Ｘ−メン (Ｘ−ＭＥＮ)
(2000年 アメリカ)(上映時間1時間44分)
監督：ブライアン・シンガー
出演：ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラ
ン、アンナ・パキン
＜ストーリー＞
ミュータントに対する人間たちの圧力が強まる中、マグニートー（イアン・マ
ッケラン）をリーダーとする悪のミュータント軍団は、人間社会に打撃を与え
るため他人のパワーを吸い取る女性ローグ（アンナ・パキン）を拉致しようと
する。ふとしたことから彼女と知り合った超合金の爪を持つ男ウルバリン（ヒ
ュー・ジャックマン）は、エクゼビア教授（パトリック・スチュワート）率い
る「Ｘ−メン」に加わり、悪の軍団の陰謀を阻止しようとするが……。
＜レビュー＞
ミュータント・パワーが大炸裂ぅ〜！！ O(^o^)o
超合金の長くて鋭い爪を内蔵した主人公ウルバリン、気象条件を自由に操り雷
や嵐を呼ぶストーム、相手のパワーをコピーして戦うローグ……。
いずれ劣らぬ超人たちが、スクリーンいっぱいにビュンビュンと暴れまわる。
これぞ痛快ミュータント活劇だぁ〜！！！！
だけどサ。やっぱり笑っちゃいましたヨ。
「んなアホな！」って突っ込みを入れたくなることばっかりなんだもん。これ
って、完全にマンガじゃん。 (＾0＾)
そーなんです。
これって、マンガなんです。アメリカで1963年から、ずーっと人気を保ってき
たコミックが原作。
でも、はっきり言って子供ダマシですねぇ。設定やストーリーを考えたら超バ
カバカしい。遺伝子操作とかいうんだったらまだしも、"突然変異で超能力を身
につけた人間"って聞いただけで笑っちゃったもん。
有名な役者が出ているわけでもないし、正直それほど観たいとも思いませんで
した。
ところが……。
一見子供ダマシのような映画を、『ユージュアル・サスペクツ』や『ゴールデ
ン・ボーイ』でおなじみのブライアン・シンガー監督が、大人でも十分に楽し
める作品に大変身させてしまったのだぁ！
まず、最初に感心したのが、アクション場面を中心に駆使されたＳＦＸ。
といっても、このテの映画にしてはかなりの低予算でつくられたようで、やた
らめったらド派手なハイテク映像が飛び出すわけじゃあない。ポイントを押さ
えて効果的な場面に使われているのだが、それがかえってリアル感をアップ。
テンポもいいからつい引き込まれてしまう。
そして、もうひとつ感心したのが、ミュータントという人間離れした登場人物
たちに、人間ドラマを演じさせてしまったこと。
マグニートー率いるミュータント・テロ集団と、それに対決するエグゼビア教
授率いるＸ−メンたちとの対決という構図の中に、ミュータントとしての悩み
や苦しみ、人間たちによる差別といった深いドラマを盛り込んだ。
たとえば、エグゼビア教授はウルトラ級のパワーの持ち主だが、下半身不随で
車イス生活。おまけに、宿敵マグニートーはかつての仲間という複雑な関係。
また、テロ集団にさらわれるローグは、他人のエネルギーを吸い取ってしまう
能力を持ち、かつてキスをした彼氏を死なせてしまった過去がある。そのため
人に触れるのを極端に恐れている。
そして、主人公ウルバリンは、何者かによって全身に超合金の骨格を移植され
、自分が誰なのか、どういう過去を持つのか思い悩んでいる。
ね、この映画に登場するミュータントは、みんな超人的な強さを持つと同時に
、暗い過去や弱さ、悩み、苦しみなんかを持っているわけ。
そんな彼らを人間たちは「自分たちと違う」というだけで差別し、自由を奪お
うとする。その愚かな行為が、ますますミュータントたちの悲しみを深くする
……。
そういうドラマをきちんと描いているところがエライ！
だから、物語に奥行きが出て、アメコミ・マニアでもＳＦファンでもない僕の
ような人間にも、充分に楽しめるようになっている。
だいたい冒頭のシーンからして、アクション映画とは思えない雰囲気だもんな
ぁ。
収容所（？）のようなところで、母子が生き別れになるんだけど、その暗く沈
んだ雰囲気がなんとも言えない。
シンガー監督が「この作品はただのアクション映画じゃないゾ」と宣言してい
るような感じだ。
それに、「原作を読まなくてもちゃ〜んとわかる」っていうのがいいですネ。
ほとんどの原作モノって、消化不良だったり、大幅に省略していたりして、原
作を読まないとわからないところがたくさん出てきたりする（別に出版社とタ
イアップしてるんじゃないでしょうけど……）。
その点、この映画は原作を読まなくてもＯＫ。充分に理解できます。
俳優陣では、何といってもマグニートー役のイアン・マッケランと、エグゼビ
ア役のパトリック・スチュワートという両リーダーがナイス！
特にイアン・マッケランのキレ方には思わずニンマリ。若い人たちも頑張って
いたけど、２人の前では影が薄かったな。
まあ、子供ダマシには違いないんだけど、それを忘れさせてくれるドラマ性が
あります。多少のムリやムチャに目をつぶれば、エンターティメントとしてか
なり楽しめるはず。
「どうせアメコミが原作だし……」なんて期待しないで観たら、いい意味で裏
切られちゃいました。
《ぽちのおススメ度》
★★★
（それにしても、「バットマン」なんかもそうだけど、どうしてアメリカン・
コミックってこんなに暗いんでしょう？）
＜ぽち＞