オー・ブラザー！ (O BROTHER, WHERE ART THOU?)
（2000年 アメリカ）（上映時間１時間48分）
監督・脚本：ジョエル・コーエン
製作・脚本：イーサン・コーエン
出演：ジョージ・クルーニー、ジョン・タトゥーロ、ティム・ブレイク・ネルソン、
ホリー・ハンター、ジョン・グッドマン、チャールズ・ダーニング
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＜ストーリー＞
1930年代のミシシッピー州の片田舎。エヴェレット(ジョージ・クルーニー)、
ビート(ジョン・タトウーロ)、デルマー(ティム・ブレイク・ネルソン)という
３人の囚人が脱獄する。隠しておいたお宝を求めて旅する３人だが、金のため
に録音した曲が大ヒットするなど旅は波乱の連続で……。
＜レビュー＞
兄弟で一緒に活躍するコンビってけっこう多いですよね。
狩人、ビリー・バンバン、千原兄弟、明和電機……。（あ、明和電機は１人に
なったんだっけ）。
で、映画界にも、いるんですねぇ〜。ご存知、クセモノ兄弟、ジョエルとイー
サンのコーエン兄弟だぁ〜〜〜〜！ (^_-)-☆
『バートン・フィンク』『ファーゴ』など、数々の作品で世間をお騒がせして
きた彼らの新作がついに登場です。
しかも、これが文句ナシにおもしろいッ！ 彼らの作品にしては、意外にクセ
のない、おマヌケ爆笑コメディに仕上がっています。
V(^O^)
簡単にいえば３人の脱獄囚がお宝を探して旅をするという、よくあるフツーの
ロード・ムービー。ただし、それをフツーなままにしておかないところが、と
ってもコーエン兄弟らしい。アレコレとヒネリの効いた味付けをして、観客を
とことん楽しませてくれます。 (*^_^*)
まず、見事なのが、３人の脱獄囚のキャラクターがキッチリ描き分けられてい
るところ。
口が達者なエヴェレット、いつも文句を言っているビート、お人好しでちょっ
とトロいデルマー。３人とも実に魅力的で、とってもおバカ。
特に、二枚目がウリのジョージ・クルーニーが、完璧な三枚目に徹していると
ころがスゴクおもしろい。
「まだ出たか」てな感じで、最近どこにでも顔を出すジョン・タトゥーロも、
相変わらずいい味を出しているゾ。
おまけに、そんな３人が行く先々で遭遇する人たちも、これまたみんな個性豊
かで強烈な人たちなんだなぁ〜。
陽気で小太りの銀行強盗ネルソンや、ジョン・グッドマン演じる自称聖書のセ
ールスマンのように、悪人もたくさん出てくるんですけど、これがちっともコ
ワクないの。みんなどっかおマヌケで、カワイらしくて、思わず笑っちゃうん
ですヨ。 (＾0＾)
そういう人たちがつくり出すエピソードなんだから、こりゃ楽しくないはずが
ないッ！ しかも、どれも計算し尽くされてるんですよねぇ〜。
例えば、映画の初めのほうで盲目の老人が、３人の脱獄囚に対してある予言を
するんだけど、これがあとになってうまいこと使われるんだわ。
また、旅の途中で、３人はふとしたことから歌を歌って金をもらう。それが「
ズブ濡れボーイズ」というバンド名でレコードになって大ヒットしてしまう。
このネタも、あとあとになって効果的に再登場するんです。
一見デタラメなようでいて、実に計算された心憎い脚本。さすがですねぇ〜。
＼(^O^)／
音楽の使い方も見事。南部音楽がタップリで、ところどころでミュージカルの
ような使われ方もしている。最後のほうのＫＫＫの集会なんて、ただ爆笑する
しかないもん。このへんの遊び心も楽しいんだよなぁ〜！
でも、よく考えたら、これって相当にムチャクチャな話。荒唐無稽、傍若無人
、ええ加減にせいヨ！ の連続。ファンタジーだとか、ある種のおとぎ話だと
か、そういう次元を軽〜く超えちゃってます。
だけど、ここまで徹底してやられちゃうと、もう何も言えません。だって、素
直におもしろいんだもん！ (＾。^/)
これだけ絶賛すると、なんだか僕ってコーエン兄弟のファンみたいでしょ？
でも、実際はそれほどでもありません。むしろ彼らの過去の作品には、ちょっ
と入り込めないところもあったんです。どうしてかというと、あまりにも計算
し尽くされていて、「あざとい」感じがするから。なんかハナについちゃって
イマイチ引いちゃうんですよねぇ〜。
そういうところは今回も多少あるんだけれど、これだけ大暴れされたら、その
へんの細かいところはあんまり気にならなくなってきちゃう。
それに、今回は「うーん」と深く考えさせるようなところもほとんどありませ
ん。物語の下敷きは、古代ギリシアの叙事詩「オデュッセイア」だっていうん
だけど、そんなの全然関係ナシ！
盲目の予言者が出てきたり、歌声で旅人を惑わす女たちが出てきたり、一つ目
の巨人が登場したりと、なんかそれらしい構成にはなってるんだけど、それも
ただネタとして使ってるだけ。特別な教訓なんかありゃしません。
だから、難しいことを考えず、みんなおバカになって笑いましょう！
というわけで、ヒネリのきいた展開と、巧みな映像テクニック、それに音楽が
融合した楽し〜いコメディでした。
鬼才コーエン兄弟、今回は才能をビカビカ光らせるんじゃなくて、肩の力を抜
いて軽〜く飛んじゃった感じ。
ここまで徹底しておバカになられちゃったら、もうな〜んも言えません。えぇ
〜い、どうにでもなれ〜い！！！ ┐(´-｀)┌
《ぽちのオススメ度》
★★★★☆
（コアなコーエン兄弟ファンには物足りないかもしれないけど、ただの爆笑コ
メディとして観ればサイコーに楽しいです。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2001年10月23日（火）シネセゾン渋谷にて。午後12時の回。