ニュースの天才(SHATTERED GLASS）
| （2003年 アメリカ）（上映時間１時間34分） 監督・脚本：ビリー・レイ 出演：ヘイデン・クリステンセン、ピーター・サースガード、クロエ・セヴィ ニー、ロザリオ・ドーソン、メラニー・リンスキー ＊ 2005年7月8日ＤＶＤリリース（発売・販売元：アーティストフィルム） ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ アメリカで最も権威ある政治雑誌といわれる「THE NEW REPUBLIC」の編集部 で働くスティーブン・グラス（ヘイデン・クリステンセン）は、若干25歳なが ら次々に特ダネをものにする。「Rolling Stone」などの一流雑誌でも記事を書 き、人気記者となった彼だが、「ハッカー天国」と題したスクープに疑惑の目 が向けられ……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 実話をもとにジャーナリズムのもろさをリアルに描く 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 いまどきマスコミに書かれた記事が、全部ホンモノだなんて思っている人はい ないでしょうが、捏造なんてそうそうあるとは考えないでしょう。しかも、そ れが大統領専用機にも置かれた一流雑誌とくれば、なおさら……。 ところが、この映画の主人公、「THE NEW REPUBLIC」の記者スティーブン・ グラスは、ほとんどの記事をデッチ上げ、それによって人気記者となったので す。なんと発表された41タイトルのうち27タイトルが捏造だったというのだか ら、いやはやなんとも。 ┐(￣ヘ￣）┌ そんな実際に起きた出来事を描いたのがこの映画。 アメリカを揺るがした衝撃的な出来事だけに、ド派手に、盛り上げるだけ盛り 上げて描きたいところですが、ビリー・レイ監督の手法はまったく逆。誰に寄 り添うでもなく、一歩引いた視点から淡々と描写しています。 たとえば、主人公の捏造がバレそうになる場面。ドラマティックにするなら、 「あわや！」というシーンをつくって、いったんスカして、最後にバラすとい う展開をとるはず。しかし、そんなあざといことはやりません。 過剰な盛り上げはいっさいなく、主人公のウソがポロポロと明らかになってい くようすが淡々と描かれます。 それがバツグンのリアルさを生み出し、ジャーナリズムのコワさ、もろさを観 客にグイグイと突きつけるのです。 (＞＜*) 「おもしろければなんでもいい」という大衆の欲求に応えるため、どんどんニ ュースをデッチ上げる主人公。それにあっけなくダマされてしまう周囲の人々。 きちんとした社内チェックシステムがあるにもかかわらず、こうした事件が起 きたことにやりきれなさを感じてしまいます。 事件の顛末と並行して描かれる母校での得意げな主人公の姿が、ラストで一気 に覆されるシーンが印象的。 しかし、同時に、その事実を暴いたのも同じジャーナリズムであり、そこにか すかな希望の光も見出せます。 主人公のスティーブン・グラスに扮したのは、『スター・ウォーズ』シリーズ のアナキン役ヘイデン・クリステンセン。野心家であると同時に気弱な青年の 心情を巧みに演じています。「なるほど、コイツならああいうことをしかねん なぁ〜」と納得させる演技。 また、スティーブンを信じたいと思いつつも、ジャーナリストとしての良心を 追求する編集長役のピーター・サースガードも存在感のある演技。 こうした事件はこれだけでなく、その後もいくつか起きています。それだけに、 この映画が投げかける問題はとてつもなく大きいのです。新聞や雑誌、テレビ などを盲信してはいけませんゾ。 ちなみに、ＤＶＤに収録されている、スティーブン・グラス本人出演のドキュ メンタリー「60ミニッツ」がこれまた、なかなかおもしろいんだなぁ〜。 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆（＋1／2★） （ジャーナリズムのもろさを描いたリアルなドラマ。実録モノのおもしろさが タップリ。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年８月７日（日）ＤＶＤにて観賞。 |