蝉しぐれ
| （2005年 日本）（上映時間２時間11分） 監督・脚本：黒土三男 出演：市川染五郎、木村佳乃、今田耕司、ふかわりょう、原田美枝子、緒形拳、 石田卓也、佐津川愛美、小倉久寛、根本りつ子、原沙知絵、大地康雄、緒形幹 太、田村亮、柄本明、加藤武、大滝秀治 ＊日劇2ほか東宝系にて全国公開 ホームページ http://www.semishigure.jp/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 東北小藩の下級武士である養父・牧助左衛門（緒形拳）の下で育った牧文四郎 （石田卓也／市川染五郎）は、隣家に住む幼馴染おふく（佐津川愛美／木村佳 乃）のことを何かと気にかけていた。そんなある日、父が藩内の派閥抗争に巻 き込まれ、切腹を言い渡されてしまう。やがて、成長した文四郎は、意外な形 でおふくと再開することになるのだが……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 山田洋次作品とはひと味違った形で、藤沢周平の世界を映画化 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 藤沢周平の小説が原作の映画といえば、山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』 『隠し剣 鬼の爪』が有名。この映画もまた藤沢周平の原作を脚本家の黒土三 男が映画化したもの。彼の原作に対する熱い思いから、生前の藤沢氏に交渉し て映画化の許可をもらい、15年かけて映画化したとか。 でも、実は以前に黒土さん自ら脚本を書いてテレビドラマ化されてるんですよ ね。それをチラチラ見ていたものだから、話の大筋はほとんどわかっちゃって ました。 で、どんな話かというと、山田監督の２作とかなり似ているのヨ。 東北の小藩でお家騒動が起きて、主人公の父親が切腹。主人公と母はたちまち 困窮生活を送るハメになる。これが前半の話。 後半は、主人公と幼馴染の女のコのその後を描きつつ、そこにまたしてもお家 騒動が絡んでくる展開。 やっぱり原作が同じ作者だから、山田作品と似た雰囲気が漂ってますよねぇ〜。 美しい自然をバックに、淡々と描かれる詩情豊かな世界。 それを通して、権力に翻弄される下級武士の哀しさ、男たちの固く結ばれた友 情、そして絶対にかなわぬ恋に身もだえする主人公と幼馴染、といったあたり が描き出されていきます。 胸にしみる素晴らしい映画だなぁ〜。 （⌒＿⌒） と言いたいところですが、実は正直なところボクは途中でダレちゃったんです。 それは山田作品やテレビドラマなどで、何度も同じ世界を見てしまったから。 ストーリーの展開も、原作こそ読んでいないものの、テレビドラマでだいたい 知っているからねぇ〜。 山田作品と大きく違うのは、山田作品が徹底したリアリズムにこたわり、殺陣 もジミながら迫力タップリだったのに対して、こちらはどっちかというとド派 手なチャンバラの殺陣。途中の剣術の試合のシーンなんて、「ありえねぇ〜 〜！」と思わず笑っちゃいました。 何だかこういう殺陣って、個人的には藤沢周平の世界に似合わない感じがする んですけど……。まあ、山田作品と同じことはしたくなかったんでしょうけど。 それに、後半の重要な部分を占める主人公・文四郎と幼馴染のおふくの切ない 恋も、イマイチ胸に伝わってくるものがなかったのです。それなりにきちんと 描かれているとは思うものの、胸にググーッと迫るほどのものはナシ。 （￣ヘ￣） オープニングからまもなく、幼いおふくが指をヘビにかまれて、それを文四郎 がなめてあげるんだけど、あそこはもっとドキドキするような鮮烈なシーンに して欲しかったな。あれはその後の２人の関係を決定づける重要なシーンだと 思うから。 表情やしぐさ、セリフの間で微妙な心情を伝えるところも、山田作品に比べれ ば物足りなさが感じられました。演出力はやっぱり山田監督のほうが上ですね。 まあ、それでも、藤沢周平の世界が好きな人は、けっこう満足できる映画で は？ 原作の雰囲気はそれなりにきちんと伝えていると思うし、悪い出来では ありません。山田作品より前に完成していたら、もっと感動できたかも。 文四郎を演じた市川染五郎の凛々しさ、おふくを演じた木村佳乃の美しさは特 筆もの。その２人の若き日を演じていた石田卓也、佐津川愛美の初々しさも魅 力がありました。脇役陣も充実。今田耕司、ふかわりょうの意外なキャスティ ングが成功していました。 ちなみに、クレジットに蛭子能収の名前が出てたんだけど、いったいどこに出 てたの？ 蛭子サンったら。 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆ （山田作品とはひと味違う見応え十分の時代劇。ただし、個人的には物足りな いところもアリ。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年10月９日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後１時30分の 回 |