ベルベット・レイン(江湖)
| （2004年 香港）（上映時間１時間25分） 監督：ウォン・ジンポー 出演：アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、ショーン・ユー、エディソン・ チャン、エリック・ツァン、ウー・チェンリェン、リン・ユアン、チャップマ ン・トウ、ガオ・レイ ＊ シネ・リーブル池袋ほかにて全国公開 ホームページ http://www.velvet-rain.com/ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 香港のレストランの厨房で働くイック（ショーン・ユー）は、チンピラ仲間の ターボ（エディソン・チャン）とともに暗殺者を決めるクジ引き会場に出かけ、 当たりクジの娼婦、ヨーヨーを探し出す。だが、イックに渡された武器は拳銃 ではなくナイフだった。一方、黒社会のボスのホン（アンディ・ラウ）暗殺の 噂が流れ、兄弟分のレフティ（ジャッキー・チュン）は暗殺阻止のため奔走す る。同時に、彼は子供が生まれたばかりのホンに、引退を勧めるのだが……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 新旧四大スターが競演した黒社会映画。新人監督の鮮烈な映像が見応え十分 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 やっぱり香港映画にはノワール（黒社会映画）が似合います。一時は低迷して いたものの、最近の『インファナル・アフェア』シリーズですっかり輝きを取 り戻した感じ。この映画も『インファナル・アフェア』シリーズには及ばない までも、かなり充実した黒社会映画です。 ストーリー自体はこのテの映画の典型的なもの。マフィアのボスに暗殺計画が 持ち上がり、それをめぐるあれやこれやを通して、黒社会の残忍さ、冷徹さ、 そして男たちの固い友情の絆を描くというもの。 ただし、暗殺計画の黒幕が誰だかわからない展開がスリリング。最初にボス暗 殺の鉄砲玉が選ばれるところを描き（ディスコ会場でクジ引きをして、当たり クジは秘所にリンゴの刺青をした女ってのは笑えましたけど）、その後にボス の配下の３人を登場させて、「コイツらが黒幕か？」と思わせる。だが、その うちに、ボスの兄弟分も「怪しいんじゃないの〜〜？」と思わせてナゾを増幅 していきます。 （￣ー￣？） また、ボスのホンと兄弟分のレフティの対比も的確に描かれます。ホンはなる べく血を流さずに、必要最小限の犠牲だけで収めようとする。だが、レフティ は根こそぎ相手を皆殺しにしないと収まらない。だから、ホンは自分が引退し て、レフティに後を任せることをためらっている……。 (━＿━) さらに、ホンの長男誕生、鉄砲玉イックの家庭環境（父も兄も黒社会の仕事で 死んだ）、イックと娼婦との心の交流（ありがちだけど）なども描いて、ドラ マの陰影をクッキリさせています。 だけど、何よりスゴイと思ったのが映像です。 斬新なカメラアングルと細かなテクニックで、異様な緊迫感と登場人物の心の 揺らぎを表現した映像。この映像だけでスクリーンに引き込まれ、最後まで飽 きずに観ることができました（１時間25分の映画だからなおさら飽きないんだ けど）。 特にドラマのかなりの部分を占めるホンとレフティのレストランでのシーンが 圧巻。食事をしながら、互いの腹のうちを探り合うんだけど、最後のほうは画 面が揺れてるんですよね。これって、たぶん手持ちカメラで撮ってるんじゃな いかなぁ〜。こういうシーンは普通なら絶対に固定カメラで撮るもんですけど ね。でも、そのおかげで２人の心の揺らぎがキッチリと描き出されているんで す。 クライマックスの雨の中での乱闘シーンも絶品！ まさに鮮烈な映像の波状攻 撃。 監督のウォン・ジンポーはこれがデビュー作。ＰＲコピーの「第二のウォン・ カーウァイ」というのは、たぶんこの映画で久々に共演したアンディ・ラウと ジャッキー・チュンが、かつてウォン・カーウァイ監督のデビュー作『います ぐ抱きしめたい』（1988年）で義兄弟を演じていたことを意識したものだろう けど、確かにその映像センスはカーウァイ的な才気も感じさせます。 そして、そして、ラストに待っているのは意外なオチ。 Ｗ（゜Ｏ゜）Ｗ え？ そうだったの？ それまで全然気づかなかったけれど、いわれてみれば なるほどねぇ〜。当然、同時進行のドラマだと思っていたのだが……。 アンディ・ラウとジャッキー・チュンはさすがに貫禄タップリです。今回はそ んなにアクション場面はないけれど、その代わりに内面で火花を散らすぶつか り合いが実に見事。 そして、これとは対照的に若さで突っ走るショーン・ユーとエディソン・チャ ンの輝きも見逃せません。 この映画のプロデューサーでもあるエリック・ツァン（香港の黒社会映画には 欠かせない俳優）、チャップマン・トウなどの脇役陣も充実。 鮮烈な映像を中心になかなか見応えある黒社会映画でした。最近は中国や韓国 映画に押され気味の香港映画ですが、こういう新しい才能が登場するのですか ら、なんのなんの元気です。これからは香港映画の動きに要注意かも！？ 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆（＋1／2★） （黒社会に生きる男たちの友情と悲しみが伝わってくる映画。このテの映画が 好きな人でなくても、けっこう見応えがあります。） ＜ぽち＞ 〔鑑賞データ〕 2005年10月8日（土）シネ・リーブル池袋にて。午後４時40分の回。 |