメリカ・イギリス）（上映時間1時間40分）
監督：マーク・フォスター
出演：ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット、ジュリー・クリスティ、
ダスティン・ホフマン、ラダ・ミッチェル、フレディ・ハイモア
＊日比谷映画ほか東宝洋画系にて全国公開
ホームページ http://www.neverland-movie.jp/
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＜ストーリー＞
1903年、人気劇作家ジェームズ・バリ（ジョニー・デップ）の新作は酷評され、
妻との関係もギクシャクし始める。そんな中、気分転換に愛犬と公園に散歩に出
かけたバリは、そこでデイヴィス一家と出会う。一家は夫を亡くしたシルヴィア
（ケイト・ウィンスレット）が、４人の息子を育てていた。彼らに触発されて
「ピーター・パン」を書き始めるバリだったが……。
＜レビュー＞
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「ピーター・パン」誕生の秘話を描いたちょっと苦い感動物語
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ディズニーでおなじみの「ピーター・パン」はもともと1904年に初演された舞
台劇。それを書いたのが劇作家のジェームズ・バリ。彼が「ピーター・パン」を
書き上げる経緯を、実話をもとに描いたのがこの映画です。
主人公のバリは人気劇作家。しかし、最新作が酷評され行き詰まる。そんな中、
未亡人と４人の子供たちと出会ったバリは、彼らとの交流を通して新作「ピータ
ー・パン」を書き上げていく。
ここで大きなポイントは、バリと一家の三男ピーターとの交流。ピーターは父
親の死以来、夢を信じなくなり子供らしさを失ってしまっている。一方、バリも
また子供時代に兄弟を失ったことがきっかけで、空想の世界に閉じこもり、妻の
苦しみにも気づかない。
そんな２人の心のふれあいが、お互いの心を少しずつ変化させ、さらにバリに
素晴らしい作品をもたらすのです。
とくれば、よくあるベタベタの感動大作、あるいは教科書のような偉人伝を連
想させますが、この映画はまったく逆。
演出は実に抑制されていて、無理に感動をあおるところはまったくナシ。おか
げで、直線的な感動にはつながらないものの、じんわりジワジワと心に染み入っ
てきます。
しかも、話はかなり苦い。一家との交流を通して子供たちのみならず、未亡人
のシルヴィアと親しくなるバリ。それが、妻のさらなる孤独を招き、２人の関係
を悪化させる。おまけに、シルヴィア自身にも大きな悲劇が……。
てことで、どこまでが真実の話なのかはわかりませんが、ストーリーそのもの
が沈痛で、かなりビターな展開。
このあたりは、ありがちな感動作とはかなり異質。
なんせ監督は『チョコレート』のマーク・フォスター。ハル・ベリー＆ビリー・
ボブ・ソーントンのあの映画もかなりビターでしたが、今回もけっこう苦いぃぃ
ぃぃ〜〜。 (~ヘ~;)
演出で特に印象的なのは、ファンタジーシーンの使い方。実話でありながらも、
ときどきバリの空想の世界などを映像化するのだが、それもまた抑制的で、けっ
して派手に使いまくらない。
そして、クライマックスの劇場での上演シーンの後に、もう一度クライマック
スを設けて、一気に美しいファンタジーシーンを全開にする。なんとも見事な演
出です。そこで登場する「ネバーランド」の美しさは感動的でしたねぇ〜。
(*^ｏ^*)
登場人物にセリフ以外のところで、アレコレ複雑な思いを表現させる演出も、
『チョコレート』の時と同様に見事でした。
まあ、もちろん基本は感動物語なので、ラストなどはいかにもありがちな感じ
がします。バリと妻との関係なども実際はもっとギラギラしたものだったろうし、
ややキレイごとに流れているところも目立ちます。
しかし、それでもただの感動物語に持ち込まないところに、フォスター監督の
こだわりを感じます。なにしろ、「夢を信じることは大切」という、この映画最
大のメッセージさえストレートに訴えないのです。おそらく彼は、それが一歩間
違えば、現実逃避になってしまうコワさを十分に理解しているのでしょう。だか
らこそ、抑制的でさりげないメッセージにしたのでは？ その結果、観客は表面
的でない、より深い感動へと導かれることになるのです。
そんな抑制された演出にピッタリなのがジョニー・デップ。セリフのないとこ
ろでも、あのクセモノの目が色んなことを物語ってくれます。そして、ケイト・
ウィンスレットも抑えめの演技が光っていました。『タイタニック』の頃には、
どうってことない女優だと思ったのだが、今や完全な実力派。ピーター少年役の
フレディ・ハイモアもなかなかの演技でしたね。
「感動で涙が止まらない！」的な取り上げ方は、ちょっと疑問。むしろ、じん
わりと染み入る感動が味わえる映画。いかにも、『チョコレート』の監督らしい
深みを感じさせる映画だと思います。
ついでに「あの名作のウラ側にはこんな真相が？！」てな週刊誌的興味もある
ワケで、「ピーター・パン」に興味のない人も一見の価値はありそう。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（抑えめな演技と演出がジワジワと感動を呼び起こす映画。夢の大切さが伝わ
ってきます。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2005年1月15日（土）池袋ＨＵＭＡＸシネマズ4にて。午後1時30分の回。