ＴＡＫＥＳＨＩＳ'
| （2005年 日本）（上映時間１時間47分） 監督・脚本・編集：北野武 出演：北野武、京野ことみ、岸本加世子、大杉漣、寺島進、渡辺哲、美輪明宏、 六平直政、ビートきよし、津田寛治、芦川誠、松村邦洋、内山信二 ＊丸の内プラゼールほかにて全国公開中 ホームページ http://www.office-kitano.co.jp/takeshis/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ リッチな生活を送る大物タレント・ビートたけし。一方、彼にそっくりの売れ ない役者・北野はコンビニでアルバイトをしながら、オーディションを受けて は落ちる毎日。ある日、偶然、北野はビートたけしと出会い、ついにはビート たけしの演じる映画の中に迷い込んでいく。それは、幻とも現実とも区別がつ かない世界だった……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ワケはわかんないけれど、けっこうおもしろい北野監督の頭の中の世界 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 いまやすっかり「世界の北野」となった北野武監督の『座頭市』に続く新作映 画。ヴェネチア映画祭でも賛否両論だった話題作です。前評判を聞くと、「ワ ケわかんねぇ〜」という声も多いようですが、さてどんなものでしょう。 大物タレント・ビートたけしと彼そっくりの売れない役者・北野が出会い、両 者の生活が対照的に描かれる。その後、少しずつ両者の世界が重なり合うよう になり、映画は迷宮の中に落ち込んでいく……。 まあ、確かにワケがわからないです。特に中盤から後半はグジャグジャな構成 で、「なんだ？ なんだ？ なんだ？」って感じ。 （￣ー￣？） だけど、世間で言われるほど難解な映画ではないですヨ。まず、基本になる２ 人のたけしがいる設定は、何となく理解できますもの。ほら、誰だって「本当 の自分はこんなじゃないのでは？」とか「もしもあの時別の道を選んでいたら、 自分にはどんな運命が待ってたの？」とか、そういうことを考えるじゃないで すか。その先にああいう設定があっても、けっしておかしくはないはず。 途中から出てくる混沌とした世界も、けっしてボクらの頭の中とかけ離れた世 界ではありません。誰だって意味不明なシュールな夢を見るでしょ？ 「何だ ったんだ？ 今の夢は？」と、起きてから自分でも説明できないような夢。そ んな世界を映像にしていると思うんだなぁ〜、この映画は。 でも、そうはいっても客観的に観ればわかりにくいのは確か。なにしろ映画の 常識も崩しちゃってるからねぇ〜。例えば、多くの役者が何役かこなすのだが、 それらの役が相互に関係しているような、していないような微妙な設定になっ ているんですヨ。時制や空間が入り乱れたり、イメージショットがたくさん挟 まれたりするので、ますます混乱してしまいます。 さらに、『その男凶暴につき』以来の過去の北野映画のエッセンスも、あちら こちらに散りばめられています。『ＨＡＮＡ−ＢＩ』の砂浜のシーン、『座頭 市』のタップダンスなど、時にはパロディっぽい感じまで出して、自作のシー ンを再現しています。バイオレンス、セックス、笑い、抒情性など、北野映画 の様々なエッセンスがタップリ。これって、北野監督自身が、この映画で過去 を総括しておきたかったのかも……。 (−＿−) さてさて、この映画を皆さんはどう観たらいいのでしょう。 「北野監督の意図はどこにあるの？」「このシーンにはどういう意味がある の？」などとアレコレ考えたくなりますが、あんまり深いことを考えずに、そ の場、その場を楽しむようにしたほうがいいんじゃないでしょうか。 松村邦洋と内山クンのデブ演技に爆笑し、美輪明宏の歌に聞きほれ、タップダ ンスを堪能し、京野ことみのハダカに興奮し！？ まあ、とにかく次々に登場するいろんなネタを楽しんでください。特に笑いは いかにも北野監督らしいアホアホな笑いを中心にギッシリ詰まっています。 役者も今までの北野映画の常連が総登場。京野ことみはセクシーシーンばかり 話題のようですが、寺島進との夫婦漫才（？）が爆笑モノ。 なんだか芸術家然として、難しい顔をしてスクリーンを見つめる観客も多いよ うですが、ボク的にはそういう観方はしたくない映画。だって、暴走する空想 の世界とか、シュールな夢の中の世界とか、そんなことの意味をイチイチ考え ても仕方ないもん。 ハリウッド映画のようなわかりやすい映画も映画なら、こういう映画もやっぱ り映画。「ふーん、こんな映画あるのねぇ〜」と実感できる。そんな映画です。 《ぽちのオススメ度》 ★★☆☆☆ （今までの作品の総括的な意味もあるだけに、北野映画やビートたけしのファ ンは必見。でも、それ以外の方がわざわざお金を払って観る価値がある映画か といえば疑問。おもしろいのはおもしろいんだけど……。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年110月５日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後２時45分の回。 |