裏切り者 (THE YARDS)
（2000年 アメリカ）（上映時間１時間55分）
監督・脚本：ジェームズ・グレイ
出演：マーク・ウォルバーグ、ホアキン・フェニックス、シャーリーズ・セロ
ン、ジェームズ・カーン、フェイ・ダナウェイ、エレン・バースティン
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＜ストーリー＞
車の窃盗で服役していたレオ(マーク・ウォルバーグ)が刑期を終えて出所。叔
父が経営する地下鉄整備会社で、友人ウィリーの助手として働き始める。だが
、それは陰謀、賄賂、裏工作などを手がけるダーティーな仕事だった。そんな
中、他社に対する妨害工作の最中にトラブルが発生。ウィリーが犯した罪を着
せられたレオは、警察に追われる身となる……。
＜レビュー＞
暗いヨ〜。地味だヨ〜。シブすぎるヨ〜。(´ヘ｀;)
これじゃあ、大ヒットは無理かもね。
『ムーラン・ルージュ』のド派手さを思わず分けてあげくなっちゃうような、
そんな雰囲気の映画です。
それでも見応えはタップリ。
汚職や不正といった社会の裏側を真正面から描いた、重厚で、骨のある社会派
サスペンス。その硬派な姿勢がとっても気持ちいい。僕は、こういう映画って
大好きデス！ (*^。^*)
マーク・ウォルバーグ扮する主人公レオは刑務所を出てきたばかり。更正して
叔父の会社でマジメに働こうとする。
だが、その会社は、裏では政治家に賄賂を贈ったり、ライバル会社を妨害した
りと、汚い仕事をたくさんやっていた。
それを担当するのがレオの友人ウィリー。彼の誘いで助手となったレオは、自
分も汚い世界に足を踏み入れていく……。
レオはワルだけど極悪人ではありません。仲間をかばって車の窃盗で刑務所に
入っていただけ。だから、出所して病弱な母のためにも、普通の生活を送ろう
とする。でも、知らないうちに、どんどん裏世界へと足を踏み入れていく。
このへんは、マーク・ウォルバーグの気弱で無表情な感じが、レオの個性をう
ま〜く表現しています。大げさに悩んだり、苦しんだりしないところがかえっ
て良かった。
やがて、とんでもないことが起きる。
ウィリーたちは、ライバル会社が修理した地下鉄車両に細工して、信用を落と
そうとする。
だが、予想外の出来事が起きてウィリーは人を殺してしまう。しかも、現場に
いたレオはその罪をかぶせられてしまう。警察から追われる身になった彼は、
どうやって潔白を証明するのか!? (・_・？)
こんな感じで、主人公の冤罪をめぐるサスペンスの形をとりながら、政官業の
汚職や不正工作を真正面から描いていきます。
ただし、サスペンスとしての盛り上がりにはあまり力を入れていません。トリ
ックやドンデン返しも、そんなに強烈じゃない。だから、本格的なサスペンス
映画のファンには物足りないかも。 (｀ヘ´)
その代わりに力を入れて描いているのが人間ドラマ。腐敗した裏社会の中でも
がく主人公や彼の家族、親戚、友人たちの姿をリアルに描ききっています。
会社と家族を守るために裏工作を続けるレオの叔父フランク。恋人との未来の
ためにそれに加担するウィリー。そして、いつの間にか引き込まれていくレオ
。彼らはけっして根っからの悪人ではない。でも、何かの理由でどんどん悪の
深みにハマっていく。そこがとっても悩ましくて、苦しいところなのだ。
レオと彼の母ヴァル、叔父フランクと彼の娘エリカという２組の親子の愛と葛
藤も、効果的にドラマを盛り上げています。
（エリカがウィリーの恋人で、過去にレオとなんかあったらしい……とか、け
っこう複雑なんですヨ。そのへんちょっとわかりにくいんだけどネ。）
小細工はいっさいナシで、ひたすら真正面から描く演出は、力強く、風格さえ
漂っています。どのシーンをとってもムダがまったくない。渋い光を使った暗
めの映像も、テーマにピッタリ合っています。
実はこの映画のジェームズ・グレイ監督は、まだわずか31歳。ロシア移民の葛
藤を描いた『リトル・オデッサ』でデビューし、これが７年ぶりの２作目。
これを聞いてビックリしちゃいましたねぇ〜。だって、最近の若い監督って、
ミュージック・ビデオなんかの影響を受けた、ポップでブっ飛んだ作風の人が
多いじゃない？
それとはまったく違う正攻法の骨太ドラマ。うーん、弱冠31歳でこの落ち着き
方はフツーじゃないゾ。（オヤジくさいなんて言わないでッ！）
また、豪華な役者陣もこの映画の見どころです。
レオ役のマーク・ウォルバーグのほか、友人ウィリー役のホアキン・フェニッ
クス、彼の恋人でレオの従妹エリカ役のシャーリーズ・セロン、彼女の父で不
正を続ける経営者フランク役のジェームズ・カーン、その妻役のフェイ・ダナ
ウェイ、レオの母役のエレン・バースティン。もう、これはスサマジイ豪華キ
ャストです。しかも、み〜んな存在感を発揮している。やっぱり良い監督のと
ころには、良い役者が集まってくるんですねぇ〜。 (^-^)
映画のラストにはある逆転劇が用意されています。不正を暴かないように頼む
叔父フランクをジッと見つめるレオの目が、とっても印象的。
ただし、ラストの展開はやや定番すぎる感じもしましたね。
それに、全体のタッチが一本調子なのと、サスペンス的な盛り上がりに欠ける
点が気に入らない人もいるんじゃないでしょうか。
それから、これは映画自体の責任じゃないけど、実際の社会が汚職だらけだか
ら、この程度じゃ驚かないってところもあるよね。日本でもああいう裏工作な
んか絶対にやっていそうだもん。
でも、僕的には、かなり評価できる映画だと思いました。地味だけど、つくり
手の良心を感じさせる。これだけ力強い社会派サスペンスなんて、そうめった
にあるもんじゃないでしょう。
『ムーラン・ルージュ』みたいな楽しい映画もいいけれど、こういう硬派な映
画もとっても存在価値があると思います。なんたって、自分、硬派ッスから。
（ウソばっか！）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（+1／2★）
（裏社会でもがく人間たちを描いた点では『ゴッドファーザー』と共通する雰
囲気も……。見応えある社会派ドラマです。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2001年12月１日（土）池袋シネマ・ロサにて。午後12時30分の回。