ノストラダムス（NOSTRADAMUS）
(1994年 アメリカ・イギリス・ドイツ合作)
監督：ロジャー・クリスチャン
出演：チェッキー・カリョ、アマンダ・プラマー、Ｆ・マーレイ・エイブラハ
ム、ジュリア・オーモンド、ルトガー・ハウアー
＊【VIDEO】発売元 東宝東和、 販売元 パイオニアＬＤＣ
＜レビュー＞
みなさんはノストラダムスの預言って、信じていました？
「そんなことあるわけないじゃん」と言いつつも、ちょっと気になった人が多
いのでは？
それにつけても大ブームでした。
店頭にはノストラダムス本が山積み。今年の７月が終わったら、売れなくなる
のは目に見えているから、とにかく何でも出してしまえって感じだったんでし
ょう。
ノストラダムスの預言自体が、どうにでも解釈できるので、いろいろなことを
言い出す自称「研究者」が続出。
個人的に一番面白かったのは、イタリアのヴェスヴィオス火山が噴火すると言
い出して、イタリアの役所に警告に行ったオジサン。預言が外れたら、どっか
に消えちゃいました。
さて、そんなノストラダムスのブームに、映画界も便乗したかと思いきや、こ
れが意外に少ないんですね。
考えてみたら、日本で有名なノストラダムスも、外国ではそれほどでもないと
のこと。特に故国フランスでは、ほとんど知られていないというウワサまであ
りました。だから、便乗しようにもできなかったのかも。
そんな中、ノストラダムスを正面から取り上げた数少ない映画が、アメリカ、
イギリス、ドイツが共同製作したこの映画。なんでフランスが入っていないの
かは不明（やっぱりフランスじゃ誰も知らないのか！？）。
とにかく、ノストラダムスの知られざる生涯を大マジメに描いた愛と感動の歴
史大作だァ！
医学生として、旧来の医学を否定し、新しい治療法を主張したノストラダムス
は、異端者として裁判にかけられる。だが、進歩的な博士に招かれ、医者とし
て活躍。また、博士の弟子マリーと結婚するが、やがて妻はペストによって死
亡。ノストラダムスにも再び異端の嫌疑がかけられ、兄が市長を務める町に逃
れる。そこで後妻を迎えるが、たびたび現れる悪夢に悩まされた彼は、それを
記録して後の世の人々への警告とする。
歴史のお勉強にはなります。ハイ。
16世紀の魔女狩りとか、異端審問といった宗教をめぐる状況。恐怖の病ペスト
（黒死病）の流行。ルターによる宗教改革。そういった当時の時代背景が頻繁
に顔を出します。でも……。
はっきり言って、どうでもいい映画。
つまらない。テンポがない。突っ込みが足りない。
ノストラダムスといえばやっぱり預言が問題なわけで、預言自体とはあまり関
係のない彼のプライベートを延々描かれてもねェ……。
もちろん、預言も出てきます。でも、ただ悪夢にうなされて、いきなり近代的
な戦車が登場したり、爆撃機が空を飛んだり、原爆が爆発したりしても、「な
んじゃ、それ？」って感じ。
途中で、幻覚を見る秘薬の話が出てくるので、それが悪夢の原因かと勘ぐった
のですが、それもはっきりしない。
おまけに、「ヒトラーという名前が頭から離れない」と言ったかと思えば、壁
にいきなりカギ十字を書き始める。
あげくに、最後のほうでは、ケネディやサダム・フセインの映像まで出して、
いかにも彼がすべてを預言していたみたい。
オイオイ、本当にそんなことまで預言したのか？
松尾貴史に言いつけるぞ！（笑）
ただし、肝心の「人類滅亡」については、この映画では悲観的な見方はしてい
ません。ノストラダムスは「人類は生き延びる」と断言。そして、映画の最後
では、「まだ努力する時間はある！」と観客に呼びかけています。
たぶんこれが製作者たちの言いたかったことなんでしょう。でも、そこに至る
ドラマがつまらない。いろんな人物が次々に登場してくるものの、どれもノス
トラダムスとの関係が中途半端。
だから、心が動かない。教科書を読んでいるみたい。演技力のある役者陣が、
力を入れて演じれば演じるほど空回り。うーん、じれったい！
セットや美術も凝っているし、お金はかけている。役者もまずまず。ヨーロッ
パの歴史大作としては、そこそこのレベルに達している。
でも、なんか物足りない……。
それは、ノストラダムスという稀代の傑物が、ただの理想に燃える情熱的な医
師という姿でしか描けなかったことに原因があると思うのですが……。
それにしても、「まだ努力する時間はある」って言われても、この映画、今年
の１月に公開されたんだから、「あんまり時間はないよな」。
と思ったら、製作年度は１９９４年とのこと。
なんでも当時は、阪神大震災やオウム事件の影響で公開できなかったとか。
でも、それを今年公開するというのは、これも日本独特の便乗商法か！？
おススメ度 ★☆☆☆☆（どうしても他にやることがなければどうぞ）