最愛の夏 (黒暗之光/Darkness and Light)



(1999年 台湾)(上映時間1時間42分)
監督:チャン・ツォーチ
出演:リー・カンイ、ファン・チイウェイ、ツァイ・ミンショウ、ホー・ホァ
ンジ


<ストーリー>
台北から港町の基隆に帰省中の17歳の少女カンイ(リー・カンイ)。盲目の両
親は古い住宅ビルで小さな按摩院を経営、カンイと知的障害のある弟アギィを
育てていた。ある日、カンイは、裏社会の「兄貴」であるソンを頼ってやって
きた18歳の少年アピンと出会い、恋をする。だが、2人の仲をヤクザの息子が
嫉妬、アピンはヤクザのイザコザに巻き込まれてしまう……。

<レビュー>
盲目の両親や知的障害者の弟を世話する、けな気な少女のひと夏の出来事を描
いた作品。
でも、これが本当に去年の東京国際映画祭グランプリなの? (・_・?)

うーん、まあ他の候補作をすべてチェックしたわけじゃないから何とも言えな
いんだけど、「それほどでは……」というのが正直な感想……。

確かに独特の雰囲気を持った素敵な映画だとは思う。
様々な困難を抱えつつも、それをことさら嘆き悲しむこともなく生きていく主
人公と家族の日常を、みずみずしいタッチで描き出している。
意表をついたカット割やカメラアングル。長いシーンの合間に入るごく短い断
片的なシーン。シーンとシーンの間に一瞬の暗黒がスクリーンを覆うという技
法(ちょっとしつこいけどネ)。
それらを通して、よりビビッドに、かといって激情に流れることなく淡々と表
現している。

ただねぇ、あまりにも静かなタッチで、これといった盛り上がりもないから、
ちょっとダルイ感じがするんだなぁ。
特に、大きな事件もなくて、家族の日常が静かに描かれる前半はその傾向が強
い。そのあたりで、退屈で睡魔に襲われちゃう人もいるんじゃないだろうか。
 (-_-)zzz

おまけに、主人公の家族関係に関する説明がほとんどゼロ。
父親は事故で失明し、その際に実母も死亡、現在の盲目の母が義母であること
が示唆される程度で、あとは「みなさん、勝手に想像してヨ」って感じ。不親
切なことこの上ナシ!
だいたい主人公は帰省中らしいが、それだってよ〜く注意していないとわから
ないゾ。
あらゆるムダなものをそぎとってしまい、客観的な描写に徹しようという監督
の狙いはわかるが、もう少し観客に親切にしてくれてもいいんじゃないか?

さて、後半になると、ようやくドラマは動き出す。
主人公の少女カンイが陰のある少年アピンに恋心を抱き、それがもとで悲劇が
起きる。そして、愛する父親の身にも大きな変化が……。

悲しい出来事が2つも立て続けに起きてしまうのだが、それを描くタッチはま
ったく変わらない。前半同様に淡々としたタッチで、ひたすら客観的な視点か
ら描いていく。
観ているうちに「もしかしたら、これってドキュメンタリー?」なんて思って
しまうほど静かで落ち着いた雰囲気。注意して観ていないと、あとになって、
「え! そんな事件があったの?」なんて驚く人もいるかも。

前半の退屈さと不可解さをどうにかしのいだ僕は、後半はまあそれなりに楽し
むことができました。
だが、どうしても納得できないのが、少年アピンがヤクザの抗争に巻き込まれ
るところ。カンイと仲良くなったことが、カンイに気のある少年とそのグルー
プの怒りをかってしまい、お互いのバックにいるヤクザまで絡んで両者の抗争
に発展……、という筋書きなのだが、ただの恋のサヤ当てぐらいで、ヤクザや
警察まで加わった大ゲンカに発展するものだろうか。リアリティーないんだよ
なぁ。台湾のヤクザ事情には詳しくないんで、よくわかんないんですけどネ。

それよりも、若さの暴走みたいな、もっと突発的な事件にしちゃったほうが、
青春の虚しさや切なさが強まってより感動できたと思う。

そして、ラストにも???
記念写真という冒頭の設定をラストにつなげたのはいいアイデアだと思う(ち
ょっとあざといけどサ)。
でも、死んだ人を生き返らせちゃうっていうのは、どんなもんでしょう?
やりすぎじゃないのかね?
たとえそれが現実ではなくて、主人公の頭の中の出来事だとしてもだヨ。
せっかく積み上げてきたそれまでの雰囲気をブチ壊してしまっているような気
がして仕方ないゾ。ここまで来たんだからサ、最後まで同じ雰囲気で行って欲
しかったよな。
いきなりファンタジーに大突入! だもん……。

というわけで、少女に起きたひと夏の出来事を、独特のタッチでみずみずしく
表現したこの作品。淡々とした描写に徹し、悲劇を強調せずにむしろポジティ
ブでさわやかな感動を呼び起こすあたり、なかなかの出来だと思う。

でもネ、切なさや温もりが胸をググーッと圧迫するようなことは、全然ありま
せんでした。
人によって受け取り方は違うでしょうが、少なくとも僕にとっては、あんまり
淡々としすぎていて、そのまんま「サーッ」と通り過ぎて行っちゃった映画で
す。
これで東京国際映画祭グランプリといわれても……。 (`ヘ´)

あ、でもねぇ。主演の少女リー・カンイはスゴ〜クいいです!
とにかく、スクリーンに登場しただけでホッとしちゃうんだから。
これぞ究極の「癒し系」かも。優香なんかメじゃない!?
その不思議な存在感に、完全にノックアウトされちゃいましたぁ〜。
(*^。^*)

明るくてハツラツとしたヒロインのキャラにピッタリなんだよね。
よく考えたら、この映画のみずみずしいタッチって、彼女の演技に負うところ
が大きいんじゃないかな。もちろん、それは監督のキャスティングの手腕なん
だけど。

特にいいのが、ラスト近くで窓から花火を見るときの表情。悲しいことがいっ
ぱいあったのに、それを表に出さずに笑顔を見せる。なんとも言えない魅力的
な笑顔。ラストは、この笑顔でしめくくっちゃったほうがよかったのに……。

これがデビュー作でまだ19歳の彼女。もちろん演技はまだまだだけど、この存
在感は貴重だと思う。このまま順調に伸びていけば、相当な女優さんになるの
では?

でも、芸能界は大変だからなぁ。有名な子役だっていつのまにか……。
「コラ! そのネタは前号の『バトルトーク』でやったでしょ!」(特別出演
<もも>より)
どーもスイマセン。今週はイマイチ頭がサエなくて、うまいオチが考えられな
かったんだよ〜ん。
m(__)m

《ぽちのおススメ度》
★★+1/2★
(1/2★はリー・カンイちゃんの笑顔にあげちゃう!)
                              <ぽち>


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