上海家族(SHANGHAI WOMEN)
（2002年 中国）（上映時間１時間36分）
監督：ポン・シャオレン
出演：チョウ・ウェンチン、リュイ・リーピン、ソン・ハイイン、チェン・チ
ェンヤオ、リュウ・ジャーチェン
＊岩波ホールにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.eigafan.com/new_info/review/sk/
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＜ストーリー＞
15歳の少女アーシャ（チョウ・ウェンチン）は両親が離婚したため、母親（リ
ュイ・リーピン）とともに祖母（チェン・チェンヤオ）の家に転がり込む。だ
が、祖母はいい顔をせず、２人は肩身の狭い思いをする。やがて母はアーシャ
のために、子連れの男と再婚。だが、夫婦仲は険悪になり、母娘はまたも家を
飛び出し再び祖母の家に戻る。そんな中アーシャの父が母に復縁を持ちかけて
くるのだが……。
＜レビュー＞
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母と娘の自立へのドラマ。被写体に対する距離感が絶妙
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チェン・カイコーやチャン・イーモウなどと同世代の女性監督ポン・シャオレ
ンの作品。早い話が、母と娘の自立までを描いたドラマです。
夫の浮気で夫婦が離婚して、母と娘が実家に行くものの歓迎されない。しょう
がないから生活のために母は子連れ男と再婚。ところが今度の夫はドケチでま
た仲違い。実家に戻ったものの、このままでいるわけにもいかず……、てなス
トーリーです。
この映画は語り口がいいんですよねぇ〜。被写体との距離感が絶妙なの。主人
公の母娘と一定の距離を保ちながら、けっして激情に溺れることなく淡々と描
いていくんです。不幸の大安売りみたいな安易な物語は、断固拒否しています。
この監督さん、どうやらドキュメンタリーも手がけているようで、そういう雰
囲気が漂う演出。ところどころで出てくる上海の街の風景にも、ドキュメンタ
リー的な味わいがあります。
ストレートに胸を揺さぶるものはない代わりに、静かに伝わってくるものがあ
ります。それはもちろん母と娘の愛情。ただし、けっしてベタベタしたもので
はなく、むしろ両者はケンカしているほうが多い。母親は「娘のために」と思
って行動するのだが、それが逆に娘にはおもしろくない。両者の感情のスレ違
いがなんとももどかしい。 (~ヘ~;)
そこに祖母が絡んできます。この人も「娘のために」という思いは強いのだが、
それが結果的に娘に対する非難につながったりする。
このあたりは親子三代の考え方や生き方の違いが、それぞれの言動に反映して
いて、ある種の世代間のギャップみたいなものを感じさせます。
祖母の世代には女性が男性に頼るのは当たり前。母の世代はそうでない生き方
があると知っていても現実は厳しい。しかし、その娘の世代になるとそういう
生き方は嫌悪の対象でしかないわけですヨ。
三世代の母娘がみんないいんですけどね。特に15歳の少女アーシャが素晴らし
い！ 演じるチョウ・ウェンチンは新人だそうですが、口が達者で気が強くて、
そして繊細な少女の気持をうまく表現しています。見た目どこにでもいるフ
ツーのコなんだけど、スゴク存在感を感じさせるんだなぁ〜。 (*^。^*)
こうして最初の夫と別れ、２人目の夫ともうまくいかず、また実家に戻った母
と娘に、最初の夫から舞い込む復縁話。さて、２人はどうするのか？？？
てところで、ラストになるんですが、ここの母と娘の会話がとっても印象的で
す。「この娘にして、この母あり」という感じで、ポジティブでホッとする結
末でした。 (^。^;)
全体を通して観ると、ドラマチックなことをあえて排して、淡々とドキュメン
タリータッチで母と娘の自立への道を描いたことで、２人のたくましい生き方
に素直に共感できる映画になっています。あと味がとっても爽やか。
ただし、あまりにも起伏がなく、同じペースで進む映画なので、人によっては
飽きてしまうかもしれません（ボクはそうでもなかったけどネ）。特に最近の
日本の観客は泣きたい人が多いようなので、そういう人にとってはきっとツラ
イでしょう。
構成にもうひとヒネリ工夫があったり、どこか一ヶ所ぐらいはもっと情感を込
めたシーンがあったほうが、観客にはウケやすかったかもしれません。
でも、この監督さんは、そういうことはあえてしませんでした。年齢的にはチ
ェン・カイコーやチャン・イーモウといった第五世代の人ですが、そのあたり
に、もっと若い監督に近い大胆かつ柔軟な感性を感じました。
さて、この映画を観た女性は、男に頼る生き方がバカバカしくなるかもしれま
せぬ。もっとも、ボクなんか頼られたら、そのままブクブクと海底に沈んでい
きますが……。 ○o。.(>_<)
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
（ストレートな感動はありませんが、母と娘のそれぞれの生き方が伝わってき
て、爽やかになれるはず。余韻の残る映画です。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年５月26日（水）岩波ホールにて。午後６時50分の回。