ロミオ・マスト・ダイ （ROMIO MUST DIE）
(2000年 アメリカ)(上映時間１時間55分)
監督：アンジェイ・バートコウィアク
出演：ジェット・リー、アリーヤ、ラッセル・ウォン、アイザイア・ワシント
ン、ヘンリー・オー、ジョン・キット・リー
＜ストーリー＞
オークランドで、黒人系ギャングとアジア系ギャングの抗争が続く中、アジア
系ギャングのボスの息子ポーが殺される。彼の死は、香港の刑務所に服役中の
実の兄ハンの耳にも届いた。脱獄してオークランドに戻った彼は、偶然出会っ
た黒人マフィアのボスの娘トリシュとともに、弟の死の真相をつきとめようと
動き出すが……。
＜レビュー＞
ははーん、これは劇画なんだな。(^_^)
オープニングのクラブでの格闘シーンを見て思った。
迫力満点の映像。バックに流れるラップと見事にシンクロしたスピード感。
そうか！ 細かい心理描写にとらわれたりしないで、このノリのよさに身を委
ねるのが正解なんだ。
続いて、ジェット・リー演じる主人公ハンが弟の死を知って、香港の刑務所か
ら脱獄するシーン。
これまたすごい迫力のマーシャルアーツ（東洋武術）アクションで、見応えタ
ップリ。彼にやられる刑務官の体が、Ｘ線写真みたいになっちゃうところなん
か、ホントに劇画そのもの。いやあ、カッ飛んでるなぁ。いいぞ、いいぞ、そ
の調子。 (^-^)//""パチパチ
（ちなみに、このＳＦＸは「Ｘ−ｒａｙバイオレンス」と呼ぶそーです。その
まんまやんけ！）
まあ、脱獄に至る細かな経緯は、どう考えたって現実にはあり得ないことばか
りだし、思わず「んなアホな！」って突っ込みを入れたくなるんだけど、そこ
はなんたって劇画ですからねぇ。多少の無理はしょうがないんだろうなぁー、
と自分を納得させときました。ハイ。
さてさて、脱獄したハンはアメリカへ渡る。
もちろん、弟を殺した犯人を突きとめるのだ！
まずは乗車拒否したタクシーを盗んでと……。
オイオイ、それじゃ、ただの犯罪者だろーが!!
(＾0＾)
ムダな殺しはしないらしいハン。あとになって、「僕は女は殴らない」とかい
うセリフもあるんだけど、自動車ドロボーじゃ説得力ないよなあ。
まあ、でもこれも劇画だから仕方ないのね、きっと。
盗んだタクシーにアリーヤ扮する黒人ギャングのボスの娘トリシュが乗りこん
で、２人が出会う重要なシーンなわけだしサ。
まあ、いいや、ここも見逃しといたろ、っと。
あれぇー、でも、このあたりから、だんだんダル〜い感じになってきたゾ。
(・_・？)
トリシュとの出会いも、あんまりインパクトないし。
黒人ギャングと中国人ギャング、それぞれのボス一家の親子の確執だとか、地
元のＮＦＬチーム誘致をめぐる話なんかが延々と続いて、劇画チックなシーン
がすっかり消えちゃいました。
地味な雰囲気がスクリーンをジワーッと覆っていく。
うーん、もうガマンできん。
オイ、いつになったら話が転がり出すんだ！
オープニングの緊迫感や劇画みたいなおもしろさはどこに行ったんだぁー！
と、観客わずか十数人の客席で、思わず絶叫しそうになっちゃいましたヨ。
てなわけで、この映画、ジェット・リーの肉体派アクションやカーチェイス、
銃撃戦なんかを中心とした劇画チックなおもしろさと、ギャングのボス一家を
中心にした人間ドラマ、それに「ロミオとジュリエット」の設定を借りてきた
ラブ・ロマンスをバランスよくミックスした、まさにイイとこ取りの映画にな
る……はずだったんだよなぁ、きっと。
でも、全然そうなってません。（＾０＾）
はっきりいって全部中途半端デス。
何よりも、人間ドラマがつまらない。家族をめぐるドラマも、ギャング同士の
抗争の背景も、ありふれた話だし、表面をなぞっているだけで突っ込みが足り
ない。だから、こちらに伝わるものがまったくない。
そういうシーンばかり続く前半はとってもツライ！ (>_<)
ところが、後半になって物語が急展開すると、爆発的におもしろくなる。
トリシュが兄を殺されてしまい、弟を殺されたハンとともに、事件の真相に迫
っていく。そして、事件の背景には、利権をめぐるギャング内部での勢力争い
があることがわかる。
その結果、物語は哀しく切ない結末へと進んでいく……。
ラップやヒップホップをバックに展開されるスリリングなシーンが、すごーく
心地よい世界へ連れていってくれる。
この快感よ、ずっと続け！
と願ったんだけれど、アレアレもうエンディング。それもごくありふれた予想
通りの展開で……。
こんなんだったら、中途半端に人間ドラマなんか入れないで、アクションと謎
解きに話を集中させちゃったほうがよかったんじゃないの？
ギャング内の勢力争いを背景にした土地買収をめぐる殺人事件。それをもうひ
とひねりすれば、２時間全部その追及に使っても十分にイケるネタになると思
うんだけどなァ。
早いうちからハンとトリシュに事件を追跡させて、その中で２人の結びつきが
強まれば、ラブ・ロマンスとしてもグッと盛り上がったはずなのに……。
ジェット・リーのアクションが活かしきれてない！
『マトリックス』みたいなブッ飛び方もない！
ないない尽くしで、ホントにもったいない！
とまあ、またしても文句ばっかりのレビューになってしまいましたが、アクシ
ョンシーンはさすがに見応えがあります。
ジェット・リーのＳＦＸに頼りすぎない肉体派アクションは、ハリウッドでも
十分に通用しそう。なにしろホンモノのマーシャルアーツのチャンピオンだも
の、年季が入ってます。
ただし、ジェット・リーさん、帽子を後ろ前にかぶって、ズボンをズリ下げた
ヒップホップ・ファッションを披露してるんだけど、これは全然似合ってませ
ん！ もう二度としないように。(＾0＾)
今回、ジェット・リーの相手役を務めたアリーヤは人気シンガー。この映画の
サントラでも何曲かボーカルを担当しています。
本作が女優デビューとは思えない達者な演技ぶりで、向こうの人はエンターテ
ィナーとしての基本がシッカリしていると、あらためて感心させられました。
これから、女優としても活躍するかもね。なんたって美人だしさ。（*^.^*）エ
ヘッ
ところで、問題なのはジェット・リーの今後。
今のところは、いかにもアメリカ人が期待するアジア人キャラをうまく演じて
いる。いつもニコニコ笑ってるみたいで、何を考えているかわからないけど、
ケンカになるとムチャクチャに強い……。
でも、ずっとそればっかりってわけにもいかんでしょう。
これから先、いったいどういう役をやるのかが、彼がハリウッドで成功するか
どうかのポイントじゃないかな。
まあ、これはほかのアジア系の俳優にも言えますね。工藤夕貴だって、今は完
全な厚化粧のアジア人キャラだけど、そればっかりじゃ難しいだろうし。
そういえば、いったいどこに消えたんだ？ ジョン・ローンは……。
《ぽちのおすすめ度》
★★＋1／2★
（アクション・シーンはおすすめできるけど、それだけのためにロードショー
料金を払うのはどんなもんでしょう？）
＜ぽち＞