親切なクムジャさん(SYMPATHY FOR LADY VENGEANCE)
(2005年 韓国)(上映時間1時間54分) 監督:パク・チャヌク 出演:イ・ヨンエ、チェ・ミンシク、クォン・イェヨン、オ・ダルス、キム・ シフ、イ・スンシン、キム・ブソン、ラ・ミラン、ソ・ヨンジュ *シネマスクエアとうきゅうほかにて全国公開 ホームページ http://kumuja-san.jp/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ <ストーリー> 身代金誘拐殺人事件の犯人として逮捕され、無実の罪で刑務所に入れられたク ムジャ(イ・ヨンエ)が13年間の刑期を終えて出所する。服役中誰に対しても 微笑を絶やさず「親切なクムジャさん」と呼ばれるようになった彼女。だが、 出所と同時にその表情を一変させ、自分を陥れた憎いペクに復讐するために、 ある計画を実行するのだった……。 <レビュー> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 すさまじい怨念が煮えたぎる。哀しく、美しいパク・チャヌクの復讐劇 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』に続くパク・チャヌク監督の復讐 三部作の最終作。「復讐をネタに3本も映画を撮るとは何というエネル ギー!」となかばあきれつつも、その映像美とケタはずれのパワーに圧倒され て、今度もつい映画館へ足を運んでしまったのでした。 それから1時間54分後、ボクはしばらく椅子から立ち上がれませんでした。何だ かスゴイものを観てしまったなぁ〜。 基本的なテイストは『オールド・ボーイ』と同じ。しかし、それがより純化さ れて、もはやアートの域にまで達しているのだ。こんな映画、今まであっただ ろうか????? ( ̄へ ̄|||) ストーリーはごくシンプル。13年間も無実の罪で刑務所に入っていた主人公ク ムジャが、出所後にかつての刑務所仲間の協力のもと、復讐に乗り出すという もの。 まず目を見張るのがあまりにも鮮烈な映像美です。オープニングの出所シーン から一つも陳腐なシーンがありません。クムジャの空想や夢の世界など非現実 的でブッ飛んだ映像を混ぜつつ、絵画のようなシーンが次々に繰り出されます。 前半は出所したクムジャが復讐の準備を進める場面と同時に、かつての刑務所 生活の様子が回想されます。誰にも親切で優しいクムジャ。だが、すでにその 頃から彼女の心のうちでは、ある計画が立てられていた……。 イ・ヨンエ扮するクムジャの変貌ぶりが印象的。服役中の天使のような顔が出 所と同時に一変。ただし、復讐鬼の顔をストレートに出すのではなく、淡々と 計画を進める中で、静かな復讐の炎をメラメラと燃やすのです。それがかえっ て恐ろしい……。 (≧σ≦) その後、クムジャは外国に養子に出されていた自分の娘と再会します。そこで は優しい母の顔と、子供と離れ離れにさせられた哀しみ、そしてそんな運命に 直面させたアイツへの憎しみが同時に表現されます。子連れのクムジャは着々 と復讐計画を進行。 復讐計画が進むにつれて、破格のパワーがスクリーンを覆い、グイグイと引き ずり込まれてしまいました。何なんだ? こ、このパワーは……。 基本的にはシリアスなドラマなのに、ところどころにユーモアが顔を出すのも、 いかにもチャヌク監督らしいところ。壮絶なシーンの中にさえ笑いがはさみこ まれ、それが絶妙なアクセントになっています。 そして、ついにクムジャの復讐劇はクライマックスを迎えます。彼女を陥れた アイツとの直接対決が展開されます。「すさまじい怨念が爆発!」と言いたい ところですが、直接的に敵をいたぶる場面はあんまり見せません。しかも、そ の後で、クムジャの娘をうまいこと絡めてくるんですよねぇ〜。 そこでのクムジャは、あくまでも冷徹。それがまるでグツグツと煮えたぎるマ グマみたいなコワさをかもし出します。彼女の底知れぬ怨念が漂い、このあた りからは一瞬もスクリーンから目が離せなくなってしまいました。(゜◇゜;) そしてそして、なんと、復讐はそこで終わりではなく、その後にある仕掛けが 用意されているんです。それによって、単純な復讐劇が重たいテーマを持った 人間の根源に迫る物語へと深化するのだ!!! 人間の復讐心とは? 復讐をしたら満足できるのか? そもそも復讐ってな に? というようにいろんなことを考えさせる展開。「殺人犯なんかブッ殺し ちまえ」とか「復讐なんて野蛮!」とか、そういうことを簡単に口に出せない ようなヘビィー級のメガトンパンチをくらわされます。スゴイ! スゴすぎる ぜ! パク・チャヌク。 ラストは、美しく、そして哀しく、魂に染み入るような神々しいシーンです。 テレビドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」とはまったく違う役、それもいく つもの顔を見せる難しい役をこなしたイ・ヨンエに大拍手! 『オールド・ボーイ』で復讐する側だったチェ・ミンシクが正反対の役で登場 しているのも興味深いところ。 復讐モノで3本も映画を撮るなんて、と思ったボクがバカでした。3本目にし てここまでの作品をつくるなんて……。『復讐者に憐れみを』や『オールド・ ボーイ』ほどストレートなコワさや壮絶さはないものの、その分逆にジワジワ くる恐ろしさがある映画です。そして最後に哀しみも。最終作が最高作でした。 ホントに。 《ぽちのオススメ度》 ★★★★☆ (これだけいろんな意味ですさまじい映画はありません。KOされる覚悟でお 出かけを。ただし、単純なエンタメ映画や泣かせの映画だと思って観にいくと 期待を裏切られるのでご注意ください。特に韓流ドラマファンの方は……。) <ぽち> 〔鑑賞データ〕 2005年11月12日(土)池袋シネマサンシャインにて。午後1時20分の回。 |