スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする(SPIDER)


(2002年 フランス・カナダ・イギリス)(上映時間1時間38分)
監督:デイヴィッド・クローネンバーグ
出演:レイフ・ファインズ、ミランダ・リチャードソン、ガブリエル・バーン、
リン・レッドグレーヴ、ジョン・ネビル、ブラッドリー・ホール
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<ストーリー>
精神療養施設を退院しロンドンに戻った男(レイフ・ファインズ)は、少年時
代に母親が殺された忌まわしい記憶を持っていた。記憶を呼び戻しつつ、少年
時代を過ごした場所を歩くうちに、やがて彼は思わぬ真実へとたどり着くのだ
った……。

<レビュー>
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炸裂するクローネンバーグの世界。わかんない人にはサッパリわかりませ〜ん
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「スパイダー」だけじゃなくて、「少年は蜘蛛にキスをする」もタイトルなん
ですか???
クモにキスするなんて、気色悪いというか、器用というか……。(*^3^)/〜☆

まあ、それはともかく、感覚的な描写を特徴とするデイヴィッド・クローネン
バーグ監督の新作は、少年時代の忌まわしい過去を抱えた男を描いたサイコ・
ミステリー小説(パトリック・マグラア著『スパイダー』)の映画化。

でも、フツーのサスペンスだと思って観ると、大ヤケドをしちゃいますぜ。
なにしろクローネンバーグ監督独特の難解かつ不可思議な心象世界が次々に展
開する映画。その分、好きな人はハマるけれど、そうでない人にはおもしろく
も何ともないと思います。

主人公は精神を病んだ男。子供時代に母親を殺された記憶を持つ彼は、回想の
中からその真相を少しずつ解き明かしていく。だが、それは予想もしない恐ろ
しい事実だった……。 W(゜O゜)W

というわけで、核になる殺人劇そのものは別にどうってことないんですけどね
。それをまあクローネンバーグらしいタッチで興味深く見せていくんですヨ。

まずなんといっても登場人物がユニーク。精神を病んでいる主人公の男は、ボ
ソボソとつぶやくように話したり、突然足がすくんだりと、どうにもアブナイ
雰囲気。それに、彼は精神療養施設を出て、ロンドンの同じような人たちが暮
らす寮らしきところに住むんですが、そこにはなんともアヤシイ人たちが同居
しています。寮を仕切るオバサンもヤバイ感じ。しかも、この人が途中でいき
なり別人に……。ありゃりゃりゃ。何なんでしょう?これ。 (・_・?)

主人公の回想の世界に、主人公が自ら登場するのもミステリアス。つまり、子
供時代の主人公と大人になった今の自分が一緒に出てくるワケ。また、彼が街
を歩くと、周囲には通行人も誰もいないという描写は、彼の孤独な心象風景を
表現したものなんでしょう。

主人公が大切にするノート、ガス、クモの巣といったアイテムを使って、伏線
を張っていくあたりも不可思議な香りがプンプン。

映像も独特の雰囲気がありますねぇ。アーティスティックで、とにかくよく計
算されているんです。まるで絵画のようなオープニングタイトル。それに続く
冒頭の列車から主人公が降りてくるシーンも、周囲の乗客の歩き方など緻密な
構図で構成されています。さすがにクローネンバーグだよなぁ〜。

こんなふうに観客を「なんだ?なんだ?いったいどうなっているんだ?」とい
う不安定な気持にさせておいて、最後までグイグイ引っ張っていくんです。
∝∝∝∝∝…=((#--))グイグイ

「でも、いつものクローネンバーグ作品に比べて、何か足りないものがあるな
ぁ」と思ったら、エグさがないんですよね。以前はあった、人間の肉体が突然
奇妙なものに変化しちゃったりする爆裂ぶりが、今回はまったく見られない。
全体のタッチに合わないと思って封印したのかもしれませんが、結果的にはそ
れが正解。エグいシーンは、この映画に似合いませんもの。

そのうちに、主人公の主観と現実とのズレが少しずつ見えてきます。この主観
的世界と客観的現実の食い違いは、クローネンバーグがずっーと追いかけ続け
るテーマ。そこから「自分って何?」という深い問題に迫っていくんです。

主人公の厚着を評して寮の同居人が「何枚も重ね着しているのは、中身が空っ
ぽだからだ」と言うんですが、これがとても示唆にとんだセリフです。自分の
記憶なんて曖昧なもの。その上に立つ今の現実だって危ういものなんですよ。
きっと。過去と未来、記憶と現実、ボクってなに? なんなのさ?

主人公役のレイフ・ファインズが相変わらず深みのある演技を披露しています
。最近はメジャーなエンタメ作でも存在感を示していますが、やっぱりこうい
うコワれた役をやらせると絶品ですねぇ。この人は。 (*^。^*)

ラストも多くのナゾとともに幕を閉じます。単純明快な結末など期待してはダ
メ。観客の想像力に委ねたラストで、深読みすればいくらでも深読みができる
。わかる人にはわかるけど、わからない人にはサッパリわかりませ〜ん。

そうです! これこそがクローネンバーグの世界なのだ。わかりやすくなっち
ゃったら、彼らしくありません。

ボク的にはこの監督のそういうところが好きなので、けっこう楽しめた映画で
した。
過去に彼の作品を観たことがある人なら、それほど違和感はないはず。でも、
彼の映画を初めて観る人は心して映画館に出かけましょうね。あなたにはチャ
レンジする勇気がある?

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観て損はナシ】
(とはいうものの、誰でも観て損はないというわけではなく、評価は人によっ
てまったく違う映画。観終わって「金返せ〜!」と言われても、ワタシャ知り
ませんので(笑)。)
                             <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2003年4月2日(水)池袋HUMAXシネマズ4にて。午後2時10分の回。


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