箪笥(薔薇、紅蓮/A TALE OF TWO SISTERS)


(2003年 韓国)(上映時間1時間55分)
監督・脚本:キム・ジウン
出演:イム・スジョン、ムン・グニョン、ヨム・ジョンア、キム・ガプス、パ
ク・ミヒョン、ウ・ギホン、イ・スンビ、イ・デヨン、ノ・スンジン
*新宿シネマミラノほかにて全国公開
ホームページ http://www.tan-su.jp/
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<ストーリー>
韓国・ソウル郊外の一軒家に、病院での療養生活を終えた姉妹スミとスヨンが
戻ってくる。彼女たちを迎えたのは、継母のウンジュ。姉のスミは彼女のことを
毛嫌いし、スヨンは家の中の不審な気配におびえる。精神的に不安定になったウ
ンジュは、姉妹とことあるごとにぶつかり、対立は次第にエスカレートしていく。
だが、姉妹の父親ムヒョンは、そんな彼女たちをまったく無表情に見ているだけ
だった……。

<レビュー>
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かなりコワーイ韓国製ホラー。アート性もタップリでもう一度観たくなります
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キャーキャーうるさいゾ! そこの中高生の集団!! スクリーンに集中でき
んじゃないかッ!! 遊園地のオバケ屋敷じゃないんだから。ったく!!! 
(`ヘ´)
でも、まあ確かにコワかったです。

この韓国製ホラーのベースになったのは古典の怪談「薔花紅蓮伝」。仲の良い
姉妹が継母の陰謀によって亡くなり、怨霊になって現れるというお話。なるほど、
途中まではそんな雰囲気で話が進んでいきます。

病院での療養生活を終えて、父親とともに郊外の一軒家に戻ってきた仲良し姉
妹。そこには継母が待っていた。実母を今も慕う姉は彼女に反発。妹は家の中の
不審な気配におびえる。やがて、姉はある晩、実母の幽霊が登場する悪夢を見て
しまう。それ以来、家の中ではさまざまな怪奇現象が起こり始める。継母は精神
的に不安定になり、姉妹をイジメるようになる……。

てなあたりまでは、継母にイジメ殺される姉妹という図式が見えます。でもね
ぇ、よくよく見るとそんな単純な感じじゃないんだなぁ〜。
最初のほうで、姉が「あの女はヘン。この家もおかしいわ!!」と言うのだが、
なんのなんのあんたたち姉妹も十分にヘンだよ〜ん。おまけに父ちゃんもヘン。
気色悪い家の中に気色悪い家族が大集合でありまする。 (*^。^*)

なんたってコワイのがあの家だよなぁ〜。家具とかインテリアとか、とっても
妖しくて、しかも独特の格調がある。「これなら絶対にオバケが出るに違いない!」
と太鼓判を押せる不気味さ。正真正銘の幽霊屋敷ですぅ〜。

そこを舞台に、『リング』の貞子も真っ青の幽霊が登場したり、現実なのか幻
覚なのかわからない不可思議な世界が展開したり、吐き気を催すほどのエグい場
面がくり広げられたりするものだから、かなりコワイのですヨ。 (∋_∈)

しかも、ただコワイだけではなく、なかなかに美しいのです。独特の美学に貫
かれた映像がタップリで、まるで絵画のようなシーンの連続です。
「ホラー映画はアートでなければならぬ」というのがボクの信念ですが(だっ
て、ただコワイだけなら誰だってできるし、飽きちゃうもん)、この映画はまさ
にアートそのもの。すべてのシーンに細心の注意が払われています。

物語的には、最初は姉妹の側に立った恐怖が描かれるのですが、その後は今度
は継母の側に立った恐怖が描かれます。
「こりゃ、なかなかユニークな構成だわい」と思ったら、実はこれ、最後のほ
うで明かされるこの映画最大のナゾに大きく関わっていたんですねぇ〜。

ま、当然ながら、ここでタネ明かしはしませんが、驚愕の事実です。ただの継
母による姉妹イジメとか、そういう次元の話ではありません。
ただし、それが明確な形で提示されるわけではなく、断片的な映像などがバシ
バシ積み重ねられて、ようやく1つの像を形成するのです。観客の想像力に委ね
る部分が多いタネ明かしなので、一歩間違うと、最後の最後までワケのわからな
いままかも……。

たとえナゾの正体がわかっても、細かなところまですべて納得がいくわけでは
なく、「あれ? あそこはどうなっていたっけ?」と、どうしてももう1回観た
くなるんですよね。そのへんのつくり方もうまいよなぁ〜。ヨ! 商売上手!!

役者さんたちの気色の悪さもハンパではありません。特に姉役のイム・スジョ
ンの熱演は特筆もの。新しい若手恐怖系女優の誕生か!?(て、そんなジャンル
はないか)継母の迫力もすさまじいです。 (^。^/)

ただ、惜しいのは、ラストに向けたタネ明かしが、あまりにもバタバタバタと
駆け足すぎて、ややついていけないところ。もう少しジックリやっても良かった
のでは?

それに、展開されるのは悲劇なのに、悲しみがイマイチ伝わってこないのがも
ったいない。殺された者の無念さ、心に傷を追った者のツラサといったディープ
な情念がもう少し漂ってきたなら、もっともっとドラマ的に見応えがあったはず。
「号泣できるホラー」という前評判ほどには、訴えかけてくるものはなかったで
すね。

それでも、恐怖度といい、驚愕のナゾといい、アート性といい、ホラー映画と
しては一級品だと思います。スピルバーグがリメイク権を獲得したそうですが、
それも納得の出来。(でも、最近のハリウッドってやたらにホラー映画のリメイ
ク権を獲得してないか!? そんなにネタ不足なの?) 

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
(一度観るとどうしてももう一度観たくなる映画。ホラー映画好きは観ておい
たほうがいいかも。)
                          <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2004年7月29日(木)池袋シネマサンシャインにて。午後2時20分の回。


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