オペレッタ狸御殿
| （2005年 日本）（上映時間１時間51分） 監督：鈴木清順 出演：チャン・ツィイー、オダギリジョー、薬師丸ひろ子、山本太郎、高橋元 太郎、パパイヤ鈴木、篠井英介、市川実和子、由紀さおり、美空ひばり、平幹二朗 ＊丸の内ピカデリー２ほか松竹・東急系にて全国公開 ホームページ http://www.tanuki-goten.com/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ がらさ城城主の安土桃山（平幹二朗）は、切支丹の予言者びるぜん婆々（由紀 さおり）から、この世で最も美しいものが自分から、実の息子である雨千代 （オダギリジョー）に移りつつあることを知らされる。激怒した安土桃山は、 一度迷い込めば二度と生きて帰れない霊峰、快羅須山に雨千代を棄てると決め る。棄てられた雨千代は、森の中で唐の国から狸御殿に招かれた狸姫（チャ ン・ツィイー）と運命的な出会いをするのだが……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 老いてますます冴え渡る清順ワールド。もう誰もついて行けんゾよ！ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 なななな、なんでシーンの途中でセットが変わる？？？ （￣ー￣？） どどどど、どーしてこんなに時代考証がメチャクチャなんだ？？？ (ノ´▽｀)ノ うーむ、タランティーノやウォン・カーウァイも尊敬するという鈴木清順監督 も今年82歳。ついにボケたか……。 な〜んて思ったみなさん、残念でした。 この人、昔からこうなんです。不可思議で、妖しくて、美しい映像がサク裂す る独特の世界。リアル感や整合性とは無縁なのだ。 なんせ、大昔に日活で監督をやっている時に、「ワケわかんねぇ映画つくんじ ゃねえよ！」とクビにされてしまった監督さんなのですから。 しかし、ボクは彼のワケのわからなさは、崇高な芸術的精神によるものではな く、過剰なサービス精神によるものだと思うのです。つまり、お客さんを楽し ませるために、魅力的なシーンをテンコ盛にする。ところが、その魅力が、凡 人の視点とはビミョーにズレているために、一見、ワケがわからなくなってし まう。その代わり、そのズレ具合にハマると、二度と抜け出せないぐらいにド ップリ浸かってしまうはず。 さて、今回の新作は、1939年から59年にかけて、美空ひばりや市川雷蔵などの 大スターを起用して人気を呼んだ『狸御殿』シリーズが題材。このシリーズ、 はっきり言って怪映画。笑いあり、涙あり、恋あり、歌ありのミュージカルで はあるのだが、楽しけりゃ何でもいいってことで、かなりムチャなところも多 い。てことは、それだけ自由なことができるわけで、こりゃあ、清順監督のよ うな人にとっては、最高の題材。 そんな絶好の条件を生かして、最初から最後までやりたい放題です。 全編を彩るのは歌と踊り。オペラ、ロック、ラップと幅広い音楽をバックに、 ユーモラスな踊りがタップリです。 ┗(｀ー´)┓┏(｀ー´)┛ そして、狩野派の絵画からダ・ヴィンチやダリ風絵画、歌舞伎、能など、あり とあらゆるな芸術を無節操に融合させたセットもスサマジイ。 なんていうかなぁ〜。ほら、人間って時々シュールでワケのわかんない夢を見 たりするじゃないですか。その夢の世界をそのまま映像にした感じなのヨ。ワ ケわかんないけど、楽しくて、美しいぃぃぃ〜〜って世界なんです。 一応、親から棄てられた雨千代と、唐から来た狸姫による、人間とタヌキとの イケナイ愛を描いた物語なのだが、そんなもんはどーでもいいです。ストー リーとか、ドラマ性とか関係なし。その場その場のシーンの美しさ、楽しさを 堪能すればそれでヨシ。 だって、マジメに考えりゃ笑っちゃいますもん。なんだ、あのセコい極楽ガエ ルは？？？ 命を賭けた戦いがジャンケンってのはそれでいいのか？？？ と かね。 でも、そんな細かなことを考えずに、誰にもマネできない独特の世界にドップ リ浸かると、これがなかなか楽しいのであります。 この破天荒な清順ワールドでは、役者もみんな清順色に染まってしまいます。 主役のチャン・ツィイーは、相変わらずの美しさで、歌や踊りもなかなかのも の。腹鼓をポンと打つところがカワイラシイ。たどたどしい日本語がご愛嬌。 相手役のオダギリジョーの情けなさも、なんだか笑えてしまいます。 しかし、その２人を圧倒するのがその他の脇役陣。 薬師丸ひろ子、平幹二朗、由紀さおりの怪演にはブッ飛びますぜ。これまでの 輝かしいキャリアを台無しにする気か！？ と思ってしまうほどのハジケた演 技。特にラップにも挑戦した由紀さおりには爆笑。薬師丸の久々の歌声も楽し い。 そして、なんとあの美空ひばりまでが清順ワールドの住人に。デジタル処理と はいえ、死んだ人まで自分色に染めるのだから、スゴイとしか言いようがナシ。 普通は年をとるごとにおとなしくなるものですが、年とともにどんどんパンク で過激になっているのだから、やっぱりこの人、スゴイです。ハイ。 「チャン・ツィイー主演のミュージカルなんて楽しそう！」な〜んて観にいく とガッカリします。普通に「楽しい」とか「おもしろい」という映画では全然 ありません。独特の清順ワールドにハマる人だけが楽しめる映画。ほとんどの 人はついていけません。それを承知でコワいもの観たさで行ってみますか？ 《ぽちのオススメ度》 ★★☆☆☆ （個人的にはあまりのバカバカしさと、やりたい放題に最後までケラケラ笑い ながら観ていました。しかし、オススメ度となるとこんなものでしょう。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年５月29日（土）シネマ・ロサにて。午後１時50分の回。 |