ザ・インタープリター(THE INTERPRETER)
| （2005年 アメリカ）（上映時間２時間９分） 監督：シドニー・ポラック 出演：ニコール・キッドマン、ショーン・ペン、キャサリン・キーナー、ジェ スパー・クリステンセン、イヴァン・アタル、アール・キャメロン ＊有楽座ほかにて全国公開 ホームページ http://www.inpri.jp/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 国連通訳のシルヴィア（ニコール・キッドマン）は、ある日、アフリカ・マト ボ共和国の独裁者ズワーニ大統領の暗殺計画を耳にしてしまう。その日以来、 彼女の身辺には不思議なことが起きるが、シークレット・サービスの捜査官ケ ラー（ショーン・ペン）は、シルヴィアがウソをついていると感じる。ズワー ニの国連総会での演説が近づく中、事態は大きく動き出し……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ニコール＆ショーンの充実の演技が光る、緊張感の途切れないサスペンス 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ニコール・キッドマン＆ショーン・ペンの共演とくれば、重たくて深い人間ド ラマを期待したいところですが、この映画自体はガチガチのエンターティメン ト作品。とはいえ、そこに２人を放り込んだことで、作品自体に奥行きと広が りが生まれました。 物語の背景にあるのは、アフリカでの紛争。マトボ共和国というところで、大 統領による虐殺疑惑が浮上し、国連で問題になる。 そんな中、マトボ出身の国連通訳が、大統領暗殺の計画を耳にしてしまう。そ こでシークレット・サービスが乗り出し、事件の真相に迫っていく。最初は通 訳を疑う捜査官だったが、やがて……。 というように、基本はありがちなサスペンス。 でも、国連を舞台にしたところがユニークだし、主人公がアフリカの言葉の通 訳というのもおもしろい。 しかも、中途半端なセットでお茶を濁さずに、国連と交渉して国連本部での撮 影を許可してもらったことで、よりリアルさが増しています。 おまけに、その国連に加え「アフリカの紛争」「テロ」という現在の世の中に とってリアルなネタを３つも組み合わせたことで、社会派サスペンスとしての 魅力が生まれています。 ( ^∇^) 大ベテランのシドニー・ポラック監督は、これまでも『コンドル』や『ザ・フ ァーム』といった社会派サスペンスを手がけているので、さすがにそのあたり は手抜かりナシ。 まあ、テーマ性を無視して単純なサスペンスとして観ても、それなりにポイン トは高いですよネ。 前半は、ニコール・キッドマン演じる主人公が抱えたナゾをバラバラとバラま いて、観客を疑惑の渦に引き込んでいきます。独裁者、反体制派、ナゾのカメ ラマンなど、ミステリアスな人物をたくさん登場させて、事件の構図を混乱さ せていくんです。 (・_・?) ナゾの引っ張り方が徹底していますヨ。 冒頭のアフリカでの出来事の意味がわかるのは、始まって１時間ぐらいしてか らですもん。イヤらしいぐらいに引っ張って、ナゾだらけの世界を構築。その 中に、ニコール・キッドマンとショーン・ペンのガチンコ対決の場面を散りば めて、一瞬も緊張感を途切れさせません。とにかく、ハンパでない緊張感なの だ。 おかげで、前半はあんまり話が動かないのに、ちっとも飽きることがありませ んでした。 後半は、事件が大きく動き出し、予想もしない出来事が次々に起きます。ハラ ハラドキドキのスリルが最後まで続き、息をつく暇もないほど。そして、適度 なアクションもプラス。 いやいや、それだけではありません。そこにニコール・キッドマンとショー ン・ペンの心のふれあいを描きこんでいくんですよね。どちらも過去の傷を背 負った２人が、最初は対立しつつもやがて……というドラマ。 ただし、恋愛などのお手軽な展開には持ち込まず、両者の繊細な心理の変化を 的確につかみ取っていきます。 この繊細な描写は、ポラック監督の手腕もあるけれど、それ以上に２人の演技 によるところが大きいと思います。特にショーン・ペンは若い頃のギラギラさ が消え、人間的な深みを感じさせる演技。心に傷を負った男を見事に演じてい ました。なんか、デ・ニーロやアル・パチーノあたりと共通する深さを感じち ゃいましたね。 一方、二コールは強くてたくましい中に、チラチラと弱さや過去の傷を見せる 絶妙の演技。ボクは前から好きな女優さんだけど、ますます惚れちゃいました ワン。 U^エ^U ラストの２人の余韻の残るシーンが、実によかったですねぇ〜。 ナゾとスリリングさにあふれ、一瞬も目が離せない緊張のサスペンス。エン ターティメントでありながら、社会派の要素も織り込んで、さらに傷を負った 男女の人間ドラマまで展開しているのだから、これはもうお買い得。サスペン ス・ファンならずとも楽しめる映画だと思います。 ニコール＆ショーンの演技だけでもモトは取れますヨ。 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆（＋1／2★） （想像していたよりもはるかにおもしろく、かなりの満足度。派手さには欠け るけれど、見応えはタップリでした。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年５月23日（月）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後３時45分の 回。 |