戦争のはじめかた(BUFFALO SOLDIERS)
（2001年 イギリス・ドイツ）（上映時間１時間38分）
監督・脚本：グレゴール・ジョーダン
出演：ホアキン・フェニックス、アンナ・パキン、エド・ハリス、スコット・
グレン、エリザベス・マクガヴァン、マイケル・ペーニャ
＊シネカノン有楽町にて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.cqn.co.jp/sensou/
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＜ストーリー＞
1989年。西ドイツのセオドア・ルーズベルト米軍基地。補給部隊に所属するエ
ルウッド（ホアキン・フェニックス）は、物資の横流しやヘロイン密造などの悪
事に手を染めていたが、新しい上官リー曹長（スコット・グレン）に目をつけら
れる。そんな中、リー曹長の娘ロビン（アンナ・パキン）を見かけたエルウッド
は彼女をデートに誘う。それを知った曹長は、彼に過酷な仕打ちを用意するのだ
が……。
＜レビュー＞
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軍隊が戦争の道具であることを再確認させられるブラックな映画
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2001年9月にカナダのトロント映画祭でプレミア上映されて評判になったもの
の、９．11テロ、イラク戦争などの影響で何度も全米公開が延期になった問題作。
そう聞いて、軍隊を徹底的にコケにしたハチャメチャな映画（ロバート・アル
トマン監督の『Ｍ★Ａ★Ｓ★Ｈ』（1970）のような）かと思ったのだが、実際は
そういうブラックな笑いの要素を持ちつつも、かなりシリアスな雰囲気を持つ映
画でした。
といっても登場する話はかなりハチャメチャ。「戦争は地獄だが、平和は死ぬ
ほど退屈」という言葉通りに、東西冷戦終結を前にヒマでヒマでしょうがない西
ドイツに駐屯する米陸軍の連中が、お遊びのゲームで死人を出したり、ヤクの精
製、売買に手を染めたりと悪事の限りを尽くすというお話。
なかでもホアキン・フェニックス演じる主人公エルウッドは、バーマン大佐直
属の事務官という立場を利用して、物資の横流しやヘロイン密造はもちろん、そ
のバーマン大佐の奥さんと不倫までするメチャクチャぶり。
やがてある出来事を利用して、大量の兵器をかっさらったエルウッドはひと儲
けを企むのだが、新任の上官リー曹長に目をつけられてしまう……。
それにしてもスゴイよなぁ〜。いくらヒマだからって、そこまでするか？ と
いうほどのデタラメぶり。ホント、コイツらなに考えてんでしょう。(＾。^/)
エルウッドが武器をかっさらうところもスサマジイ。ヤクでハイになった兵士
たちが戦車に乗り、市街地を破壊しながら突き進み、ついに大事故を起こしてし
まうのだ。そりゃあ、もう不気味で恐ろしい光景です。
物語は、そうした兵士たちのデタラメぶりを背景に、エルウッドＶＳリー曹長
の対立をはじめ、曹長の娘とエルウッドとの恋愛、エド・ハリス演じるバーマン
大佐の出世運動（出世のためライバルと軍事演習までしてしまう）などの様子が
描かれます。
途中でナゾの若い兵士が現れ、奇妙な事件が続発するなど、サスペンス的な要
素も織り交ぜつつ、平和時の軍隊の乱れた姿が赤裸々に映し出されています。
それを通して伝わってくるのは、軍隊の真の姿。結局のところ軍隊なんて、戦
争をするための道具なわけで、それがないとなると、ああいうふうにワケのわか
らないことになっちゃうんでしょうねぇ〜。
ラストでは、意外な真実が明らかになり、エルウッドＶＳリー曹長の対立が、
ついに最高潮に達します。それはまさに戦争。そうです。本物の戦争がなくても、
結局軍隊は何かしらの戦争をしてしまうワケです。なぜなら戦争こそが軍隊の唯
一の役割だから。それがよーく伝わってくる映画です。
真正面から戦争批判をしているわけではなく、斜に構えたところから平時の軍
隊のリアルな姿を描いたことで、かえって鋭いメッセージが込められた映画にな
ったと思います。
まあ、個人的好みから言えば。もう少し笑いの要素が強くてもよかった気はす
るのですが……。
主演のホアキン・フェニックスのワルぶりは、なかなか堂に入ったもの。それ
と対決するリー曹長役のスコット・グレンのハンパてないキレ方もかなりコワか
ったです。エド・ハリス、アンナ・パキンも存在感のある演技を披露。
それにしても、この程度の映画が公開延期されるなんて……。そこまでして軍
隊を神聖視したかったのだろうか。アメリカって国はまったく。
でも、日本も偉そうなことはいえないかも。なにしろ、自衛隊をネタにしたこ
ういう映画って聞いたことないですもんね。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
（笑いながら軍隊のリアルな姿が見えてくる映画。今だからこそよけいに観る
価値のある映画かも。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年12月22日（水）シネカノン有楽町にて。午後４時50分の回。