トラフィック (ＴＲＡＦＦＩＣ)
（2000年 アメリカ）（上映時間２時間28分）
監督：スティーブン・ソダーバーグ
出演：マイケル・ダグラス、ベニチオ・デル・トロ、キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ、
ドン・チードル、デニス・クエイド
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＜ストーリー＞
メキシコの警官ロドリゲス（ベニチオ・デル・トロ）は、１台のトラックから大量
の麻薬を押収するが、将軍が現れて犯人とともに持ち去ってしまう。一方、
ワシントンでは州最高裁判事ロバート（マイケル・ダグラス）が、麻薬取締の
最高責任者に任命される。そして、サンディエゴでは、麻薬の売人である夫
が逮捕されたヘレーナ（キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ）が、ある策略をめぐらし
始める……。
＜レビュー＞
麻薬という大きな、そして厄介な問題をズドーン！と真正面から描いた大マジ
メなドキュメンタリー映画だぁ〜い!! (｀ヘ´)
ウソ、ウソ！ ドキュメンタリーってのは真っ赤なウソで〜す。 (*^。^*)
でも、そのぐらいリアルで、地味ぃ〜な映画なんですヨ。
物語は、麻薬をめぐる３つのエピソードから構成されてます。
まず、１つめは、ベニチオ（本人はベネシオだと主張してるそうですけど）・
デル・トロ演じるメキシコの警官ロドリゲスが、事件捜査の過程でサラサール
将軍と知り合い、彼と麻薬組織との危険な関係を知ってしまう話。
２つめは、ワシントンで、マイケル・ダグラス演じる州最高裁判事ロバートが
麻薬取締の最高責任者に任命されて、やる気満々で麻薬撲滅を誓うものの、実
は彼の娘には大変な秘密があって……という話。
そして、３つめは、サンディエゴで麻薬の売人が逮捕され、キャサリン・ゼタ
＝ジョーンズ演じるその妻が「子供たちとのゴージャスな生活を守らねば！」
と立ち上がる話。
この３つの話は、ほんの少しだけ絡み合う部分もあるんだけど、基本的には独
立した話として別々に展開していく。
それをリアルなドキュメンタリー風のタッチで、クールに描いていくワケ。
じゃ、どういうところがドキュメンタリー風かっていうと、けっこう細かなテ
クを使ってんですよねぇ。勢いでテキトーにつくってるように見えて、実はか
なり練り上げられてるんだわ。
例えば、フィルムの色に微妙な変化をつけている。冒頭で、ベニチオと相棒が
麻薬を押収するシーンをはじめ、メキシコの映像は、粒子が荒くてザラザラし
た感じの、黄色っぽい映像を使用。その他もフツーの映画とはちょっと違った
感じの映像が繰り出される。別にフィルムが足んなかったわけじゃないゾ〜！
ドキュメンタリーでは定番の、手持ちカメラがグ〜ラグラの映像もズバズバ登
場しておりますのヨ〜。
それに、なんたってドキュメンタリー風だから、メキシコのシーンのセリフは
もちろん現地の言葉。ハリウッド映画って、ドイツだろうが、フランスだろう
が、アフリカだろうが、世界中どこを舞台にしても英語で済ませちゃうケース
が多いじゃない？
でも、ここではそんな手抜きは一切してません。スペイン語、それもメキシコ
で実際に使うスペイン語をちゃ〜んと使ってるんです。このこだわりには＜ぽ
ち＞も感服じゃワン！ U^ェ^U
こうやって、徹底的にドキュメンタリー風に仕上げたこの映画。観客を沸かせ
るドラマチックさはほとんど排除されている。
なのに、２時間28分、ほとんど飽きる場面がなかった。
それに、いくつかの話が並行して描かれる映画って、よく散漫でバラバラな感
じになるでしょ？ そういう感じもぜ〜んぜんなかったゾ。
うーん、いったいどうして？ (・_・？)
ま、それはやっぱり麻薬戦争という素材自体が面白いからだと思うな。
スリリングでデンジャラス。密告や裏切りは日常茶飯事。やるかやられるかの
ギリギリの戦い。そりゃあ、絶対に惹きつけられるし、飽きないヨ。
ソダーバーグ監督ったら、きっとそれを十分に承知してて、こういうスタイル
の映画にしたんだろうなぁ〜。ヘンなドラマで小細工してグジャグジャにする
より、このほうがよっぽど見応えあるもん。麻薬問題の根深さもクッキリと浮
き彫りになるし。
それに加えて役者がみんないいじゃないですか。
マイケル・ダグラスはいつも通りで貫禄タップリだし、キャサリン・ゼタ＝ジ
ョーンズの開き直り方もグッド。（夫婦ともホメるのはどうかと思うけどネ）
ちょっとした役まで、みんなうま〜くハマってんだよねぇ。
もちろんその中でも存在感バッチシだったのが、ベニチオさんです。熱いハー
トを隠してクールにふるまうその姿はなんともいえませんなぁ。顔の表情だけ
で演技ができる貴重な俳優じゃないスか？ 個性的なマスクが生きてまっス。
いくらドキュメンタリー風っていっても、そこは「風」だからサ。もちろん、
それなりにドラマはつくってんですけどネ。特に、マイケル・ダグラスの娘の
転落話なんかは……。
それでも、できるだけ抑えたタッチで客観的に描いているから、そんなに浮い
た感じはしなかった。
ラストも「麻薬との戦いはまだまだ続くのだぁ〜!!! 」ってことで、うま〜く
まとめてました。
（でも、まさか『トラフィック２』なんかつくんないだろうな!?）
《ぽちのオススメ度》
★★★★☆
（麻薬がいかにアメリカ社会に蔓延しているか。その裏にどんな複雑な事情が
あるのか。それを観客にそのまま投げかけた野心的な映画。見応えはタップリ
です。）
＜ぽち＞