シャドウ・オブ・ヴァンパイア (SHADOW OF THE VAMPIRE)
（2000年 アメリカ）（上映時間１時間33分）
監督：Ｅ・エリアス・マーハイジ
出演：ジョン・マルコヴィッチ、ウィレム・デフォー、ウド・キアー、キャサ
リン・マコーマック
＊シネ・アミューズ イースト／ウエストにて公開
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＜ストーリー＞
映画監督Ｆ．Ｗ．ムルナウ（ジョン・マルコヴイッチ）は新作の吸血鬼映画の
撮影をスタートさせる。吸血鬼ノスフェラトゥ役に起用されたのはマックス・
シュレック（ウィレム・デフォー）。彼は、メイクのまま現場に現れ、しかも
撮影は夜に行われた。不審がるクルーたち。それもそのはず実はシュレックは
本物の吸血鬼だったのだ……。
＜レビュー＞
『ザ・シークレット・サービス』（1993年）、『仮面の男』（1988年）などで
の個性的な脇役が光るジョン・マルコヴィッチ。（最近では『マルコヴィッチ
の穴』（1999年）の本人役でもおなじみですねぇ〜。）
そして、『イングリッシュ・ペイシェント』（1996年）、『スピード２』（19
97年）などでの怪演が見事なウィレム・デフォー。
この２人の演技派俳優の共演とくれば、これはもう観るしかないでしょう！
(^O^)/
しかも、この映画、とってもユニークで大胆な発想から生まれている。
吸血鬼映画の古典で、ドイツ・ロマン派的雰囲気を持つ傑作といわれるサイレ
ント映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』（1922年）。
「実は、そこで吸血鬼役を演じた俳優マックス・シュレックは、ホンモノの吸
血鬼だった！」というのがこの映画の設定。 (
゜_゜;)
ただし、この設定、ユニークなのは確かだが、一歩間違えばただのおバカ映画
にもなりかねない。
それをギリギリのところで踏みとどまらせているのは、やっぱり２人の演技の
おかげでしょう。 (#^.^#)
ジョン・マルコヴィッチ演じるのは、映画を科学と考え、徹底的に自分の世界
を追求するストイックな映画監督ムルナウ。狂気と正気の間をさまよう鬼気迫
る演技が見もの。「コイツなら本当に吸血鬼を起用するかも……」と思わせて
しまう迫力がある。
一方、ウィレム・デフォー演じるのは、終了後、主演女優グレタを手に入れる
約束をして、映画出演する吸血鬼。そのなりきりぶりはハンパじゃない。リア
ルなメイクも手伝ってひたすら不気味でコワイ。特に目の演技が巧みで、観て
いるうちに背筋がゾクゾク。こういうのを正真正銘の怪演っていうんでしょう
ねぇ〜。まさか、彼ったら、ホンモノの吸血鬼!? (＾。^/)
物語は、映画の撮影スケジュールに沿って進んでいく。
そこでいい味を出しているのが、アンティークなモノクロ映画の映像。その微
妙なタッチが、独特の不気味さを醸し出す。
マルコヴィッチとデフォーの対決場面も、迫力満点で見応え十分。
笑いどころもあって、吸血鬼が「早く血を吸いたい〜！」という欲求を必死で
抑えるところや、わがままスターみたいに船での撮影や移動を拒むシーンなど
では思わずクスクス。 (＾。^/)
やがて、吸血鬼役の俳優シュレックの正体が明らかになり、周囲の人々の恐怖
が頂点に達する。
残りわずかとなった撮影はどうなるのか？
そして、シュレックに狙われたグレタの運命は？ (？_？)
ラストはかなりアナーキーな終わり方。
「おいおい！ そこまでやるか？」ってな感じもしますが、ムルナウ監督のキ
レ方から考えて、やっぱりああいう結末しかないんでしょう。
ヘタな小細工をして小さくまとめるよりも、こっちの方が納得できると思う。
さてさて結論としては、とにかくウィレム・デフォーとジョン・マルコヴィッ
チがいなければ成立しなかった映画です。
物語自体に評価すべき点があるわけじゃないんですけどね。最初の発想だけで
突っ走ってて、脚本はあんまり練り上げられていない。吸血鬼の行動の動機付
けといった細部もかなり甘い。ドラマ的には見るべきところはあんまりありま
せん。 (´ヘ｀;)
それでも、２人の演技で最後まで引っ張っていってしまうんだからスゴイ。そ
の素晴らしい演技を堪能するだけでも、観る価値はあるんじゃないかな？
それにしても、いくら80年前の映画だといっても、ムルナウ監督にしろ、シュ
レックにしろ実在の人物。
それをこんな設定で描いちゃっていいんでしょうか？ 日本だったら、各方面
からクレームが来そうな気がするんですけど……。
なんたって、ジャンキーな映画監督と吸血鬼ですもん。こんな描き方をされて
、２人ともあの世で大激怒!? いやいや意外に喜んでたりして……。(＾0＾)
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（ちなみに、プロデュースは俳優のニコラス・ケイジ。こういう映画の製作に
携わるなんて、なかなかナイスセンスですねぇ。）
＜ぽち＞