ヴァイブレータ
| （2002年 日本）（上映時間１時間35分） 監督：廣木隆一 出演：寺島しのぶ、大森南朋、田口トモロヲ、戸田昌宏、高柳絵里子、牧瀬里 穂、坂上みき、村上淳、野村祐人 ＊2003年12月シアターイメージフォーラムほかにて公開 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ＜ストーリー＞ 31歳のルポライター、早川玲（寺島しのぶ）は、ある雪の夜、コンビニで岡部 希寿（大森南朋）というトラック運転手を見てその後を追い、彼の運転するト ラックに乗り込む。勧められるままに酒を飲み、やがて肌を重ねる２人。それ から２人は東京から新潟へと走り出す。２人の奇妙な道行きが始まった……。 ＜レビュー＞ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 寺島しのぶの熱演で描く孤独で傷ついた女のロードムービー 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 心に傷を持つ孤独な女が主人公。いつも頭の中で聞こえる"声"に悩まされ、不 眠と摂食障害に陥っている彼女が、ある晩コンビニに出かけてトラック運転手 と知り合い、行きずりの関係を結ぶ。それがきっかけで、トラックに同乗した 彼女と運転手とが繰り広げるロードムービー。原作は赤坂真理の同名小説。 公開当時、寺島しのぶが大胆な演技を見せたというので、スキャンダラスな視 点から注目を集めた映画。たしかに過激なセックスシーンが多く、寺島しのぶ 自身きわどいどころまで肌を露出させてはいるものの、そういう次元とは別に 見事な演技を披露している。 彼女の繊細な感情表現によって、映画の冒頭から主人公の心の闇がリアルに浮 き上がってくる。ベテラン荒井晴彦の脚本もさすがという感じ。廣木隆一監督 の演出も、手持ちカメラの不安定な映像から疾走するトラックのリズミカルな 映像、そしてエロチックなラブシーンまで、主人公の内面をキッチリと捉えて いる。 運転手役の大森南朋の飄々とした演技も味がある。 彼とトラックで旅をするうちに主人公は、行きずりの関係のはずだったのに、 次第に彼を好きになっていくというラブ・ストーリーが展開する。 それを派手な事件などでなく、たわいもない話や、ちょっとした行動で見せて いくところがミソ。運転手が語るトラックの話や、運送の仕事の話、無線の話、 そしてかつてのヤクザ時代の話など……。また、主人公の体調が悪くなった時 の優しいいたわり方なども、当初がただ肉体目当ての軽薄な男にしか見えない ので、よけいにやさしさが際立ち心にしみる。 そうした関係の変化を通して、徐々に変わっていく主人公を、微妙な表情やし ぐさなどで表現していく寺島の演技がこれまた素晴らしい。 こうした主人公の心の軌跡に合わせて、観客もまた当初のギスギスしたささく れ立った感覚から、次第にやすらぎを感じるのではないだろうか。 一人の女性の内面を繊細に描いたラブ・ストーリーとして完成度の高い映画だ と思う。 ただし、これが日本映画のベストテン上位に入る現状はどうなんだ？ たしか に、31歳の孤独で傷ついた女性の心はよく描けているが、それがどうしたとい う感じもする。たとえば、そこから時代が見えてきたりすれば、さらに深みと いうか、広がりのある映画になったような気もするのだが。 こういう映画が日本映画を代表する作品とかいわれちゃったりすると、「なん だかなぁ〜」という気分になってしまうボクなのであった。 ちなみに、セックスシーンでいちばん目に焼きついたのは、セックスそのもの よりも寺島しのぶの着けていた下着であった。あの柄は、けっこうユニークで 気に入ってしまったゾ！（と、最後はまたどうでもいいことでござった。スマン） 《ぽちのオススメ度》 ★★★☆☆ （一人の女性の繊細な心理がうまく表現された映画。やっぱり女性のほうが共 感しやすいかな？） ＜ぽち＞ 2005年6月 ＤＶＤにて鑑賞。 |