死ぬまでにしたい10のこと(MY LIFE WITHOUT ME)
（2002年 スペイン・カナダ）（上映時間1時間46分）
監督：イザベル・コヘット
出演：サラ・ポーリー、スコット・スピードマン、レオノール・ワトリング、
アマンダ・プラマー、デボラ・ハリー
＊ヴァージンシネマズ六本木ヒルズほかにて全国公開
ホームページ http://www.shinumade10.jp/
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＜ストーリー＞
失業中の夫ドン（スコット・スピードマン）と２人の娘とともに貧しいながら
も幸せに暮らしていたアン（サラ・ポーリー）は、ある日、病院であと２ヶ月
の命と宣告される。アンは病気のことをだれにも告げずに「死ぬまでにやりた
いこと」リストを作って実行するが……。
＜レビュー＞
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死のドラマではなく、人生を生き直した女性の"生"のドラマ
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自分が余命わずかと悟った女性が、死ぬまでにやりたいことを決めて実行して
いく……。
うぅ〜〜〜〜、ストーリーを聞いただけで涙が出てきそうな映画だわ。主人公
がかわいそうで、たまりませんもの。 (T^T)
な〜んて考えた皆さん残念でした。皆さんが思うほど泣ける話ではありません
。ストレートな感動物語にしようと思えば、いくらでもそうできるこの素材。
ところが、女性監督イザヘル・コヘットは、あえてそれを避けまくっている。
冒頭の主人公アンの独白がかぶる雨のシーンからして、突き放したようなさめ
たタッチ。とても死の宣告を受けた直後とは思えない描き方です。
こうしたタッチは最後まで徹底しています。ときにはドキュメンタリー風な描
写を織り交ぜながら、淡々と、対象から距離を置いて、主人公の日常を描いて
いきます。
盛り上がりそうなところは、いくらでも出てくるんですよね。主人公が死の宣
告を受ける場面をはじめ、夫とは別の男性と恋に落ちるところ、刑務所にいる
父親に会いに行く場面とか。でも、それを途中でブツッと切ったりして、あえ
てスカしているんです。
ドラマチックなところはほとんどナシ。主人公が泣き叫ぶところも見せず、激
情を完全に排除しています。
その徹底ぶりときたら、まるで「安っぽい涙なんかいらないわ！」と観客の安
易な感情移入を拒否するかのようです。 （￣＾￣）
なので、直線的にグググ〜っと涙を流して感動したい方には、物足りないドラ
マに思えるかもしれません。
その代わり、人生についてより深く考えさせられるドラマとしては出色の出来。
ていねいに、主人公の日常描写を積み重ねていくことで、深みのある良質な
人間ドラマに仕上げています。
それは死の宣告というきっかけによって、マジメに人生を考え直して、それま
での生き方を少し変えてみた女性のドラマ。つまり、これは"死"のドラマでは
なく、むしろ"生"のドラマなのだと思います。
しかも、そこには「愛」「家族」「幸福」といった様々な要素が散りばめられ
ている。
だからこそ、観ている人が自分自身の人生を投影させて、あれこれと考えさせ
られてしまう深〜いドラマになっているワケです。それを通して、ジンワリと
した感動も伝わってくる。いわば感動の時間差攻撃ですね。 (~ヘ~;)
もしも、涙ウルウルのドラマに仕上げていたら、こういう深みは出なかったに
違いありません。
ただし、ちょっと中途半端なシーンもあり。特に主人公アンの空想シーンは、
あんまり効果的に使われているとは思えません。スーパーでのダンスシーンな
ど、使い方によってはもっとおもしろくなったと思うのですが……。
絵的には、家族で海に遊びに行くシーンなんかも入れて欲しかったな。
役者では、なんといっても、主人公アン役のサラ・ポーリーのみずみずしい演
技が光る。また、その夫、父、不倫相手、同僚、主治医、隣人など、脇役にも
きちんとした存在感を持たせているところは見事。
なかでも、最近は本業のロックバンド「ブロンディ」で活躍中のデボラ・ハリ
ーの主人公の母役は絶品でした。ちょっとキレた陰のある女をやらせたらバツ
グン。
アンと夫との出会いがニルヴァーナのライヴという設定も、ロック・ファンの
ボクにはうれしかったところ。
ストレートな感動物語を期待すると裏切られそうですが、それ以上により深く
人生について考えさせられる人間ドラマだと思います。ゴタゴタ引っ張らない
あっさりとしたラストにも好感が持てます。
こんなにベタベタな素材をサラッと描くこの勇気。まさに男気、じゃなくて女
気タップリのコヘット監督なのでした。 (^-^)
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（剛速球の感動を味わい方にはオススメできませんが、深くジンワリとくる感
動を体験したい方にはオススメ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2003年11月20日（木）シネ・リーブル池袋にて。午後12時15分の回。