東京原発
（2004年 日本）（上映時間１時間50分）
監督・脚本：山川元
出演：役所広司、平田満、田山涼成、菅原大吉、岸部一徳、吉田日出子
＊新宿武蔵野館、シブヤ・シネマ・ソサエティにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.genpatsu.bsr.jp/
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＜ストーリー＞
東京都知事の天馬（役所広司）が緊急会議を招集。局長たちを前にした彼は、
財政難解決の秘策として「新宿中央公園に原子力発電所をつくろう！」と提案
する。唐突なこの提案に混乱した局長たちは専門家として東大の教授を呼ぶ。
一方、天馬は原子力安全委員の松岡を呼び出そうとする。ところが松岡は、お
台場に停泊した船からＭＯＸ燃料を運び出し、トレーラーで福井に運び込む極
秘裏の作業を指揮していた……。
＜レビュー＞
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オバカな笑いの後で原発がコワクなる。ブラックコメディの快作！
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だいぶ前に「東京に原発を！」とかいう本がありました。原発がそんなに安全
で大事なものなら、なんで田舎にばっかりつくるんだ？ 電力の大消費地、東
京につくりゃいいだろ？ てな皮肉な提案だったのですが、それを地でいくの
がこの映画。
都知事の天馬が突然、「財政難克服のために東京に原発をつくる！」と宣言。
それを聞いた部下たちが右往左往する姿をユーモラスに描いています。
まず笑えるのが役所広司演じる困った都知事。"東京から社会を変える"をモッ
トーに独断専行で物事を進めるワンマンぶり、やることはデタラメ、言ってる
こともいい加減。そしてあまりにも軽〜〜〜い。
いやぁ〜、まるで石原都知事と小泉首相をミックスしたみたいなアホ知事です
ゾ。 (＾。^/)
そして、彼に振り回されるのが個性派の部下たち。
副知事を段田安則。局長たちを平田満、田山涼成、菅原大吉、岸部一徳、吉田
日出子といった芸達者が演じているのですが、どれもきちんとキャラクターが
つくられていて、困った発言を連発。賛成、反対に分かれて「ああでもない、
こうでもない」と言い合う姿にはただ爆笑するのみ。 (＾0＾)
ただし、よく聞いていると、アホなはずの都知事の発言の中には、チラチラと
真実が見え隠れする。
「地方の自然を破壊して原発をつくって、なにが環境に優しいだ？」
「地方に原発ができるのは賛成なのに、どうして東京なら反対なんだ？」
などと痛いところをグイグイ突いてきます。
それもそのはず、一見困ったこの都知事には、ある深〜い考えがあったのです
ね。 (~ヘ~)
さて、こうしてブラックな笑いを満喫できるこの映画。同時に、原発について
のお勉強もできます。
混乱した局長たちが、綾田俊樹演じる大学教授を呼んできて意見を聞くのだが、
この発言がなんとも衝撃的。原発の現状が赤裸々に語られ、いかに国や電力
会社が国民をだましてきたかがよくわかります。 (
゜_゜;)
特に、「関東大震災級の地震にも大丈夫」とか「原発は電力の３分の２」とい
うＰＲのトリックが暴かれるところでは目が点。いやぁ〜、知らなかった、そ
うなんだ、勉強になるなぁ〜。ウンチク王のくりぃむしちゅーの上田サンにも
教えてあげようかしら。
しかも、ただ国や電力会社のやってきたことを暴くだけでなく、それを傍観し
てきた国民＝観客にまで鋭い刃を突きつけてくるんですよねぇ〜。あんたたち
も同罪なのよ、と。
でも、コメディの要素がしっかりしているから、けっして不快になることはあ
りません。
ほとんどが会議室でのシーンなので退屈しそうになるところもあるのですが、
そこもちゃんと工夫されていて、同時並行で極秘裏にお台場から運ばれるＭＯ
Ｘ燃料をめぐる犯罪ドラマを描いています。
こうしてエンターティメントのワク内でつくられているからこそ、かえって原
発をめぐるシリアスな部分がクッキリと浮かび上がって、「このままでいいの
か？」という問題提起につながっていくのです。
まあ、犯罪サスペンスのラストはちょっとやりすぎという感じもするし、この
テの映画の定番パターンもたくさん出てくるのだが、そこを除けばかなりおも
しろい映画。エンタメと社会批判をうまく融合させた快作といえるのではない
でしょうか。
笑いに包んで硬派なテーマを提示した山川元監督に拍手です。 (^-^)//""
しかし、大ロードショーしてもおかしくない、こんな良い映画を細々としか上
映しないのはいかがなものか？ 電力会社や国の圧力が怖いのか？ どーなん
でしょう関係者の皆さん。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）【かなりオススメ。観たほうがいいんじゃない？】
（アハハと笑ってちょっとコワクなる。原発問題に興味のない方もぜひ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2004年３月23日（火）新宿武蔵野館にて。午後２時10分の回。