忘れられぬ人々
（2000年 日本）（上映時間２時間）
監督・脚本：篠崎誠
出演：三橋達也、大木実、青木富夫、風見章子、内海桂子、真田麻垂美、遠藤雅
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＜ストーリー＞
かつての戦友で今は静かに暮らす木島（三橋達也）、村田（大木実）、伊藤（
青木富夫）の３人。ある日、彼らは亡き戦友の孫娘で看護婦の百合子（真田麻
垂美）と出会い、交流を深める。だが、彼女の恋人は霊感商法に手を出してい
た。その魔の手は３人の老人たちにも迫り……。
＜レビュー＞
三橋達也、大木実、青木富夫。主演のこの３人の年齢を足すと、なんと234歳！
！！ Ｗ（゜O゜）W
すごいよねぇ〜。いくら高齢化社会でも、これだけの大ベテランが主演する映
画はめったにないでしょう。
３人が演じるのはかつての戦友で、今は海辺の町で平和な生活を送っているオ
ジイサンたち。だが、戦死した戦友の孫娘と知り合ったことから、やがて思い
がけない事件に巻き込まれてしまう……。
前半は、３人のお年寄りの日常生活がユーモラスに描かれます。
それぞれ悩みや問題を抱えているものの、まずまず平和で穏やかな毎日が過ぎ
ていきます。
目を引くのはベテラン俳優たちの圧倒的な存在感。
さすがに日本映画の黄金時代を支えてきた人たちだけありますねぇ〜。
特に、バスで出会ったおばあさん（風見章子）を好きになって、少年のように
心をときめかせる青木富夫のコミカルな演技が楽しい。 (*^。^*)
元ヤクザで陰のある男・木島を演じる三橋達也、妻（内海桂子）が死の床にあ
る居酒屋のオヤジ・村田を演じる大木実も、それぞれ重厚で味わい深い演技を
見せてくれます。 (~ヘ~)
そんな平和な毎日の中でも、彼らには大きな心の傷があります。
そう、戦争です。戦後50年以上たった今も、戦争の心理的影響があらゆるとこ
ろにあらわれてくるんです。
戦死した戦友の孫娘・百合子と出会い、それがよりクッキリした形で姿を見せ
るようになります。
なかでも、戦友から託された形見のハーモニカを大事に持ち続けた木島が抱え
た心の闇は、とてつもなく大きく、それが戦争の悲劇を実感させてくれます。
(T^T)
百合子とその恋人（遠藤雅）という若いカップルの話なんかも織り込みつつ、
ドラマは温かムードで進んでいきます。
ところが、後半になると……。
「あれぇ〜、ど、どうしちゃったんだッ!?」
話が急にヘンな方向に行っちゃったじゃないかぁ！
百合子の恋人が霊感商法の会社に入社してしまい、その魔の手が３人の老人た
ちにも向けられてくる。
それに対して、彼らはどんな行動をとったのか？？？
って、おいおい、なんでいきなり社会派活劇みたいになっちゃうんだヨ。それ
も三流の……。
前半のムードから考えて、「戦争の傷を背負い、老いという現実に直面しつつ
も、明るく前向きに生きていく老人たち」、そんなホンワカしたドラマになる
と思ったのに……。
あまりの変貌ぶりに、ワタクシ、全然ついていけませ〜ん。 （´ヘ｀；）
おまけに、問題の霊感商法があまりにもウソくさい。法律スレスレとかじゃな
くて、カンペキな違法行為をやってるんだもん。実際は、もっと巧妙な手を使
うんじゃないかぁ〜？
ラストもちょっとねぇ〜。盛り上げたい気持ちはわかるけど、唐突すぎて現実
味がないよぉ〜。もっと納得できるような展開にしてくれぇ〜！ (;°°)
いったい、なんざんしょ。前半と後半のこの激しすぎる落差。
これって、たぶん設計図が途中で変わったせいだと思うな。
つまり、篠崎監督はもともと後半のような痛快活劇をやりたかったんでしょ。
「時代に取り残されたオジイサンたちが、ある事件をきっかけに立ち上がる！
」。たとえば、イーストウッド主演の『スペース・カウボーイ』のような話で
すね。
ところが、取材するうちに、「やっぱり主人公の年代から考えて、戦争の話は
避けて通れないなぁ。老人たちの日常生活もちゃ〜んと描かなくちゃならない
ゾ」。きっとそう思ったんでしょう。
で、結局、前半は、戦争の話と老人たちの日常生活の描写がかなりの部分を占
めるようになっちゃったワケ。
それがいきなり後半になって、本来の痛快活劇が急展開。
うーん、これはやっぱり違和感ありますよぉ〜。全体がうまく統合されないま
まで、中途半端な感じ。あんまりたくさんのことを盛り込もうとしすぎて、消
化しきれなかったんじゃないの？ (・_・？)
まあ、それでも、３人のベテラン役者の演技は見応え充分。
友情や、他人を裏切らないことの大切さも伝わってきます。
「ぜひッ！」とは言いませんが、おヒマでしたらどうぞ。
ところで、問題の霊感商法の親玉を演じるのは篠田三郎。
「今の世の中はなってない！」と嘆く老人たちをだダマす彼が、「戦後民主主
義は間違っていた！」とほざくというのが、なんとも皮肉。
ワルは、ああやってもっともらしいことを言いながら近づいてくるのだ。
みなさんも注意しましょうね。 (｀ヘ´)
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆
（これだけのベテラン役者を起用した意欲は買うものの、もう少し練り上げて
整理してから撮ってほしかったですぅ〜。）
＜ぽち＞