トレーニング・デイ (TRAINING DAY)


(2001年 アメリカ)(上映時間2時間2分)
監督:アントニー・フュークワー
出演:デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、スコット・グレン、トム・
ベレンジャー、クリフ・カーティス
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<ストーリー>
ロサンゼルス市警の新人警官ジェイク・ホイト(イーサン・ホーク)は、ベテ
ラン麻薬捜査担当刑事アロンゾ・ハリス(デンゼル・ワシントン)とコンビを
組むことになる。出世の足がかりにしようと張り切るジェイクだったが、アロ
ンゾは法をも無視する無謀な捜査を展開していて……。

<レビュー>
暴力警官を描いた映画はたくさんあります。
例えば、カーティス・ハンソン監督の『L.A.コンフィデンシャル』(1997
年)に出てくる刑事なんか、かなりキレてましたよね。
日本でも、北野武監督の『その男、凶暴につき』(1989年)なんてのがありま
したっけ。

この映画のベテラン刑事アロンゾもかなり凶暴。しかも、かなりのワルでもあ
る。車高を変えられる改造車を「俺のオフィスだ」と言い放ち、街を流して単
独で強引な捜査を展開。暴力、脅迫はもちろん加害者から金をかすめ取るのも
朝飯前。

そんなアロンゾのもとに弟子入りしたのが新人警官のジェイク。出世の野望を
持ち、正義感に燃える彼が麻薬捜査課に配属されてアロンゾと組んだ初日。そ
のたった1日だけの過激な出来事を描いた映画です。

前半は、ほとんどが車の中。正反対のキャラの新旧警官のやりとりが見応えタ
ップリ。
捜査のためだからと、押収した大麻をジェイクに吸わせ、ラリッた姿を見てお
もしろがるアロンゾ。まさにやりたい放題、ジェイクを手玉にとって楽しむ。
ホント、嫌なヤツだよなぁ〜。 (`ヘ´)

これまでの「良い人イメージ」をブチ壊すようなデンゼル・ワシントンの演技
がスゴイです。ここまでやるか!? と思わず叫びそうになるぐらいのド迫力の
演技。
役者にとってこういう役って、楽しいのかもしれませんねぇ〜。とにかく、ノ
ッて演じているのがよくわかる。

一応、ワル警官のアロンゾにも、それなりの言い分があるんです。「羊を襲う
オオカミと戦うためには、自分もオオカミにならなくちゃいけない!」ってい
うのね。
なんともムチャクチャな論理なんだけど、デンゼルの迫力の演技のおかげで思
わず納得しちゃったりもするワケ。 (~ヘ~;)

そんな彼に振り回されるのがイーサン・ホーク演じる新人警官ジェイク。これ
がけっこうハマリ役なんだなぁ〜。正義感が強く、家族を愛する純な青年の役
がピッタリ。

そういう2人が展開する捜査劇。それを通して、ジェイクは本当の正義とは何
か迷い始め、一方、アロンゾもジェイクを見て今の自分を見つめ直す……。
な〜んていう、2人の心の交流を描いたシミジミしたドラマになると予想して
いたんです。途中までは。

ところが、これが予想と全然違っちゃったのだ。
後半になると一気に大転換。まるで『L.A.コンフィデンシャル』のような
戦慄の世界に突入だぁ〜! W(゜o゜)W

詳しくは言わないけれど、アロンゾがただのキレたワル警官ではなく、もっと
スケールの大きなダーティなヤツだったことがわかります。アラアラ、とうと
う一線まで越えちまったじゃないですか……。
そんな悪の泥沼にズブズブと引きずり込まれるジェイク。はたして彼の運命は
???

中盤以降は、アロンゾの悪の暴走とそれに引きずり込まれるジェイクの戸惑い
が描かれます。
アクションもビシバシ登場して、手に汗握るスリリングな場面の連続。意表を
突いた展開で、まったく先が読めません。ごくフツーのサスペンス・アクショ
ンとしても、かなりのレベルだと思います。

ただねぇ、アロンゾのあまりの無軌道ぶりには、ついていけないところもある
。アメリカで警官のムチャな捜査がよく問題になるけど、さすがにあそこまで
やったらもうアウトでしょう。『L.A.コンフィデンシャル』の時代ならと
もかく、現在の警官としてはリアリティがやや希薄。
表の顔はもうちょっと穏やかにして、その裏で実はとんでもないことやってい
た……な〜んていう設定にしてくれたほうが、説得力があった気がするんです
けど。

ラストもあんまり感心しないなぁ〜。 (´ヘ`;)
あれじゃ、あまりにも普通すぎて、いったい何が言いたかったのか全然伝わっ
てこない。
「悪は滅びる」っていうありきたりの教訓なのか?
「犠牲のない正義はない」っていうエラそうなご託宣なのか?
かといって観客に何かを考えさせるっていうタッチでもないし……。うーん。
(・_・?)

やっぱりこれはドラマがどうのこうのという前に、デンゼルのワルぶりを楽し
む映画でしょう。
いや、楽しむっていうか、そういう次元を越えちゃった演技ですね。そのぐら
いスゴイ。彼の役者魂に拍手です。 (^-^)//""パチパチ

そういえば、この映画、黒人がワルで白人が善人という設定。
これって、少し前だったら「人種差別だッ!」とクレームが来たんじゃない?
人種をめぐるアメリカの状況が少しは良くなった証拠なのかなぁ。
まあ、今はイスラム教徒を差別してるんだから、やっぱり困ったもんだけど。

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(戦慄のワルのお話だけに、そーいう世界が苦手な方にはオススメできません
。従来のデンゼル・ファンにとってはちょっと衝撃が大きすぎるかも……。)
                            <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2001年10月30日(火)シネマサンシャイン(6番館)にて。午前11時の回。


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