ナインスゲート (ＴＨＥ ＮＩＮＴＨ ＧＡＴＥ)
(1999年 スペイン・フランス)(上映時間２時間13分)
監督・脚本：ロマン・ポランスキー
出演：ジョニー・デップ、レナ・オリン、フランク・ランジェラ、エマニュエ
ル・セイナー
＜ストーリー＞
書物への深い知識と鋭い観察眼を持つ本の探偵ディーン・コルソは、ある日、
バルカン出版の社長で悪魔研究家のボリスから、最近彼が入手した17世紀の悪
魔書「ナインスゲート」に関する仕事を依頼される。現在、世界中に3冊しか存
在していないその本の残り2冊を探し出し、あらゆる角度から比較して真贋を判
断しろというのだ。だが、コルソが仕事を始めると、本屋を営む友人が奇妙な
姿で殺されるなど、奇怪な出来事が次々に起きる……。
＜レビュー＞
クセのある役ばかり演じるジョニー・デップが主演。
名作ホラー『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)でおなじみのロマン・ポラン
スキーが監督。
とくれば、期待するなって言うほうが無理でしょう。
いきなり出てくる首吊り現場。そして、中世風のゲートが次々に開く、とって
も怪しいオープニング映像。
のっけから、サスペンス・ホラーの王道のような雰囲気が漂ってくる。
そこに登場するのがジョニー・デップ扮する本の探偵コルソ。見るからにウサ
ン臭そうな感じで、こりゃあ楽しくなりそうだゾ。(*^。^*)
その後の展開もまさにサスペンス・ホラーの王道。
善人なのか悪人なのか、事件に関係があるのかないのか、よくわからない不思
議な人物が次々に登場して、奇怪な事件が次々に起きる。コルソを誘惑する富
豪の未亡人、次々と怪死する関係者、彼の危機を救う謎の美女……。
あんまり意味のない人物まで、いかにも何かありそうな描き方をするから、観
ているほうはますます混乱してくる。
物語の中心になるのはもちろん古書。17世紀の悪魔書といわれる「ナインスゲ
ート」だ。ただし、ポイントになるのは、書かれている内容ではなく挿絵の版
画。３冊それぞれの挿絵の違いをコルソが突き止めていく。
ニューヨークからスペイン、ポルトガル、フランスへと舞台は移り、不思議な
挿絵の真相を追求するコルソの旅が続く……。
ほ〜ら、あなたも、めくるめくサスペンス・ホラーの世界に誘い込まれちゃっ
たでしょ？ (゜〇゜；)
ただ、いくつか気になるところもある。
まず、登場人物の心の動きが、きちんと描かれていないのが弱い。特に主人公
のコルソの心理が見えないから、彼がなぜ命の危険も顧みずに悪魔書の秘密に
迫ろうとするのか理解できない。
稀覯書（珍しい本のこと）に対する彼の執着心はスゴイし、「金のためなら何
でもやりまっせ！」的な態度もおもしろいけど、それだけで引っ張れるもんじ
ゃないだろう。
数々の不思議な事件に出会ううちに、自分も少しずつ悪魔の魅力に取りつかれ
て、あとは地獄へまっ逆さまァ〜、なんてことだったら、それなりに納得でき
たんだけどネェー。
だいたい今回のコルソのキャラ。これまでジョニー・デップが演じてきた数々
の変態キャラ（？）に比べると、かなりインパクトが弱いゾ。
何だかそのへんにいるお兄さんって感じ。悪魔書の元の持ち主の未亡人の誘い
に乗って、あっさりエッチしちゃったりするんだから……。何だかちょっとお
マヌケ。 ┐（´−｀）┌
そして、次に気になるのが、悪魔崇拝主義者の話が前面に出てくる後半がどう
してもマンガチックに見えちゃうこと。オカルトな場面が次々に登場するけど、
コワイって感じはあんまりしない。それどころか、現実離れし過ぎていて思
わず笑っちゃいました。 (＾０＾)
でも、これは僕が日本人のせいかな。悪魔とか魔女の話って、どうも身近に迫
ってこないんだよなぁ。中世から近世にかけて魔女狩りをしちゃったり、今で
も悪魔崇拝主義者がたくさんいるらしい欧米の人たちなら、ＵＦＯや宇宙人の
話みたいに、もっともっと現実感を持ったオカルトとしてとらえられるのかも
しれませんネ。
ちなみに、監督のポランスキーはかつて奥さんの女優シャロン・テートを惨殺
された過去を持つ。その犯人は確か悪魔崇拝主義者だったはず。だから、この
映画はそういう連中を徹底的にバカにしているのか？とも考えたけど、どうや
らそこまで強いメッセージ性はなかったみたい。
さて、映画は衝撃のラストシーンへ。
だけど、謎の多くは謎のまま。途中からコルソと行動をともにする謎の美女の
正体も、結局何だかわからない。
ホラー・サスペンスに必要な小道具や仕掛けは揃っているけど、肝心の物語が
突っ込み不足。だから、ラストも「あれあれ」って感じで終わっちゃう。
『ローズマリーの赤ちゃん』みたいな深〜いコワさは、残念ながらどこにもあ
りませんでした。
まあ、それでも入場料分ぐらいは楽しませてくれます。
あんまり期待し過ぎないで、軽い気持ちで観ることをおススメします。(^_^)
《ぽちのおススメ度》
★★★
(ホラー映画なのに、コワくないってのはちょっとネ……。いちばんコワかった
のは、謎の美女役のエマニュエル・セイナーのエッチの時の顔デシタ。)
＜ぽち＞