第14回東京国際映画祭シネマプリズム参加作品
ティアーズ (TEARS)
（2001年 韓国）（上映時間1時間45分）
監督：イム・サンス
出演：ハン・ジュン、ポン・テギュ、パク・クニョン、チョ・ウンジ
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
離婚した親を嫌って家出をしたハン（ハン・ジュン）。幼い頃に近親相姦にあった
ことがトラウマとなりセックスを嫌うセリ（パク・クニョン）。不良のチャン（ポン・テ
ギュ）が主導する集団セックスを拒絶するセリをハンが助けたことから2人は親し
くなり、セリはホステスとして、ハンはポン引きとして働くようになる。一方、チャン
は彼を慕うホステスのラン（チョ・ウンジ）のヒモとして生活する。ある日、辛い現
実から逃れるように4人は盗んだバイクで街を出るが……。
＜レビュー＞
４人の不良の物語です。
主人公の男の子ハンはちょっとジャニーズ系で、日本でも人気が出そう。ただし、
このコはそんなに悪くありません。親とうまく行っていないものの、根っからのワ
ルというわけでなく、ただ何となくワル仲間とつきあっている感じ。
で、彼の友達のチャンがとんでもないヤツなんです。特に女の子に対してはムチ
ャクチャで、自分の彼女を妊娠させて、堕ろす費用を稼ぐために援交させたりする。
まさに、女の敵。でも、こういうヤツに限ってモテたりするんだよねぇ〜。
彼を慕うのは、いかがわしい店で働くホステスのラン。そこで金を稼いではチャン
に貢いでいる。
そして、もう１人、主人公と仲良くなる女の子がいる。彼女にはどこか影があって、
ＳＥＸに対してかなりの嫌悪感を持っている。（その理由は後で、幼い頃の近親相
姦だとさりげなく示唆されるんですけどね。）
前半は、この４人の無軌道な生活ぶりが描かれます。これといって目的意識もなく、
ただその場限りのために悪いことを繰り返す。彼らの日常がドキュメンタリー・タッ
チで赤裸々に描かれます。オープニングから早くも、強姦まがいのシーンが登場。
ホントいい加減な生活ですねぇ〜。 (´ヘ｀;)
中盤になると、４人は、現実から逃れるために盗んだバイクで海へ向かう。（「盗ん
だバイクで走り出す……」ってのは尾崎豊かだったよな。確か。それにしても悪い
連中だぜ。）
無銭飲食だの、ガソリン代踏み倒しだの、旅先でもまったく困ったヤツら。もうコイ
ツら破滅するしかないよなぁ〜、って感じ……。
ところが、彼らが見に行った海はゴミだらけ。そして、帰ってきたハンとチャンには
不幸な事件が待ち受けていた……。
ラストはけっこう切ないですね。
主人公とその彼女が再びバイクで走り出すのだが、それははたして未来のある旅
立ちなのか？？？ それとも。うーん。 (・_・？)
全体を通してみれば、シャープな映像とノリのいい音楽、それに適度なユーモアも散
りばめて、テンポの良い青春ドラマに仕上げています。
ドキュメンタリー・タッチの醒めた感じもなかなかいい。４人の若者も街でスカウトし
た素人だとか。
とはいっても、ドラマ的にもそれなりの脚本になっていて、登場人物のキャラクター
もキチッと描き分けられています。
４人の若者を通して、今の韓国の若者（といっても不良なんだけどさ）の生態がよ〜
くわかりました。
その反面、若者たちのやるせなさとか、持って行き場のないエネルギーとかがあん
まり伝わってこないんですよね。
不良たちがあまりにもアッケラカンとしているせいもあるんだろうけど、心にグサグサ
突き刺さってくるものがない。
彼らをムチャな行動には知らせる周囲の描き方もフツーすぎておもしろくない。
いっそのこと主人公とその彼女に焦点を絞って、２人の心の傷ややるせない思いを
丹念に描いたほうがよかったんじゃないかなぁ〜。そうでないと、あのラストが生きて
こないヨ。
この映画は性的な描写が多く、特に主人公の彼女にとっては、それが大きな障害に
なっている。そういう深い部分をもっとキチンと描いて欲しかったと思います。
監督は、未婚女性3人が夕食で自由奔放な性談義をするという『ディナーの後に』で
センセーショナルな話題を巻き起こしたイム・サンス。
この映画も、家出少年・少女を主人公にして、シンナー、援助交際、近親相姦などが
描かれているため韓国では「18歳以上観覧可」のレイティングが付き、高校生は観る
ことができなかったらしい。ホント、お騒がせ監督やなぁ〜。
でも、そんなに騒ぐほどショッキングな映画じゃないよね。やっぱり儒教の国だから、
まだこういう映画は難しいのかな？
＜ぽち＞
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆
（ドキュメンタリー・タッチにしたかったのはわかるけど、もう少し若者たちの心を深くえぐって欲しかった。）
＜鑑賞データ＞
2001年10月31日（水）午前11時から。渋東シネタワー３にて。