ワンダー・ボーイズ (ＷＯＮＤＥＲ ＢＯＹＳ)
(2000年 アメリカ)(上映時間１時間51分)
監督：カーティス・ハンソン
出演：マイケル・ダグラス、トビー・マグワイア、フランシス・マクドーマン
ド、ロバート・ダウニー・Ｊｒ．
＜ストーリー＞
大学の英文学科教授で作家のグラディ・トリップ（マイケル・ダグラス）は、
前作がベストセラーになり文壇で注目を集めたもののその後は大スランプ。今
では作家生命の危機を迎えていた。そんなある日、妻が家出してしまい、さら
に不倫相手の学長サラ・ガスケル（フランシス・マクドーマンド）が妊娠。グ
ラディの苦悩はますます深まる……。
＜レビュー＞
人生に行き詰まった中年作家が、若くて才能にあふれた学生に出会い、それま
での生き方を変えて新たな人生を歩み出すという物語。
いわゆる成長物語だけれど、成長するのが若者じゃなくて、中年のオジサンだ
というところがとってもおもしろい。
物語はある事件から始まる。
大学の英文学科教授で作家のグラディが、彼が勤務する大学の学長夫妻（ちな
みに学長は妻のほうでグラディの不倫相手）の家で開かれたパーティーに出か
ける。
そこで、教え子のジェームズ・リア（トビー・マグワイア）が、ピストルを手
にして庭にいるのを発見。彼が自殺すると考えたグラディは、邸内に戻って元
気づけようとする。
ところが、学長の夫の愛犬でグラディの天敵のポーが登場。グラディの足に噛
みついたためジェームズが発砲し、ポーは死んでしまう。
あわてたグラディは、とっさに「私のせいにすればいい」と言ってしまい、ポ
ーの死体を車に積んで、ジェームズとともに学長の家を出る。
それをきっかけに、週末３日間に起きたさまざまな出来事と、それを通して新
たな人生を見つけるグラディの姿を描いたのがこの映画。
「いくつになったって人間は自分を変えられるし、新しい道を切り開けるんだ
！」というメッセージは、すごくポジティブで観客（特に中年以上の）を勇気
づけてくれる。
だが、しか〜し！！
映画評論家の皆様方が絶賛しているらしいこの映画に、＜ぽち＞はあえて文句
をつけてやるゾ〜！！！ (｀、´メ)
（って、そんなに鼻息荒くすることはないんだけどサ）
まず、ドラマとしての詰めが甘いんだわ。
グラディの身の回りにはいろんな出来事が起きるけど、それがどれも散発的。
どんどん積みあげられていって、それがグラディを少しずつ変えていくってい
う感じじゃないんだなあ。
グラディの気持ちの変化があんまり伝ってこないし、どうしてそうなったのか
も謎。 (・＿・？)
おまけに全体が同じトーンで流れていくから、とってもダルい。
殺人事件ならぬ"殺犬事件"が起きる初めのほうと、ジェームズ君の正体が少し
ずつわかってくるあたりはまあそれなりに盛り上がるけど、あとはずーっと淡
々と進んでいく。
『タイタニック』や『Ｍ：Ｉ―２』じゃないんだから、「ハラハラドキドキさ
せてくれ！」なんて言わないけれど、もう少しメリハリのあるドラマにして欲
しかった。
それに細かな疑問もたくさんあったゾ。
殺犬事件であれだけの発砲音がしたのに、誰も気づかないっていうのはヘン。
編集者のテリー・クラブツリー（ロバート・ダウニー・Ｊｒ）とジェームスが
、なんの前フリもナシにいきなりホモ関係に走るのもヘン。
グラディが家を出た妻の実家にドロボーみたいに侵入して、おまけにそこから
不倫相手の学長に電話するのもヘン。
でも、よく考えたらこの映画の登場人物ってヘンな人ばっかりだ。
グラディの教え子で間借り人のハンナ（ケイティ・ホルムズ）は、どーもグラ
ディに色目を使ってるみたいだし、学長サラの夫のウォルターは、ジョー・デ
ィマジオとマリリン・モンローのお宝コレクションが趣味のオタク。
グラディの車を狙うヴァーノンは、ジェームス・ブラウン風のキレまくり男。
そして、メガトン級にヘンなのがトビー・マグワイア演じるジェームズだ！！
さすがに小説家志望らしく、話すことがデタラメ。どこまでがホントで、どこ
までがウソかわからない。何を考えてるのかサッパリわからないし、とにかく
不気味なのだ。
こういうヘンな人たちと、疲れた中年グラディが巻き起こす出来事を描くわけ
だから、やっぱりそこに生まれるのは笑いでしょ。でもって、いわゆるシニカ
ルな笑いがスクリーンを覆っているんですヨ。
だけど、どーなんでしょう？ 僕はあんまり笑えませんでしたね。全体のメッ
セージはポジティブなはずなのに、笑いはどーも後ろ向き。なんか中途半端に
暗くて笑えないんだよなぁ。
このあたりは観る人によってまったく感じ方が違うんだろうけど……。
そして、ラストも気に入らないゾ。
メリハリのない話を無理にまとめたって感じ。
これじゃグラディが変わったっていったって、不倫相手の学長との関係に決着
をつけただけじゃん。作家としての人生はどうなっちゃったの？
てなわけで、文句ばっかり言っちゃったけど、この映画って全米ベストセラー
小説の映画化なんですね。うーん、なんとなくわかる！ アメリカの小説って
、こういう感じの作品ありますよね。
原作を読んでないからわからないけど、映画化にはかなり苦労したのかも。ま
るっきり、話を変えちゃうわけにもいかないだろうし……。
残念ながら、僕にはあんまりピンと来なかったこの作品。
でも、マイケル・ダグラスとトビー・マグワイアの共演は、想像以上によかっ
たデス。
特にトビー・マグワイアにはビックリ！ ( ゜＿゜；)
『サイダー・ハウス・ルール』の時の"純粋まっすぐ好青年クン"が、情緒不安
定でワケのわからんヤツに見事に変身！
っていうか、笑顔はあの時と同じなんだよね。その笑顔が、ここでは不気味に
見えちゃう。これもまた役者としての力量だろうか！？
とにかく、＜ぽち＞は彼にホラー映画か、サイコサスペンス映画に出演しても
らいたいとマジメに思っちゃいましたぁ。 (＾0＾)
そういう役者たちの演技と、ポジティブなメッセージが見どころ。あとはシニ
カルな笑いが皆さんの感性に合えば、それなりに楽しく観られるかもネ。
そうそう、「ワンダー・ボーイ」とは、神童とか、驚くべき才能の持ち主とい
う意味。グラディはかつてのワンダー・ボーイで、ジェームズは新しいワンダ
ー・ボーイ。だから、タイトルは「ワンダー・ボーイズ」と複数形になってい
るんですねぇ。
《ぽちのおススメ度》
★★＋１／２★
(1800円を払うのはどうかと思うけど、なぜか東京地区ではこの映画の鑑賞券が
1200〜1300円ぐらいで金券ショップに大量に出まわっている。まあ、それなら
観てもいいんじゃない？)
＜ぽち＞