シャイン (SHINE)
(1995年 オーストラリア)
監督・原案：スコット・ヒックス
出演：ジェフリー・ラッシュ、ノア・テイラー、アレックス・ラファロウィッ
ツ、アーミン・ミューラー・スタール、リン・レッドグレーヴ
＊【ＶＩＤＥＯ】【ＬＤ】【ＤＶＤ】パイオニアＬＤＣより発売
＜ストーリー＞
小さな頃から、天才ピアニストとしての才能を発揮したデビッド・ヘルフゴッ
ト。父親からの過剰な愛を受けて腕を磨くが、やがて父親の反対を押し切りロ
ンドンへ留学。指導教授にも恵まれるが、あまりにも繊細な神経が災いして精
神に異常をきたしてしまう。それから、10数年後、精神病院を出た彼は、バー
で演奏を始め人気者になるが……。
＜レビュー＞
オーストラリア出身の実在の天才ピアニスト、デビッド・ヘルフゴットの半生
をモデルにした映画。
実在の人物をモデルにした映画は、どうしても本人を神格化して描いてしまう
もの。特に挫折にもめげず、苦難の末に復活を果たす……なんてパターンは、
これはもう完全な偉人伝だ。実は、この映画も多少そうなりかけているのだが、
それをうまくコントロールして、リアリティーのある話に仕上げている。
天才少年ピアニスト、父の厳格な教育、父への反発、精神の異常、ピアニスト
としての挫折、愛、そして復活……。
感動の物語であることは間違いない。でも、けっして「泣かせます！」って感
じの描き方はしていない。素材と適度に距離を置きながら、時にはユーモラス
に描くことで、リアリティーを高め、観客を引き込んでいく。
天才ピアニストが狂気へと足を踏み入れていく。それはひどく残酷だけど、普
通の人間にとってリアリティーのある話じゃない。芸術家の狂気なんて、本当
のところは誰にも理解できないはず。
でも、そこに至る父親との葛藤を丹念に描いているから、その狂気が身近なも
のとして感じられる。
主人公と年上の女性とのロマンスもそうだ。現実にはありそうもないことなの
に、（といっても、これも実話なんだが）二人の心情をきちんと描いているか
ら、「そんなのウッソだぁー」とはならない。
この手の映画の多くは、実話なのをいいことに、どう考えても納得できないよ
うな描き方を平気でしている。
「だってホントの話なんだからしょうがないでしょ」。そんな製作者の声が聞
こえてきそうだ。でも、この作品はそんな強がりを言わずに、観客が納得でき
るようにていねいに描いている。だから、好感が持てる。
だが、しかし！
その大部分は、アカデミー主演男優賞を獲得したジェフリー・ラッシュの驚異
的ともいえる演技力と存在感。そして、それを取り巻く達者な役者たちの力が
大きいのではないか。
おまけに、公開当時、日本にも来たデビッド・ヘルフゴット本人の映画以上に
強烈な個性にも救われている。あの人をモデルにしてつまらない映画を作った
ら、これはよっぽど才能がないってことかも……。
《ぽちのおすすめ度》
★★★★
＜ぽち＞