たまゆらの女(ZHOU YU'S TRAIN/周漁的火車)


(2002年 中国)(上映時間1時間33分)
監督・脚本・製作:スン・チョウ
出演:コン・リー、レオン・カーフェイ、スン・ホンレイ
*シネスイッチ銀座ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.herald-arthouse.com/tamayura/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>
雲南省の古都・建水で白磁の染付け絵師として働くチョウユウ(コン・リー)
は、図書館員のチェンシン(レオン・カーフェイ)と出会う。詩作が得意な彼
はチョウユウに詩を贈り、その詩に感動したチョウユウは彼の住む重慶に通う
ようになる。チェンシンの才能を信じ、愛情を注ぐチョウユウ。だが、チェン
シンはそれが少しずつ負担になり……。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コン・リーの迫真の演技が光る、せつな〜い愛の物語
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「たまゆらの女」と書いて「たまゆらのひと」と読む。なんだか演歌みたいで
すなぁ〜。「小樽の女よ」? 「函館の女」?

中国を代表する名女優コン・リーとスン・チョウ監督のコンビは、『きれいな
おかあさん』に続く顔合わせ。でも、優しくたくましい母親を描いた前作とは
一転して、今回は1人の女と2人の男とのせつな〜い愛の物語です。ああ。 
(´ヘ`;)

映画の冒頭、ショートカットのコン・リーが登場します。「あ、これが主人公
なんだ」と思うと大間違い。このあとすぐにロング・ヘアーのコン・リーが登
場して混乱します。
実は、最初のショートカットのほうは、主人公に似た別の女性シュウなんです。
そして、その彼女が過去の出来事を思い出して語るというのが、この映画の基
本的な構図。これをきちんと押さえて観ましょうね。

ロング・ヘアーのほうは主人公チョウユウで、雲南省の古都・建水の陶芸工場
で白磁の染付け絵師をしています。
そんな彼女はある晩開催されたダンス・パーティで図書館員のチェンシンと出
会う。彼は詩を作ってチョウユウに贈る。その詩に感動した彼女は、彼の住む
重慶に汽車で10時間をかけて通うようになる。ああ。

詩人として成功したいチェンシンを必死にサポートするチョウユウ。だが、や
がて、チェンシンはそれが負担に感じられるようになる。そんなある日、チョ
ウユウは車中で獣医チャンと出会う。彼女に好意を持つチャンに対し、チョウ
ユウの心は揺らいでいく……。ああ。
(ああ、ああ、うるさくてスイマセン。ホントせつない話なのヨ)

てことで、何のことはないベタな男女の三角関係の話です。
詩人を愛する女、そこに彼とは正反対の実直で無骨な獣医が登場し、2人の間
でヒロインは揺れ動く。その先はどうなるのかぁ〜〜〜〜???
うー、陳腐、陳腐。詩人が書く詩もベタで、なんだかこっ恥ずかしくなっちま
いますデス。アタクシならあの程度の詩になんか引っかかりませんことよ。

でもねぇ、これをコン・リーが演じると深みのある愛の物語になってしまうん
ですヨ。まったくもって、このぉ〜〜!!!
一途に詩人に愛を注ぐ姿、すれ違いを感じて悩む姿、別の男の登場でとまどう
姿。もう、どれをとっても一級品の演技。揺れ動き、うつろう心情を見事に表現
しています。

特に良いのが物憂げな表情。うう〜、たまらん。こっちまで胸が痛くなってき
そう。
それとは裏腹に、愛する喜びを知ったキラキラした顔や、好意を寄せる獣医を
冷たくあしらう強気な表情なども心にずーっと残ります。 (~ヘ~;)

それに、ヒロインが汽車で長時間かけて男のところに通うという設定が、効果
的に使われているんですよねぇ。別の男と知り合うのも汽車の中でだし。

詩人役の香港の人気俳優レオン・カーフェイ。無骨な獣医役のスン・ホンレイ
(『初恋のきた道』)も、役どころにピタッとはまった良い演技でした。

そして、映像も素晴らしいっ! 詩人が登場するだけに、まさに詩的な映像が
展開されます。
2つの舞台である雲南省と四川省のそれぞれの風景が見事。前者の自然にあふ
れる風景と、後者の都会の街並みが対照的に捉えられています。
登場人物の表情や行動で、それぞれの心情を切り取っていく映像表現も巧みで
す。手持ちカメラやスローモーションなどを使い、心にしみる余韻のある映像
を生み出しています。

ヒロインと詩人との関係がギクシャクしだすきっかけとして、湖を使うところ
も「おぬし、なかなかやるな!」という感じ。彼女の美しさをたとえた湖に行
ってみたら、実際には湖がなかったんですよね。でも、詩人に「どうだった?
」と聞かれた彼女は「美しかった」と答える。その悲しげな表情がたまりませ
ん。 (T^T)

ラストの展開もベタなんですが、もうヤボなことを言うのはやめましょう。お
互いに愛していたと気づいても、もう取り戻せないこの無力感。ああ……。(
またまた、スイマセン) (´ヘ`;)

この映画はまぎれもなく大人の恋愛ドラマ。この映画にズンズンと入り込める
人は、やっぱりいくつもの愛を経験した大人の男女なのかもしれません。
なに? そういうお前はどうだって? うーん、経験不足は隠しようもありま
せぬが、とりあえず頑張ってみましたデス。 ρ(^◇^)ノ.

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない?】
(こういうベタな恋愛話は大嫌い!なので★★ぐらいにしてやろうかと思いま
したが、コン・リーの演技と詩的な映像で大幅アップ! ただし、感情移入で
きないとキツイかも。まあ、恋愛映画は多かれ少なかれそういうもんでしょう
が……。なお、ベットシーンはありますが、そんなにヤラシクないです。念の
ため)
                             <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2003年10月1日(水)シネスイッチ銀座にて。午後12時の回。


[レビュートップページ][「た」のページ]