宇宙戦争(WAR OF THE WORLDS)
| （2005年 アメリカ）（上映時間１時間57分） 監督：スティーブン・スピルバーグ 出演：トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、ティム・ロビンス、ミランダ・ オットー、ジャスティン・チャットウィン ＊ 日比谷スカラ座ほかにて全国公開 ホームページ http://www.uchu-sensou.jp/top.html ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 港湾労働者のレイ（トム・クルーズ）は、妻子と別れ一人暮らしをしていた。 ある日、息子ロビー（ジャスティン・チャットウィン）、娘レイチェル（ダコ タ・ファニング）が訪ねてきたが、おりしも町は激しい落雷と地割れに襲われ、 予想もしない侵略者たちが姿を現す。彼らの無差別攻撃を逃れて、ロビーとレ イチェルを連れて必死に逃げるレイだったが……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 『激突！』のスピルバーグが帰ってきた！？ 得体の知れない恐怖が迫る！ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 スピルバーグといえば、『Ｅ．Ｔ．』『未知との遭遇』をはじめ数々の大ヒッ ト作を持つハリウッドを代表するビッグな監督。しかし、個人的に最もおもし ろいと思うのはそんなメジャーな映画ではなく、まだ無名だった頃に監督した 『激突！』。迫りくるトラックの恐怖を描いた背筋ゾクゾクの映画でした。 Ｈ・Ｇ・ウエルズの古典ＳＦを原作にした今回の映画は、その『激突！』あた りと共通する、理屈抜きのコワサを持った作品です。 トム・クルーズが珍しく、離婚したブルーカラーの男レイを演じています。彼 のもとに別れた妻のところで暮らす息子と娘がやってきた日。すさまじい稲妻 とともに宇宙人が来襲し、無差別攻撃を開始する。息子と娘を守るために、レ イは必死で逃げ惑う……という物語。 かつて『Ｅ．Ｔ．』で友好的な宇宙人を描いたスピルバーグが、一転して地球 人を攻撃する恐ろしい宇宙人を描くというのがおもしろい。しかも、そのコワ サがハンパではないのだ。 カメラはひたすら主人公レイの視線に徹して、全体像はほとんど見せない。宇 宙人や彼らが操るマシンさえ、めったに画面に登場しない。たまに登場しても 一部分だけ。 真っ黒な空、切り裂く稲妻、地割れ。そんな不気味な映像もコワサをあおる。 それによって、観客はいったい何が起きているのかわからずに、得体の知れな い恐怖を味わうことになる。 正直なところ、登場する宇宙人や三本足ロボット「トライポッド」は、何だか マヌケな感じがして、それほどコワイとは思えません。そこだけ単独で観れば、 笑えるＢ級ＳＦ映画かと錯覚してしまいそう。にも関わらず、背筋の凍る戦慄 と緊迫感は、最初から最後までずっと途切れない。 タップリ使われるＣＧの効果もあるのだが、それ以上にスピルバーグの演出が 見事すぎるんですよねぇ〜。 (^○^) 後半の地下室でのシーンも見応えがあります。ガチガチのリベラル派で知られ るティム・ロビンスに好戦的な男を演じさせるというユニークな配役も楽しい。 彼とトム・クルーズの対決はかなりの迫力。 娘役のダコタ・ファニングのリアルすぎる恐怖顔も、この映画にはピッタリで す。 こうして宇宙人の襲来という恐怖を描きながら、家族を省みなかったレイが父 親としての責任を自覚する成長の物語も展開する。ただし、残念ながらこれは ツッコミ不足でやや底が浅い。 しかし、レイを無敵のヒーローではなく、弱点だらけの父親として描いたとこ ろは印象深い。想像を超えた恐怖の中で、パニック状態になった人々が宇宙人 に無謀な戦いを挑んだり、人間同士で殺し合いをする。しかし、レイは自ら積 極的に殺戮に参加せずに、ひたすら子供たちを守ることに専念する。 こうした主人公の人物像に、９．１１テロ以降の世界情勢が反映しているとい うのは考えすぎ？ テロ制圧と称して世界中で武力をふるうアメリカ政府を横 目に、大義のために武力に走るよりも、家族や友人を守ることを基本に据える ことの重要性をさりげなく訴えている。そんなふうに思えてしまうのです。 まあ、とにかくスゴイ恐怖のテンコ盛です。まさに『激突！』のスピルバーグ が帰ってきた感じ。『激突！』好きのボクには、実にこたえられない映画なの でした。 ただし、その分、スピルバーグ作品らしい胸のすく展開はありません。特にラ ストはあまりにもあっけなくて、拍子抜けしてしまうほど。全編に漂う暗さや 絶望感もスピルバーグ作品では異質。なので、これまでのスピルバーグのテイ ストを期待して観る人にはオススメできません。得体の知れない恐怖を体験し たい方はぜひどうぞ。 ちなみに、最初と最後のナレーションはどっかで聞いた声だと思ったら、モー ガン・フリーマンなんですと。こんなところにまで顔を出しているのか！？ （いや、顔は出していないけど……。） 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆ （迫りくる恐怖はかなりのもの。今の時代だからこそこんな不安な映画ができ たのかもネ。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年７月２日（土）ユナイテッドシネマとしまえんにて。午後２時45分の回。 |