死に花
（2004年 日本）（上映時間２時間）
監督・脚本：犬童一心
出演：山崎努、青島幸男、谷啓、長門勇、藤岡琢也、宇津井健、星野真理、松
原智恵子、森繁久彌
＊丸の内東映ほか東映系にて全国公開
ホームページ http://shinibana.jp/
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＜ストーリー＞
東京郊外にある高級老人ホームに住む源田（藤岡琢也）の死後、同じホームに
住む元映画プロデューサー菊島（山崎努）のもとに、「死に花」という題をつ
けたノートが1冊残される。そこには、銀行の地下金庫に向けて穴を掘り、金庫
にある17億円を強奪する計画が書かれていた…。それを知った穴池（青島幸男
）、伊能（宇津井健）、庄司（谷啓）たちは、菊島とともに計画を実行しよう
とするのだが……。
＜レビュー＞
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老人になるってなんてステキなこと！ 犬童監督によるポジティブな老人讃歌
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別にジジババ映画のファンというわけではありません（笑）。
ボクが2003年の邦画ベスト１にあげた『ジョゼと虎と魚たち』の犬童一心監督
の最新作というので、とにかく観ておこうと足を運んだのだ。
身障者と健常者の愛の形を描いた『ジョゼ〜』とは一転して、これは老人たち
によるシルバーエンタティメント映画。前作と素材はかなり違うものの、独特
のユーモア感覚と余韻の残る描写は共通するものがあります。
ストーリーそのものはそんなにビックリするような話ではありません。
超高級老人ホームに住む源田という老人が亡くなり、仲間の菊島のもとに、「
死に花」という題をつけたノートが1冊残される。そこには、銀行の地下金庫に
向けて穴を掘り、金庫にある金を強奪する計画が書かれていた。それを知った
他の仲間たちは「死ぬ前にもうひと花咲かせよう！」と計画を実行に移そうと
する……。
何がスゴイって、登場する老人たちが元気すぎ！ (＾o＾)／
体を鍛えるのが趣味の菊島、若い子にちょっかいばかり出すエッチな穴池、リ
ストラされた銀行に恨みを持つ伊能、ホラ吹きの庄司など、みんなものすごい
パワーの持ち主。
「この人たちなら、銀行強盗ぐらいやっちゃうよなぁ〜」と思わず納得してし
まいます。(^-^)
「人生に疲れた老人が、何かのきっかけで元気を取り戻し……」てな話はよく
ありますが、この人たちときたら最初から元気なんだもん。しかも、強盗計画
が進むうちに、ますます元気になってしまう。
「死ぬ前にもうひと花咲かせよう」な〜んていうと、どこかに老いに対する哀
れみの念があるものですが、この映画にはそんなもんありません。老人たちの
生態を等身大で生き生きと描き出しているんです。
そういえば、前作『ジョゼ〜』でも、重い障害を持って歩けない主人公の少女
に対して、哀れみの視点を持たず、等身大で軽やかに描き出していましたっけ。
それが主人公をキラキラ輝かせ、観客の心を奪ってしまう。これって、犬童監
督の見事なワザ。 (*^_^*)
もちろん老いには大変なこともあります。過去の傷あとだとか、間近に迫りつ
つある死だとか、痴呆だとか。でも、それだってちっとも暗い描き方をしてい
ません。
映画の中に出てくる源田の「人生は楽しむためのもの。苦しみは味付け程度に
少々」というセリフそのままに、徹底して前向きに明るく描いています。
山崎努演じる菊島が、松原智恵子演じる鈴子と仲良くなって、ベッドインしち
ゃうころがあるんですけどね。それがなかなかうまくいかないんです。こうい
う高齢者のセックスライフのトラブルなんて、物悲しいものが漂ったりするけ
れど、犬童監督はそれさえも深刻ぶらずに描いてしまいます。
キャラの描き分け方も素晴らしい。 (^-^)//""パチパチ
事件の中心となる４人の老人はもちろん、それに協力する仲間たちもすべてき
ちんと描かれている。
まあ、役者さんもスゴイ顔ぶれですからねぇ〜。
山崎努、青島幸男、谷啓、宇津井健、長門勇、藤岡琢也、松原智恵子と、いず
れも個性的で情感の残る演技。友情出演の森繁久弥が、セリフ１個しかないの
に存在感を見せているのもさすが。ホームの職員役の星野真里チャンも、とっ
てもいい雰囲気です。
うーん、これは異色の老人讃歌ですヨ。老人たちのパワーがスクリーンにみな
ぎり、ワイルドでカッコよく、ときにはアナーキーな香りさえ漂ってしまう。
クライマックスは破天荒すぎる暴走ぶり。でも、それさえも老人パワーに引っ
張られてシラけることもない。さらに、ラストではちょっぴりホロっとさせて
くれるところも……。
なんだか元気すぎる老人たちを観ているうちに、自分も早く老人になりたくな
っちゃいました。老人ってなんて素晴らしい！ (*^。^*)
と思わせてしまった犬童監督の手腕はかなりのもの。今後も要注目の監督です。
わりと年配の観客が多いこの映画ですが、若い人にもけっこう楽しいはず。た
だし、これを観て、早くジジババになりたくなっても知〜〜〜〜らないよっと。
(＾0＾)
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（人生の輝きを巧みに切り取る犬童監督の面目躍如たる映画。老人パワーに脱
帽です。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年５月８日（土）池袋シネマサンシャインにて。午後１時の回。