クイール
（2004年 日本）（上映時間１時間41分）
監督：崔洋一
出演：ラフィー、小林薫、椎名桔平、香川照之、戸田恵子、寺島しのぶ、黒谷
友香
＊丸の内プラゼールほか松竹系にて全国公開
ホームページ http://www.quill.jp/
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＜ストーリー＞
ラブラドール・レトリバーの子犬が産まれ、飼い主の強い希望で盲導犬訓練士
の多和田（椎名桔平）に預けられる。パピーウォーカーと呼ばれる育ての親（
香川照之・寺島しのぶ）に預けられた子犬はクイール（ラフィー）と名づけら
れる。愛情を一身に受けて、元気に育ったクイールは、１歳の誕生日に育ての
親とも別れて訓練センターに入る。やがてクイールは、パートナーとなる渡辺
満（小林薫）とめぐり逢う……。
＜レビュー＞
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可愛いぃ〜〜クイール。ヒネクレ者の崔洋一監督
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子供の頃に犬を飼っていました。スピッツとなんかの雑種でバカ犬でしたが、
これが可愛くてねぇ〜。 (#^.^#)
でも、フィラリアで若くして死んじゃいました。 (T^T)
そんな犬好きのボクだから、やっぱりこの映画は観ておこうと思ったワケ。
でも、まあ、監督が崔洋一じゃなかったら、行かなかったかも。『月はどっち
に出ている』『刑務所の中』の監督と、こんな大感動物語とは完全なミスマッ
チ。いったいどういう映画を撮ったんでしょう？？？ (・_・？)
物語はラブラドール・レトリバーの子犬が、盲導犬になって、人間のパートナ
ーと出会い、そして別れるという犬の一生のお話。
可愛いぃ〜〜〜犬と、人間の交流を描いた心温まる物語……のはずなのだが。
いやぁ〜、さすがにヒネクレ者です。崔洋一。 (^-^)//""パチパチ
だって、どう考えたって涙ウルウルの感動物語にしかならない素材を、無理や
り感動からズーっと遠い描き方をするんですから。
主人公じゃなくて主犬公？ のクイールに感情移入することもまったくナシ。
周囲の人間のドラマを深く描くこともない。
セリフも必要最小限に抑え、「もう少しで感動しそうなのにぃ〜！」という場
面でシーンをぶつ切りする。最初から最後までひたすら淡々と、客観的に描い
ていくんですよ。
ありきたりの動物感動物語とは全然違います。
「おいおい、これはドキュメンタリーか？」と思うほどの覚めた目（といって
も冷たいわけではない）が全編に貫かれています。
役者の演技もそれに拍車をかけます。
訓練士役の椎名桔平のあまりにも飄々とした演技。そしてパートナー役の小林
薫の不自然なぐらいにユーモラスな演技。
どちらも涙と感動の物語では見られない雰囲気の演技です。
さてさて、この演出の意図するものは何でしょう？
一つには、クイールの一生をそのまま描いただけで感動的なのだから、わざわ
ざ湿度の高い映画にするのはかえって逆効果だと考えたのかもしれません。
それと同時に、「ただ感動するだけでなく、もっといろんなこと知ってくれよ
！」という監督の意図も見え隠れします。
盲導犬は血統が重要で、両親とも盲導犬でなければなかなか盲導犬にはなれな
いこと。絶対に叱ってはいけないというパピーウォーカーの存在。訓練所での
厳しい訓練。さらに、盲導犬や目の不自由な人の置かれた過酷な現実。
そういうものをきちんと理解して欲しいという気持で、こういう淡々としたタ
ッチの映画をつくったのではないでしょうか。
ただし、そういう視点でいえば、盲導犬や盲人に対する世間の態度などへの突
っ込みはやや甘い感じ。わざとらしい批判でなくても、もう少しそのあたりを
強調してもよかった気がします。
こんな感じで徹頭徹尾客観的に描いていくわけですが、さすがにラストは感動
です。淡々としたタッチが逆に感動を高め、「クイールの一生は幸せだったん
だなぁ〜」と実感させてくれます。
何よりこの映画のスゴイところは、犬が名実ともに主人公になっているところ
ですね。人間的な感情移入を排除して、犬の一生を等身大でありのままに描い
ている。こんな映画は前代未聞じゃないでしょうか。
だから、この映画の主役は小林薫でも、椎名桔平でもなく、クイール役のラフ
ィーなのです。
これは人間と犬の感動のドラマではなく、落ちこぼれ犬クイールのたくましい
「犬生」を描いた犬格の高いドラマなのだ。
その分ストレートな感動にはつながらないので、拍子抜けする人もいるでしょ
うが、そこはクイールの可愛さが十分にカバーしているので……。子犬のとき
なんて食べちゃいたいぐらいカワイイのぉ〜〜（おいおい、食うなよ！）。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
（超感動を期待すると裏切られますが、ジワジワとくる感動は得られます。犬
好き必見。盲導犬や目の不自由な方のことを知りたい人にもオススメ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年３月20日（土）シネマ・ロサにて。午後２時45分の回。