サハラに舞う羽根(FOUR FEATHERS)
（2002年 アメリカ・イギリス）（上映時間２時間12分）
監督：シェカール・カプール
出演：ヒース・レジャー、ウェス・ベントリー、ケイト・ハドソン、ジャイモ
ン・ハンスウ
＊日比谷映画ほか東宝洋画系にて全国公開
ホームページ http://www.saharanimau.jp/saharanimau/intro.html
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＜ストーリー＞
19世紀のイギリス。将軍の父を持ち、自分もエリート士官としての道を歩んで
いたハリー（ヒース・レジャー）は、スーダンへの派兵を前に除隊を申し出る。
それによって仲間から"臆病者"を意味する白い羽根を送りつけられ、さらに
婚約者のエスネからも白い羽根を渡されてしまう。やがて、ハリーは突然人々
の前から姿を消し……。
＜レビュー＞
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砂漠の戦争映画か？ それとも愛と友情のドラマか？
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前作『エリザベス』が評判になったシェカール・カプール監督の最新作。原作
は1902年に出版されたＡ・Ｅ・Ｗ・メイスンの小説で、過去にも何度か映画化
されているそうです。いわゆる大河ロマンというやつで、スケールの大きな戦
場の映像と、３人の男女の愛と友情のドラマがポイントの映画。
舞台になるのは19世紀のイギリス。当時のイギリスは世界の４分の１を支配下
に治めていて、国と女王陛下のために戦うことが軍人にとって最高の名誉だっ
た。
そんな中、ヒース・レジャー演じるハリーの部隊に、「北アフリカの反乱軍を
鎮圧せよ！」という命令が下る。仲間たちは勇み立つが、エスネ（ケイト・ハ
ドソン）との結婚を控えたハリーは、戦いに意味を見出すことができずに除隊
を申し出る。
そんなハリーを３人の親友は非難し、「臆病者」のしるしである白い羽根を送
る。そして、婚約者エスネも世間体を考えて白い羽根を送る。
こうしてすべてを失ったハリーは、アフリカで親友たちが苦戦を強いられてい
ることを知り、４本の羽根を持ってアフリカに旅立つのだが……。
行きたくもない戦争に無理やり行かされるような世の中は嫌ですね。
この映画の主人公ハリーは、希望通りに除隊し戦争に行かなくて済んだものの、
仲間たちから非難され、婚約者からも冷たい目を向けられる。こりゃあ、や
っぱりツライですよねぇ〜。
そして、やがて、仲間たちの苦境を知って単身アフリカに渡るわけです。
ハリーがアフリカに渡るのは、仲間たちへの友情によるものですが、同時に自
分が「臆病者」とされた負い目も影響しています。
そうした心情を表現するのに、親友や婚約者から送られた白い羽根を象徴的に
使っているのがおもしろい。それに、セリフであれこれ語るのではなく、登場
人物の表情やしぐさで心情を語らせる演出がとっても効果的。
てことで、主人公の心情はそれなりに理解できるのですが、完全に納得できた
かというとちょっと疑問。
何しろ「戦場は怖い」「愛する人を置いてはいけない」と決意して除隊したの
だから、その決意を撤回するには、かなりの動機付けがないと納得できません。
「それなら除隊なんかしないで最初から行けよ！」と思ってしまいました。
主人公がすべてを失い、追い詰められていくようすをもう少しキッチリ描いて
くれたら、十分に納得できたと思うのですが……。
さて、こうしてアフリカに向かった主人公。舞台はアフリカの大地に移り、壮
大なる砂漠のスペクタクル・シーンが登場だッ！！！ (＾o＾)／
いやぁ〜、これはかなり見応えがありました。
砂漠の中での迫力ある戦闘シーンをはじめ、大自然をバックにしたスケールの
大きな映像が「これでもか、これでもか」と迫ってきます。 Ｗ（゜Ｏ゜）Ｗ
特に砂にまみれたイギリス軍と反乱軍との戦いの迫力はハンパではない。砂漠
の過酷さがダイレクトに伝わるスゴイ映像。現地の人々が敵味方に分かれて、
お互いに疑心暗鬼になりながら戦うようすもおもしろい。
毒薬を使って死んだように見せかけて脱走する、な〜んて「ロミオとジュリエ
ット」みたいなハラハラドキドキの展開まで用意されています。
うむ。「砂漠の戦争映画」として観ると、かなり満足できますゾ〜〜〜。
いやいや、別に戦争だけを描いたんじゃなくて、それを通して主人公と親友と
の友情、そして婚約者との愛を描いているんですヨ。
なかでも中心になるのが主人公ハリーと婚約者エスネ、そしてハリーの親友ジ
ャックとの三角関係。ハリーが行方不明になって、その間にジャックがエスネ
と仲良くなっちゃってさあ大変！ (ノ゜ο゜）ノ
この三角関係の描き方もなかなかうまい。特に戦争で盲目になったジャックが
ハリーの顔を手で触ってすべてを悟る……な〜んてところは、思わず「見事じ
ゃ！」と叫んでしまいました（恥ずかしいので心の中でですが）。キメ細かで
素晴らしい演出です。
でも、まあ砂漠のスペクタクルに比べれば、こういうドラマはかなり影が薄く
感じられますね。ていねいにつくられているけれど、インパクトは弱い。あり
がちな話なのでなおさらキビシイ感じ。
そんなこんなでトータルに観ると、愛と友情のドラマは脇役という印象。その
代わり砂漠のスペクタクル・シーンは見応えタップリ。ヒゲぼうぼうでヨレヨ
レになったヒース・レジャーの熱演もスゴかったです。彼が現地人にまぎれる
ところは、「そんなのミエミエじゃん！」て感じなのですが、あまりの変貌ぶ
りに、観ている間は気になりませんでした。
この映画のカプール監督はインド出身。そのせいか、主人公と現地の人との友
情を盛り込んで征服者の視点をできるだけ排除したり、除隊を決意する主人公
の行動を通して反戦メッセージを盛り込むなど、できるだけ現代性を盛り込も
うとする工夫が見られます。
そうした姿勢はとても評価できるのですが、それでもやっぱり中途半端な感じ
は否定できません。あれだけ戦争や植民地主義に疑問を提示しながら、途中か
ら主人公は「友情のため」だけでズンズン突き進んでいく。このへんはどうし
ても納得できないんだよね。 （~ヘ~;）
ハリーと違ってホンモノの臆病者のボクなので、なおさらあの猪突猛進ぶりは
理解できず。
ていうか、ボクなら最初からアフリカなんかに渡る勇気はありませんけどね。
「臆病者」のレッテルを貼られたまま、じーっと家に閉じこもってやるぜ！（
それじゃ、映画にならんだろうがッ！！）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
（砂漠のスペクタクル・シーンだけでも見応えはあります。「愛と友情のドラ
マ」というウリにこだわりすぎずにご覧下さいませ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2003年９月20日（土）テアトルダイヤにて。午後１時15分の回。