スペース・カウボーイ (ＳＰＡＣＥ ＣＯＷＢＯＹＳ)
(2000年 アメリカ)(上映時間２時間10分)
監督・出演：クリント・イーストウッド
出演：トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガ
ーナー
＜ストーリー＞
1958年、アメリカ空軍きっての優秀なテストパイロット・チーム「チーム・ダ
イダロス」の４人の男たちは、アメリカ初の宇宙飛行士として大気圏外のテス
ト飛行を目指していた。だが、土壇場になってプロジェクトの権限が空軍から
ＮＡＳＡに移動。彼らは宇宙飛行士の座を一匹のチンパンジーに奪われてしま
う。それから40年後、ダイダロスのメンバーだったフランク・コービン
(クリ
ント・イーストウッド) のもとに、ＮＡＳＡのスタッフが訪ねて来る。ロシア
の通信衛星アイコンのシステムが故障し、このままでは地球に落下してくる可
能性が大きいという。それを修理できるのは、かつて同じシステムを持つ人工
衛星を設計したコービンしかいない。コービンはかつての仲間、ホーク・ホー
キンス (トミー・リー・ジョーンズ) 、ジェリー・オニール(ドナルド・サザー
ランド)、タンク・サリバン (ジェイムズ・ガーナー)
を集め、再び宇宙を目指
そうとするが……。
＜レビュー＞
★ぽち：「Ｃｉｎｅｍａの王国」編集発行人兼ライター
☆もも：「Ｃｉｎｅｍａの王国」ライター
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今まで演じてきた役を彷彿とさせるキャラに思わずニヤリ
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★ぽち：いやあ、元気なオジイチャンたちです。 (*^。^*)
☆もも：オジイチャンなんて失礼だヨ。まだ現役バリバリなんだから。せめて
「オヤジ」と呼んであげて。それにしても、年齢を逆手にとったアイ
デアがいいよね。日本にはこういう年配の人を主人公にする映画自体
ない。
★ぽち：役者もいないよね。年をとっても主役ができる人。せいぜい高倉健ぐ
らいかなぁ。
☆もも：たまに年をとった人が主役級で出ると、どうしても暗〜い話になっち
ゃうし。この映画ではオヤジ軍団「チーム・ダイダロス」のメンバー
が４人とも元気！ 体のことじゃなく、精神が若々しいのね。若い人
にバカにされてもジョークで切り返す。
★ぽち：４人のキャラクターがはっきりしているよね。トミー・リー・ジョー
ンズは若すぎて、ちょっと浮いてるけどサ。
☆もも：だから、ちゃんとムチャするキャラにしてあるじゃん。イーストウッ
ドは年をとってもカウボーイのまんまだし、ドナルド・サザーランド
はフェリーニ監督の『カサノバ』の時みたいな女たらし。どれも今ま
で演じてきた役を彷彿とさせるキャラで、思わずニヤッとしちゃう。
(^-^)
★ぽち：犯罪モノなんかでいい味出す、ジェームズ・ガーナーの牧師役も笑え
たな。
☆もも：彼はテレビドラマ『ロックフォードの事件メモ』でも好演してた。そ
ういう４人が宇宙を目指して集まってくるんだから、つまらないわけ
がない！
★ぽち：でも、イーストウッドが残りの３人を勧誘するところは、あんまりあ
っさり行きすぎて物足りなかったゾ。
☆もも：それはストーリー的にしょうがないよ。そこが見せ場じゃないもん。
★ぽち：そうかな……。もっと葛藤があってもいいと思ったんだけど。あの年
でまた宇宙へチャレンジするんだからサ。
☆もも：観客が観たいのはまさにソコ。パッパッと進めて正解なんじゃないの
？ 一人ひとりのドラマをていねいに描いてたら、２時間じゃ終わん
ない。
★ぽち：まあ、よりによって宇宙飛行士の座を奪ったのがチンパンジーだから
ネ。未練があるのは当然だろうけど。
☆もも：とにかく前半はおもしろかったな。特に４人が宇宙へ向けて訓練を始
めるところからは。
★ぽち：老体にムチ打って頑張るんだけど、口のほうは達者で、ヘトヘトにな
っても強気で押し通す。ああいうところが笑えるよね。若いヤツもタ
ジタジだったもん。
☆もも：視力検査や重力テストのシーンなんか最高。ただ、途中で４人のトレ
ーニング風景を新聞記者がキャッチするでしょ？ あれは誰がリーク
したの？
★ぽち：そういえば誰だろう？
☆もも：イーストウッドだったりして……。
★ぽち：まさかぁ……。
☆もも：でも、それでテレビにまで出るようになって、彼らをあきらめさせよ
うとしたかつての上司でＮＡＳＡの高官ボブ・ガーソン
(ジェイムズ
・クロムウェル)も引っ込みがつかなくなっちゃったわけでしょ。彼を
やっつけるために仕組んだ芝居だとか……。
★ぽち：そこまで深読みする人はキミだけです！
☆もも：それって私がひねくれてるってこと？
(▼、▼メ) 私は単にそうい
う企みモノがが大好きなのっ！
★ぽち：そ、そうっスか……。 (^。^;)
☆もも：でもまあ、ああいうところもウマイ。どうしても彼らが宇宙に行くし
かなくなっちゃうわけだから。
★ぽち：細かなところまでよくつくられているよネ。
☆もも：バーでジェームズ・ガーナーがＵＦＯキャッチャーをやって、ぬいぐ
るみをゲットするでしょ。その時の顔と、後でまさに宇宙版キャッチ
ャーみたいな仕事をしてのけた時の顔が一緒でサ。そういうところも
ウマイよね。
★ぽち：ふーん、そうか、アメリカにもＵＦＯキャッチャーがあったんだ。こ
れはスゴイ！ 景品はポケモンのぬいぐるみか！？
☆もも：そーいうヘンなところに感心するんじゃありません！！
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宇宙空間でスリリングなＳＦアドベンチャーに急展開！！
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★ぽち：それでいよいよ宇宙へ出発だぁ！
☆もも：ＣＧ映像がリアルできれいだから、自分も宇宙にいるような気持ちに
なれる。本物じゃないとわかってても、な〜んか感動しちゃうんだよ
ネ。 O(^-^)O
★ぽち：リアルで迫力満点！ そこからスリリングなＳＦアドベンチャーに急
展開するんだ。たださぁ、宇宙での作業がわかりにくいんだなぁ。４
人のメンバーに加えてサポート役の若手２人を合わせた６人の乗組員
が、宇宙空間で入り乱れるだろう。宇宙服を着ているから、誰が誰や
らサッパリ。 (・_・？)
☆もも：そりゃしょうがない。宇宙服着けてたらみんなダルマさん。背番号な
んか付けるわけにはいかないでしょ。それよりも、ロシアの人工衛星
とドッキングした後で、イーストウッドが修理に向かうでしょ。そこ
で、重大な秘密が明かされる……。
★ぽち：おっと、待った！ 「ネタバレ注意報」を発令するからサ。
☆もも：何だ？ そりゃ？
★ぽち：まだ観ていない読者のために、前号から、核心に触れる部分を明かす
時は「ネタバレ注意報」を発令しているんだい！ (^-^)
☆ぽち：また、そんな思いつきを……。でも、バレても楽しさは変わらないと
思うな。この映画に関しては。
★ぽち：そりゃまあそうだ。でも、一応念のために、ここからちょっと「ネタ
バレ注意報」発令で〜す！！
☆もも：要するにロシアの人工衛星に核爆弾が積まれてたわけネ。
★ぽち：そうなんだよ。そこで僕は「なるほど！」って納得したんだ。だって
ただ人工衛星が落下するだけじゃ動機として弱すぎる。放っておいた
って燃え尽きる可能性が高いし、燃え残っても海に落ちるかもしれな
い。危険を冒して故障を直しに行く意味がどこにある？ そこがずー
っと引っかかってたんだ。でも、その秘密を聞いてようやく納得。
☆もも：核爆弾が地球を直撃しちゃったらまずいもんネ。そういう背景がちゃ
ーんと用意されてたわけ。だけど疑問なのは、そんなに重大な作戦を
ＮＡＳＡの高官ボブ・ガーソンとロシアの軍人が２人だけで進めてい
ること。地球にとって危険な事態なのに、それを隠して宇宙に行かせ
るか？ だいたいガーソンってそんなに偉いの？ アメリカ大統領は
どうした？ まさか、その時も選挙が混乱してたわけじゃないでしょ
う？ (＾0＾)
★ぽち：うーん、そこはよくわからない。でも、確かに人類の重大事にしては
緊迫感が足りない気もするな……。
☆もも：核に対する考え方が日本とは違うのかな？ そういえばＮＡＳＡのコ
ントロール・センターも何だかセコかったゾ。働いている人の数も、
機器も少なくて小さなセット。『アポロ13』とあまりに違いすぎる！
★ぽち：宇宙でのＳＦＸにお金をかけすぎて、そこまで予算が回らなかったと
か？(＾0＾) でもまあその分、宇宙のほうは確かに迫力あったよね。
☆もも：うーむ。コントロール・センターのほうは見なかったことにしてあげ
よう。 (＾。^/)
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こういう映画がつくれるアメリカがうらやましい
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★ぽち：そういえば、「ネタバレ注意報」はまだ解除してなかったな。
☆もも：早く解除しなさい！
★ぽち：ちょっと待った。いよいよクライマックスだよね。若手の乗組員のミ
スで核爆弾が地球に落下しそうになる。それを阻止するには、誰かが
爆弾とともに月に向かって「片道フライト」をしなければならない。
☆もも：で、月に向かうのがトミー・リー・ジョーンズ。実は彼は、地上でガ
ンを宣告されてるの。それで志願して自分を犠牲にして地球を救うん
だけど、イーストウッドをはじめ周囲がそんなに大騒ぎしない。意外
にあっさり彼を行かせてしまう。いったいどうして？ 日本だったら
あれは特攻じゃん。まさに鉄腕アトムだよ。みんな大泣きだヨ。やっ
ぱりカウボーイは泣かないのか？
★ぽち：自分たちも無事に帰れるかどうかわかんないんだからサ。そういう場
合じゃなかったんだよ。おっと、このへんでとりあえず「ネタバレ注
意報」を解除しとこう。
☆もも：その後も、彼のことに全然触れないでしょ？ 普通だったら涙の１つ
も流すんじゃないのかな。
★ぽち：それもまた、日米のメンタリティの違いなのかなぁ。
☆もも：私もそう思ったけど、そういう不自然さが最後で見事に消えちゃった
！！！
★ぽち：あのラストシーンで？
☆もも：そう。すべての思いがあの美しいラストシーンに込められている。そ
れまでトミー・リー・ジョーンズ演じるホークの悲しい行動をあっさ
りとしか描いてないでしょ。でも、それは、すべてラストに至る伏線
だったのヨ。彼が宇宙へ行ったのは、余命わずかだから無謀な行動に
出たんじゃなくて、死ぬ前に夢をかなえたかったんじゃないのかな。
そして、その夢は見事にかなった！
★ぽち：しかし、ちょっとメルヘンチックすぎる気も……。
☆もも：だからいいんだってば。だいたいこの話自体、ある種のメルヘンだも
ん。オヤジたちが宇宙へ行くなんて。
★ぽち：でも、実際にグレン上院議員が行ってるわけだから……。
☆もも：きっと、それがヒントになったんだろうね。それでメルヘンでありな
がらリアリティもあった。ああ、それにしても美しいラスト。地上か
ら見るあの美しい月……。
★ぽち：コラコラ！ そこまでバラしちゃダメ！！
☆もも：ヘルメットに映る美しい地球……。
★ぽち：ダメだってばぁ！！
☆もも：バックに流れる「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」。ホントにいい
曲！
★ぽち：美しいラストは、実際にみんなに観てもらうとして、宇宙でもやっぱ
りお年寄りが元気だったネ。
☆もも：お年寄りじゃなくてオヤジだってば！！ あのオヤジたちの前では、
若い２人の乗組員なんかただの刺身のツマ。だいたいあの２人の消息
はどうなった？ 全然出てこなかったじゃん。オヤジ４人の消息はち
ゃんと描いてたけど。
★ぽち：地上で悲惨な運命をたどったとか？ 案外、今度は向井千秋さんと一
緒にフライトしたりしてね。(＾。^/) とにかくオヤジが活躍する映
画。若い人の出る幕ナシ！
☆もも：でも、キャステイングは脇役までしっかりしてたよね。ＮＡＳＡの人
たちも人数こそ少ないけど、なかなかキマっていたな。
★ぽち：オヤジ軍団にはかなわないけどね。
☆もも：それにしてもみんな色気あるよね。やっぱり男は色気と愛嬌、そして
年輪。
★ぽち：要するにジジイ・コンプレックスってわけね。
☆もも：誰が！！ (▼、▼メ) って怒んないもーん。アタシはジジコンさ。
★ぽち：そういえば、イーストウッドの奥さん役のバーバラ・バブコックって
この間までＮＨＫでやってたドラマ『ドクター・クイン／大西部の女
医物語』にレギュラー出演してたよね。
☆もも：何を隠そう（隠す必要もないが）『ドクター・クイン』オタクの＜も
も＞ちゃんとしては、実にウレシイ。彼女はヒロインの親友で、町で
唯一の新聞を発行するドロシーさん役だった。でも、この映画で、彼
女の役名がバーバラってのは、そのまんまやんけ！！！ いくらチョ
イ役でもイージーだゾ。
★ぽち：そこで共演してたオースン・ビーンは『マルコヴィッチの穴』の社長
サン役で活躍してたし。そういう人たちが映画でも頑張ってるとうれ
しいよね。
☆もも：昔に比べて、テレビと映画の垣根って低くなってるのかも。『チャー
リーズ・エンジェル』のルーシー・リューなんか大出世だもんね。
★ぽち：今放送している『ふたりは最高グレッグ＆ダーマ』のジェナ・エルフ
マンも、映画でバンバン主役張っている。エドワード・ノートンの初
監督作品『僕たちのアナ・バナナ』にも出てる。
☆もも：でも、なかには映画で落ちぶれてテレビに流れるスターも……。
★ぽち：チャーリー・シーンとか……って、危ない危ない！ 今回はこのへん
にしときます。ちょっと長くなっちゃったけど最後に結論といきます
か。前半は笑い、後半はスリルと涙、いろんな映画の魅力をギュッと
詰め込んだような映画だと思うな。観て損はありません。 (^-^)
☆もも：夢はきっといつかかなう。大切なのは夢を持ち続けること。たとえ年
をとっても関係ない。そんなメッセージがきちんと伝わってくる映画
。こういう映画がつくれるアメリカがうらやましいな。 (*^.^*)
《もものおススメ度》
★★★★
(オヤジたちの魅力分おまけします。次は宇宙で暴れ回る元気なオバサンたちが
見たいな。)
《ぽちのおススメ度》
★★★＋1／2★
(恐るべし、オヤジ軍団。何だかとっても元気になれる映画です。)